Interview

非言語(ノンバーバル)コミュニケーションの可能性 - ダイアログ・イン・サイレンス

text by : 編集部
photo   : 一般社団法人ダイアローグ・ジャパン・ソサエティ,

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1999年に日本に上陸し、国内で約19万人が体験した「暗闇の中でのコミュニケーション対話」ダイアログ・イン・ザ・ダーク。2017年8月、その第二弾となる「ダイアログ・イン・サイレンス」が日本に上陸した。

声を発さず、聴覚も遮断した状態での「言葉の壁を超えた対話を楽しむ」がテーマのダイアログ・イン・サイレンスは1998年以降ドイツ、フランス、イスラエル、メキシコ、トルコ、中国で開催され世界で100万人以上が体験している。非言語(ノンバーバル)なコミュニケーションが持つ可能性とは?未来の技術へのヒントとは?を総合プロデューサーである志村季世恵さんにお聞きしました。

 


■参加した全員が「新しい言語」でコミュニケーションする90分間


―ダイアログ・イン・サイレンス、は言葉の壁を超えた対話という【非言語コミュニケーション】の試みですが、どういったものでしょうか?

初対面の方を含めて1チーム12名で取り組む90分程のプログラムになっています。
聴覚を遮断し、声を出すこともできないので、最初はみんなで手を使って遊び、次に表情を使って周囲とコミュニケーションをとっていくなど、段階を追って進行していきます。

 

―その90分の体験を通じてどういった発見があるのでしょうか

既に海外で開催されていて、体験したことがあるスタッフによれば
「あんなに面白いとは思わなかった」と言っていました。イスラエルとドイツで体験したのですが、「民族性や母国語が違っても面白さは変わらない。声を発さない、聞こえない状態でも対話は可能だと思った」とも言っていましたね。これは日本でもやろうと前向きな意見になりました。

 

―対話をしたい欲求

声が出ない、聞こえないとなると話すことはあきらめてしまうと思っていたけれど、そうではなく、何とか伝える工夫をしている自分がいた。

また、英語が得意ではないから外国人と話すなんて無理と感じていた人がいたとしても、音のない世界でも通じるのだから、英語が出来なくても話そうと思えば通じ合える。特に日本人って、眼を見て人と話すことが苦手な人が多いと聞きます。

ただ、今回は聞こえないし声も出せないので、相手を見ながらコミュニケーションすることが自然と求められます。
すると、身振り手振りや、顔の表情をツールとして使わなければならないので、プログラム終了後に「自分の手や表情がこんなに雄弁だとは思わなかった」とおっしゃる海外の体験者も多いみたいですね。

 

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海外でのダイアログ・イン・サイレンスの様子、手を使い影絵のようなものを作っているようにも見える。(The concept of “Dialogue in Silence” and its related trademarks are the intellectual property of Dialogue Social Enterprise GmbH.)

 


―表情を豊かにふるまう、派手な身振り手振り、は日本人が苦手そうな行為ですね。

そこは、普段と違う自分を発見するようです。
普段、顔の表情が乏しい人でも「何とかしなければ」と振る舞ううちに、周囲と自分の表情がリンクして「いま自分がどういう表情をしているのか」「この感情はどういう顔をすれば周囲が理解してくれるのか」が理解できてくるそうです。

耳で聞くこと、言葉を声に出さなくても、自分の気持ちを伝え相手の状況をくみ取る「新しい言語」として表情やジェスチャーが使えることを認識するようです。海外の方も日本の方も「手話に近い、新しい言語で話す国の人」として過ごす90分かもしれません。

 

―バイリンガルというか、普段と違う脳の使い方をしそうです。

そうですね、私はダイアログ・イン・サイレンスのスタッフなど、聴覚に障害のある方と1日中話すこともありますが、やはり1日が終わった時の疲労感が違うと感じます。

そこに集まった全員が「母国語と違うやり方」でコミュニケーションをとろうとしますから、たった90分のプログラムですが、初対面の方と普通に口頭で話すのとは違った刺激、発見、それによる疲労感はあるかもしれないです。

 

―そもそも初対面の人と打ち解けるのに90分って決して長くないですよね。

性別差も多少あるかもしれないですね。
ダイアログ・イン・ザ・ダークは暗闇で全く見えない状況に置かれますが、女性は「見えない」という状況を受け入れて10分くらいで聴覚や触った感触を頼り始める方が多いです。

男性は「よく見れば何か見えるはずだ」と視覚に固執し、順応するまでの時間が長い方が多いです。聴覚を遮られた状態で話すことは、同じような傾向が見て取れる可能性はありますね。

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こちらも海外での様子。顔の表情を使いなにかを表現しようとしているように見える。(The concept of “Dialogue in Silence” and its related trademarks are the intellectual property of Dialogue Social Enterprise GmbH.)

 


■普段とは違う自分が引き出される


―実はダイアログ・イン・ザ・ダークを以前体験したことがあります。「思っていたより自分は社交的に振る舞えるのだな」という発見がありました。

普段と違う人格が出る、というのはよく聞きます。
真っ暗闇で声を掛け合って進みますが、普段口数の多い人は言葉数が減り、無口な人が率先して声を出してリーダーシップをとるというのはよく見る光景です。

 

―わかります。普段入らないスイッチが入るような感覚です。

ダイアログ・イン・ザ・ダークは暗闇で見えなくなる衝撃がありますが、サイレンスのほうは「見えているのに聞こえない・話せない」というもどかしさがあります。

海外でも日本人は「ちゃんと英語が話せないから堂々と振る舞えない」という方が多いです。完璧主義でシャイ、不完全な自分を見せたくない。「まずはちゃんとマスターしてから」と考えがち。

