エレクトロニクス

生体情報デバイス・バイオセンサ

2025年グローバル市場規模予想

150億ドル

生体情報デバイス・バイオセンサ
「音楽を学習した人工知能は、人間を感動させることができるか?」をテーマに、クラブイベント「2045」が、2015年2月始動した。アーティストでプログラマの真鍋大度とプログラマでDJの徳井直生の二人がオーガナイズする、コンピューター・テクノロジーが完全に人間を超える「シンギュラリティ」が起こるとされる2045年をモティフに、音楽とテクノロジーの未来を実践的に考える試みだ。二人は人工知能を使って選曲するアルゴリズムDJと専用iPhone用アプリを開発。iBeaconや加速度センサなど複数のセンサでオーディエンスの情報を収集し、それらの情報を人工知能に送り、フロアに流す楽曲を最適化する。オーディエンスのiTunesプレイリストデータや、会場内での位置情報、加速度センサによる盛り上がり度合いなどのほか、オーディエンスのDJに対して送る「いいね!」や「ブーイング」などの反応などを収集し、それらを人工知能で解析。DJが自らの感性でその場の空気を読取り選曲するプロセスをミミックしたものだ。これは、アーティスト自身がIoT/IoEのノードとなる未来の予兆かもしれない。

小型軽量のデバイスを皮膚表面に貼っておくだけで、体温や心拍、運動状態など24時間の健康状態をモニタリングし、異常が検知されればアラートを発信し、遠方にいる家族や医師にもメールで異常を知らせることができる。計測データをモバイル端末で見ることや、インターネットを介してPCにデータを送ること、クラウドサービスにデータを蓄積して評価分析することもできる。これがウェアラブル生体情報センサの典型的な利用例であり、セルフケアや患者・高齢者の見守りに威力を発揮する。

近年、鳥の羽毛の様に軽くて柔らかなフレキシブル回路を利用した薄膜トランジスタセンサ、皮膚に直接貼りつけられる電子タトゥ型センサなど、より自然に身体になじむ生体センシング技術の登場が相次いでいる。さらに、BioMEMSなどのナノテクとVR(仮想現実)技術の融合により、失われた視覚を一部取り戻すインプラント(体内埋込み)型の人工網膜センサチップがFDA(米国食品医薬局)で認可されるなど、生体情報センシングの可能性はますます広がりつつある。
日立ハイテクノロジーズは2015年2月、人間行動データを取得・解析し、組織生産性に強く相関する「組織活性度」を計測できる新ウェアラブルセンサを開発したと発表。先に日立製作所が開発した集団の幸福感を身体運動の特徴パターンから「ハピネス度」として定量化する技術を活用したものである。組織生産性の向上に相関のある行動の抽出や業務改善、生産性向上などの支援を目的とする。
生体情報は、健康や医療の範疇を超えて、芸術文化や企業経営の世界までをも活躍の舞台としつつある。

生体情報デバイス・バイオセンサの活躍の場

  • ・ビッグデータ・データマイニング・
    データセンター
  • ・MEMS・マイクロマシン・組込システム
  • ・ユビキタス機器(ウェアラブルデバイス)
  • ・予防医療・見守り
  • ・脳波応用機器
  • ・五感の応用・人工感覚
  • ・個別化医療・ポイントオブケア・診断薬
  • ・先進医療機器
  • ・メンタルヘルスケア
  • ・遠隔医療
  • ・個人識別・生体認証
  • ・スマートモビリティ・ITS高度道路情報システム
  • ・音声認識・音声合成・ボーカロイド
  • ・インテリジェントスポーツ・スマートスポーツ
  • ・地域包括ケア
  • ・心臓循環器系の医学薬学
  • ・手術ロボット・手術支援システム
  • ・ロコモーティブ症候群・関節疾患
  • ・BAN(BodyAreaNetwork)・人体通信
  • ・IoT/M2M(InternetOfThings/
    MachinetoMachine)
  • ・介護ロボット・生活支援ロボット
  • ・ファクトリーオートメーション・工作機械・
    産業ロボット
  • ・遠隔臨場制御・テレプレゼンス・
    テレイグジスタンス
  • ・市場予測・未来予測
  • ・情報芸術・科学と芸術の融合

生体情報デバイス・バイオセンサのグローバル市場規模推定

米国の市場調査会社であるIHSによると、2012年のMEMS市場全体の売上高は84億7000万米ドルだった。また、Global Industry Analysts(GIA)の2012年の市場予測によると、医療ヘルスケア向けバイオセンサの市場は2017年には約100億米ドルになる見通しとされる。astavisionでは、MEMS・マイクロマシン・組込システムのグローバル市場規模を2025年段階で450億米ドルと推定した。現状ではその7-8割を車載用途が占めるが、今後、ヘルスケア需要が増大し、全体の3割強を占めると推定する。このことから、生体情報デバイス・バイオセンサの2025年段階でのグローバル市場規模は、年間150億米ドル(≒1.8兆円)と予想する。

生体情報デバイス・バイオセンサとの連携により発展していくと予想される事業分野

MEMS・マイクロマシン・組込システム

地域包括ケア

ユビキタス機器(ウェアラブルデバイス)

手術ロボット・手術支援システム

予防医療・見守り

BAN(BodyAreaNetwork)
・人体通信

脳波応用機器

IoT/M2M(InternetOfThings/
MachinetoMachine)

