astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「機能性衣料」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。
「機能性衣料」について
着ているだけで、常に健康状態をモニタリングできる衣類が登場した。2014年1月、東レとNTTは、着衣するだけで心拍・心電などの生体情報を取得できる機能素材「hitoe」を開発したと発表した。最先端繊維素材のナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングしたことで、高い耐久性と生体信号の高感度の検出を可能とした。ナノファイバー繊維の生地にある無数の間隙に特殊コーティング技術で導電性高分子を高含浸し、樹脂の連続層を形成、生体信号の高感度検出と耐久性を両立させた。導電性高分子として、Bayer社が開発した液晶ディスプレイにも利用されている「PEDOT-PSS」を用い、心電心拍情報を連続的に計測可能な生体センシングインターフェイスとしてのウェアを構成した。
一方で、米国DARPA (Defense Advanced Research Projects Agency:国防総省国防高等研究事業局)のDSO (The Defense Science Office:国防科学研究室)が開発を進めているWarrior Webは、関節と筋肉をパワーアシストして負傷を防ぎ、疲労を軽減するという歩兵用スキンスーツだ。このスーツは薄く軽量で戦闘服の下に着用できるうえ、構造自体に駆動装置やセンサ、コンピュータ、バッテリを内蔵し、通信や制御機能を備えたシステム (ウェブ) で構成されている。センサで突発的な怪我や習慣性障害につながる力を感知し、負傷を防止または軽減する受動的な役割のほか、各関節や筋肉の働きを補強することで、重い装備品を身につけて行軍する代謝コストを下げる能動的な役割も併せ持つ。戦時のみならず、災害時や遭難救助時にも威力を発揮するだろう。
さらに、ヒトの快適さを求めて自ら温度調節する服も現れた。ANREALAGE(アンリアレイジ)を主宰するデザイナー森永邦彦は、2015年3月、ラフォーレミュージアム六本木にて開催された「14-15AWコレクションショー」で、「気温で変化する服」を披露。ライトの熱によりトップスのスラッシュ(切り込み)が開き、無数の穴が現れる―これはNASAのために開発された機能素材「Outlast」による効果である。繊維に含まれる直径2-30μmのマイクロカプセルに封じ込められたパラフィンワックスが、暑いときには余分な熱を吸収し、寒くなると熱を放出することで、身体の表面温度を常に31度から33度に保つように働く。15S/S(2014年開催)でパリコレクションデビューを果たした森永は、「紫外線で色が変わる服」、「サイズが変わる服」、身体そのものの形を壊す「変換系の服」など、最新テクノロジーを積極的に用いた洋服のデザインで知られる。
また、2014年9月、ニューヨークファッションウィークで、3Dプリントされた布地を使ったドレスがランウェイを飾った。ファッションデザイナーのブラッドリー・ローゼンバーグ氏は、布地やレース部分に3Dプリントされたオブジェクトを用いたドレスを製作。 これはSLS(選択的レーザー焼結)方式の3Dプリンタ「EOS P760」を用い、柔軟性のあるTPE素材でプリントされたものである。
このほか、クールビズやウォームビズ、GPSシステム内蔵のスポーツウェア(ナイキ)や、LED内蔵の発光衣料(コニカミノルタ)など、様々な機能が提案されている。
「機能性衣料」市場のグローバル市場規模
経産省発表の「ファッション業況調査及びクールジャパンのトレンド・セッティングに関する波及効果・波及経路の分析」によると、主要国におけるファッション市場規模は、2013年に206兆円、2020年には325兆円へ成長するとされ、うち、機能・技術訴求型市場は約25.2兆円(≒2100億米ドル)と見込まれる。
astavisionでは、年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)を10%と仮定し、2025年段階での機能性衣料のグローバル市場規模は、3382億米ドル(≒40.6兆円)と推計する。
近日公開予定の「機能性衣料」市場コンテンツでは、この市場の最新技術や関連して発展する市場、活躍できる職種などを紹介する。