 

―確かに「ちゃんと話せないから口数が少なくなる出来ないから恥ずかしい」というのは、心当たりがあります。

でも海外の方で、多少発音が汚くても堂々と相手とコミュニケーションする人がいますよね?ダイアログ・イン・サイレンスは言葉を話すスキルを一切使わないので、そういった「完璧でなくても堂々とふるまう自分」を体験するかもしれませんね。

今回お話を伺った、総合プロデューサーの志村季世恵さん。一般社団法人ダイアローグ・イン・ソサエティの代表理事を務めるとともに、バースセラピストとして多くの方へのカウンセリングも行っている。

今回お話を伺った、総合プロデューサーの志村季世恵さん。一般社団法人ダイアローグ・イン・ソサエティの代表理事を務めるとともに、バースセラピストとして多くの方へのカウンセリングも行っている。

 


■限定された状況から生み出される、新しい技術のヒント


―ダイアログ・イン・ザ・ダークはこれまで国内でも19万人が体験されたそうですが、研究や技術に従事する方もいらっしゃいましたか?

はい、会社や学校の研修にご利用頂くことや、商品開発担当の方、研究者の方も多数来て頂きました。
「全く見えない」という状況は普段の生活で得難い体験なので、それを通じて色々なヒントを得ようとしているそうです。アテンドスタッフは視覚障害を持つ者もいますが、熱心にヒアリングする方も多いです。

 

―新しい視点、発見が色々あるのでしょうか

元々、過去に爆発的にヒットした商品の中には、「障害を持つ人向けの商品」が沢山あります。

例えば、火をつける「ライター」は戦地で片腕を失くした兵士が煙草を吸いたいけど、マッチを擦るために両手を使う必要があった。そこで片手でも火がつけられるものを、と生まれた経緯があります。

本当に便利なものは、「何か限定された状況での利用」を考慮されていますから、そういう状況が日常になっているスタッフから、ヒントを得ようとしているのだと思います。

 

―限定されることで生まれる工夫の発想ですね

はい、わたしは別の仕事で四肢が不自由になり話すことも難しい状況になった方を長年カウンセリングしているのですが、その方は瞬き(まばたき)がとても上手になります。

四肢が不自由で、表情もジェスチャーも使えない、でも意思を伝えるために瞬きを工夫するんです。するとその方の瞬きが雄弁、というのでしょうか、とにかく瞬きに表情を感じるのです。

 

―瞬きだけで、多くを語るようになる、みたいなことですか?

そうですね、わたしはその方が普通に話せていた頃から面識がありますが、全然印象が変わりました。この人はこんなにチャーミングな人だったのかと。

これはノンバーバルコミュニケーションだと思います。「非言語なコミュニケーションを会得したことで、その方が普通に話していた頃に気が付かなかった側面」を見つけたんです。


―障害を持つ方は、新しい技術の恩恵を受けるだけでなく、それを生み出すヒントのようなものを持っている存在ですね。

確かに、今回のダイアログ・イン・サイレンスは、日本語も英語も既存の言語を一切使わない「非言語(ノンバーバル)」プログラムですから、コミュニケーションのあり方を研究する方、サービスを創ろうとしている方には、何かヒントになるかもしれませんね。

 


■障害者向けのインフラが整備されている日本、そこにある違和感


―障害を持つ方、の話題が出たのでお聞きしたいのですが、日本と海外の障害に対する考え方や状況の違いを感じますか?

たくさん感じます。
まず主宰のハイネッケ博士が来日した際に驚くのが「インフラ面が整備されているけど、違和感がある」ことだそうです。


―違和感とは?

彼が言うには、東京はどこに行っても公共施設なら点字ブロックがあり、移動する際のスロープなど障害を持つ方にやさしい作りになっている。これはすばらしいと。

ただ、「あれは誰が使っているんだ?僕は今日1日東京を移動して1人も障害を持つ人を見てないぞ?」と違和感を口にするんです。

 

―確かに、日本国内では日常的に障害を持つ方と交流する接点は多くない気がします。

関わり方、背景となる文化も違う気がします。

海外だと関わることがマナー、日本ではむしろ見てはいけない、というような風潮があったのかもしれません。

どちらが一概に良いという話では無いと思いますが、見ないことから今では無関心に発展していったように思います。

ですから、日本にもう少し多様性が必要ですし、関わりをもつことが重要だと思うのです。

 

―最後に、8月1日からダイアログ・イン・サイレンスが開催されています、場所が新宿ルミネというのが少し気になりました。これは何か意味があるのでしょうか?

あります。普段自分とあまり交流しない人が自然と集まる場所で開催したいと考えたんです。
新宿って、バスターミナルもあって海外の観光客も多くて、ビジネスマンもそうでない方も沢山行き交う、とても賑やかな場所ですよね。

だから1人でお越し頂いても、友人と数人で来て頂いても、恐らく何人かは海外の方をはじめとして、普段全く交流しない人と一緒になるかもしれません。

 


<ダイアログ・イン・サイレンス チケット情報・開催情報>
開催期間:2017年8月1日(火)~20日(日)
開催場所:LUMINE 0 NEWoMan新宿 5F/東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55
開催時間:11時スタート~19時半スタートの回まで、1日16回開催予定(体験時間:約90分)、各回定員12名
※開催時間の詳細は予約ページでご確認ください

チケットの予約はこちら

参加費
大人 4000円 大学生 3000円 小・中・高校生 2000円
お問い合わせ:080-4160-3103(10時〜18時)
※事前予約制です。満席であっても一部当日券がございますので詳細は上記リンクよりご確認くださいませ。※障害者割引はありません


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