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リクルートの事業開発・デジタルマーケティング最前線~第5回 マーケティング・テクノロジーフェア 2017 講演レポート~

text by : 編集部
photo   : 編集部(人物写真はTFM事務局提供)

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マーケティングオートメーションやOne to Oneマーケティング、AI、IoTのマーケティングへの活用など、あらゆるマーケティングソリューションが一堂に会する『第5回 マーケティング・テクノロジーフェア 2017』が2月14~15日の2日間、東京ビッグサイトにて開催され、2日間で71社・団体の出展、12,136人の来場者を集める盛況となった。

今回は、多数開催されたセミナーの中から「マーケティングイノベーション2017~リクルートの事業開発・デジタルマーケティング最前線」と題し、リクルートが手がける人材業や婚活サービスにおけるデータ活用・提携戦略について論じられたセッションをご紹介する。


 

■「マーケティングイノベーション2017~リクルートの事業開発・デジタルマーケティング最前線」

[モデレータ]
青葉哲郎氏(サイコス株式会社 代表取締役社長 マーケティングコンサルタント)
[ゲストスピーカー]
貝瀬 雄一 氏(株式会社リクルートマーケティングパートナーズ マリッジ&ファミリー事業本部 執行役員)
板澤 一樹 氏(株式会社リクルートジョブズ 商品本部 デジタルマーケティング室長 執行役員)

 
イオン、マイクロソフト、リクルートを経て2009年にマーケティングコンサルティング会社、サイコスを立ち上げたモデレータの青葉哲郎氏は冒頭、マーケターを取り巻く環境に触れ、「社会構造が大きく変化する中で、消費者はデジタルテクノロジーを使いこなし飛躍的な進化をしています。一方、多くの組織は変化に対応できておらず、大手企業であっても淘汰が始まっています。このような状況に、マーケティング部門はどのように向き合うのか。今日はマーケティング戦略と事業開発の観点で先進的な取り組みをされているリクルートのお二人よりお話を伺いたいと思います」と述べた。

青葉哲郎氏(サイコス)

青葉哲郎氏(サイコス)

 

データ活用において重要な役割を果たすのは「データ整備担当」

『タウンワーク』などを運営するリクルートジョブズの板澤一樹氏は、自社のアルバイト・パート向け求人メディアのユーザーにおけるデバイス別のシェアに関して、5年前に1割程度だったスマホが現在では9割程度になり、その一方でPCのシェアが1割程度になっていることに触れた。

「アルバイトやパートを対象にしているという事業特性もありますが、スマホの伸びは線形だったので予測はしやすかったと言えます。」

AIやMA(Marketing Automation)といったテクノロジー、サービスに関しては、UX(User Experience)を上げるために導入していくというスタンスを示した。

「MAツールによって、マーケターサイドで直接管理できるチャネルが広がり、BtoCマーケティングが変わりつつあります。デジタルマーケターの仕事はPOE(Paid, Owned, Earned)の戦略策定や運用を考えるだけではなく、One to OneでUXを考え、顧客のUXを統合管理していく仕事になっていくと考えています」

そのための体制として、自社の求人メディア横断で開発、マーケティング、編集等を機能別に統合し、効率化とスピード向上を実現していることについても説明した。

AI・機械学習・ビッグデータの活用については、予算策定・予算配分・広告出稿のプロセスをAIで自動化し、効率化していることについて言及した。

また、AIの成功事例として、LINEアカウントとして展開しているチャットボット『パン田一郎』を挙げた。

「『パン田一郎』は約1700万人のユーザーによって約4億回利用されていますが、たとえば新宿のカフェで昼間に働きたい、といった自然な文言で話しかけると指定の条件での求人検索結果を返します。データが得意なメンバーと、UXが得意なメンバーがチームとなって開発した成果と言えるでしょう」

データの活用については、各自持ち帰って検証してほしいこととして、「必要なデータがあるか」と「それが使える状態になっているか」ということを挙げた。

「たとえば、マーケティングはオンライン上で行っていても、コンバージョンはリアル店舗、といったようなこともあると思います。それらのデータを統合・集計する必要があります」

データ整備の重要性については次のように強調した。

「データ活用というとデータサイエンティストやデータエンジニアといった職業が華々しく取り上げられていますが、データ活用において重要な役割を果たすのは、データを整備する担当です。データの生成プロセスにも着眼し、オフラインデータをどういったフローで作っているかまでを把握することが重要になってきます。そのフローを可視化したデータフローダイアグラムというものがあるのですが、当社ではこれを毎年若手にアップデートしてもらって、業務への理解を深めてもらっています」

最後に、『DataRobot』やGoogleが公開した『TensorFlow』のように、様々なサービス、フレームワークの提供により、深い専門知識がなくても機械学習を活用できる可能性が広がっていることについて触れ、

「これからのAIなど広い意味でのデータ活用は、データの量や質だけでなく、アイデアや実行力が鍵になっていくでしょう」と締めくくった。

板澤 一樹 氏(リクルートジョブズ)

板澤 一樹 氏(リクルートジョブズ)

 

提携戦略において重要なのはブランド・経営アセットの等価交換

『ゼクシィ』の婚活事業などを手掛けるリクルートマーケティングパートナーズ マリッジ&ファミリー事業本部 執行役員の貝瀬雄一氏は冒頭、「2000年には約80万組いた婚姻組数が2020年には約60万組と25%減が見込まれ、2020年には男性の5人に1人が未婚、女性の10人に1人が未婚になる(50歳以上で)と見込まれています」と日本の現況について述べた。

「いま未婚の男女約1800万人の45%にあたる約810万人にパートナーがおらず、しかもその90%にあたる約720万人が結婚を望んでいます。にもかかわらず結婚相談所を利用している人は約20万人しかいません。利用を妨げている要因として挙げられるのがHAT(はずかしい・あやしい・たかい)といったサービスに対するネガティブかつ偏った印象と言えます。

アメリカでは2000億円市場となり、インフラ化・当たり前化が進む婚活サービスだが、日本でも現在では未婚男女の約2割が何らかの婚活サービスの利用者であり、約600億円の市場にまで成長した。リクルートが『ゼクシィ』ブランドで運営する『恋結び(恋活サービス)』は約24万人、『縁結び(婚活サービス)』は約12万人、『縁結びカウンター』は約5000人、『パーティ』は約10万人の利用者を誇る。その背景として、徹底した提携戦略があったことについて触れた。

「パートナーエージェント社との提携により、約1.5万人のDBやノウハウを得ることが出来ました。パートナーエージェント社もこの提携を一つのきっかけに『コネクトシップ』という業界最大級のDBプラットフォームを作り、他社との提携も実現することに繋がっていると思います」

また、先行して展開していた同ブランドの結婚準備サービスとの連携について、
「『縁結びカウンター』は、既存の『ゼクシィ 相談カウンター(結婚準備相談窓口)』との併設により、開始1年半で全国17店舗に拡大することができました。結婚件数自体が減っている中で、自社のアセットを異動させる形で実現できたことと言えます」と述べた。

入会金10万円が相場だった婚活業界で、入会金3万円という破格の料金を実現した背景としては、人材業を手掛けるリクルートならではの発想を披露した。

「我々には当初から『フィットネス感覚で利用できる婚活サービスを』というコンセプトがありました。従来の結婚相談所の入会金が10万円だったのは、CPA(1件のコンバージョンにかかる広告コスト=成約単価)が10万円だったからです。このCPAを3万円に下げることができれば入会金3万円を実現することが可能です。『縁結びカウンター』では資料請求を無くし無料相談予約のみとすることで営業コストを無くしました。これまでは、コーディネーターが営業なども兼任していたため1人あたりの対応人数は月間40~50人が限界だったのを、ゼクシィでは100人まで対応可能になり、CPAの引き下げを実現することができました。また、紹介なしの自薦型プラン『シンプルプラン』で20代の開拓にも成功しました」

同事業は、パートナーエージェント社以外にもこれまでABCクッキングスタジオや佐賀県のような自治体、結婚式場やカフェ、商業施設とも積極的なコラボを展開している。

「もともとリクルートは自前主義を中心に事業創りをしてきた側面のある会社だと思いますが、この事業に関しては徹底した提携戦略を取り、ブランド・経営アセットの等価交換を重視して推進してきました。2014年の段階では利用率10パーセントだった婚活マッチングサービスも、2017年には利用率20%までになりました。現在は男性新規ユーザーを獲得すべく、実在の男性ユーザーを前面に出した広告クリエイティブを開発しています」

貝瀬雄一氏(リクルートマーケティングパートナーズ)

貝瀬雄一氏(リクルートマーケティングパートナーズ)

 

プレゼン後に行われたディスカッションでは、板澤氏から貝瀬氏に「『ゼクシィ』のブランドを活用したマーケティングはどこで意識したか」との質問が飛んだ。これに対して貝瀬氏は「リクルートでは新規事業の開始の判断も早いが、結果が出ない新規事業の撤退の判断も早いと思う。集客の部分で、いかに最初からトップギアを入れるかが重要だった」と答えた。

また、動画を活用したマーケティングに関して、モデレータの青葉氏から「動画マーケティングに関してリサーチをかけたところ、数百億かけたマーケティングが無駄になってしまう、獲りたいターゲットに刺さっていないという実態が見えてきた。獲りたいターゲットに絞る、それ以外は捨てる、という判断が必要になるのではないか」という問題提起があった。これに対して板澤氏は「動画マーケティングは色々と試しているが、成功させるのはなかなか難しい。筋の良い動画をコストを抑えながら制作できる体制を整備している。」との見解を示した。

貝瀬氏は「事業拡大期は、予算があってもCPAの上限というものがある。画像から動画へとトレンドが移っている中で、動画はコストがかかる上に簡単には撮り直しができないという難しさがある。動画撮影の際、作業ごとに別コストをきちんと出していくようにすると、結果的にはうまくいくのではないかと考えている」と答え、動画マーケティングの課題と解決の道筋を示した。


 

第6回マーケティング・テクノロジーフェアは2018年2月13~14日の2日間、東京ビッグサイトにて開催予定。

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