五感の応用・人工感覚

個人識別・生体認証

個別化医療・ポイントオブケア・診断薬

スマートモビリティ・
ITS高度道路情報システム

遠隔医療

音声認識・音声合成・ボーカロイド

介護ロボット・生活支援ロボット

インテリジェントスポーツ・
スマートスポーツ

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この市場で
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機械系エンジニア

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機械分野研究開発

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薬事

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今、時代はIoT(Internet of Thing)、IoE(Internet of Everything)、あるいは、CPS(Cyber Physical System:電脳空間と実空間の融合)という大きな技術潮流を目の当たりにしている。
IoE時代の生体情報センシングを担うデバイスは、加速度センサや温度センサ、DNAチップや糖鎖チップなどのBioMEMSだけに留まらず、GPS(測位衛星)やiBeacon(GPS電波の届かない場所で位置情報を発信する発信機)などの位置情報システム、音声認識・音声合成技術、 VR(仮想現実)・AR(拡張現実)などの人工感覚技術、さらには、人工知能、ロボット、クルマ、都市システムまでもが生体情報と有機的に繋がり合い、生体情報に合わせたサービスやソリューションが利用できるようになる。アイデアは無尽蔵だ。

1)筋電義手
 日本のベンチャー exiii(イクシー株式会社)が開発した筋電義手「handiii」では、筋電を測る電極を腕に3枚貼り、得られた筋電データはBluetoothでスマートフォンに転送される。スマートフォンに予め登録しておいたマッピング通りに筋肉を動かすことで義手を自由に操ることができる。2015年5月、次世代モデル「HACKberry」の技術情報をオープンソース化。
2)インプラント型人工眼
 米国の医療機器会社Second Sight社の人工眼“Argus II”は、小型カメラがとらえた映像情報を眼球の奥に埋め込んだ電極(インプラント型人工網膜)に無線送信し、失われた視力の一部を回復するデバイス。米国食品医薬品局(FDA)が2013年2月に医療機器として承認している。
3)有機薄膜トランジスタ
 東京大学大学院工学系研究科の染谷隆夫教授らは、世界最軽量(3 g/m2)かつ最薄(2マイクロメートル)のスーパーフレキシブル電子回路の開発に成功。陽極酸化を用いた独自の室温プロセスにて、表面が粗い高分子フィルムに、厚さ19ナノメートルという極薄の絶縁膜を高均質かつ基材への密着性高く形成する。装着感のないヘルスケアセンサやストレスフリーの福祉用入力装置、医療電子機器用センサ、衝撃に強いスポーツ用センサなど多方面への応用が期待される。
4)皮膚に直接貼れる電子タトゥ
 UC San DiegoのTodd Coleman教授が開発した電子タトゥは、脳インプラントに替り、非侵襲的に脳神経信号(EEG)を計測するフレキシブル電子回路。弾性のあるポリエステル素材の中に電子回路がプリントされている。皮膚に装着した状態で様々な生体情報を収集することができる。回路内にECG(心電)、 EMG(筋電)、 EEG(脳電)センサとマイクロソーラーセル、ワイヤレスアンテナが搭載されており、ワイヤレス機能を使ってデータ取得できる。
5)体内摂取可能な電子回路
 米国Proteus Digital Health社は、錠剤に添加して体内に摂取可能なMEMSセンサ(Ingestible Sensor)を開発。胃の中から体外に送信された情報から、摂取した薬の種類や量、時刻などが分かる。2012年にFDAがde novo 510(k)の承認をしている。
6)生体センシングファブリック
 東レとNTTは、着衣するだけで心拍・心電などの生体情報を取得できる機能素材“hitoe”を開発。最先端繊維素材であるナノファイバー生地に高導電性樹脂を特殊コーティングすることで、耐久性に優れ、生体信号を高感度に検出できる。
7)AR(拡張現実)グラス
 米国Microsoft社は、現実世界とホログラムのバーチャル世界を融合させるヘッドセット“HoloLens”を開発していることを発表。 HoloLensは、ワイヤレスでコンピュータやスマートフォンとペアリングしなくても単独で機能する。ヘッドセットはCPU、GPUに加えて、ホログラフィ処理に特化した独自のHPU(ホログラフィック・プロセッシング・ユニット)を備える。
8)3Dホログラフィ
 3Dホログラフィック・ディスプレイを開発するイスラエルのReal View Imaging社は、患者の生体組織を「宙に浮いた」3Dホログラムの形で見ることができ、スタイラスや手でこれに触れ、向きを変えたり回転させたりすることができる。手術対象を立体モデルで事前に詳細に検分することができるため、処置時間の短縮や意外な障害に気づくなどが期待される。
9)生体情報を活用した自動車運行管理ソリューション
 東芝と日本IBMは、2015年5月、ドライブレコーダやGPS等の従来情報にドライバーの生体情報を加えた自動車運行管理ソリューション分野で協力することを発表。リストバンド型活動量計で収集したドライバーの睡眠状況や生体情報とドライブレコーダで計測した道路交通情報を用い、クラウド上でビッグデータ解析を行い、最適運転経路への誘導や事故率の高い経路を回避することで低燃費で安全なフリートマネジメントの実現を目指す。
10)植物の生体情報をスマート農業に活かす
 富士通は2015年5月、2014年創業のベンチャー企業PLANT DATA JAPANと農業の高度化での協業を発表。ICTを用いて、光合成活性情報や葉の大きさ・枚数などの植物生体情報と施設内外の環境情報を計測して可視化することや、計測データから自動で環境の改善を行うなど作物の収量・品質向上に貢献するシステムの構築が期待される。

こうした生体情報センシングは、IoT/IoEにつながることで、ますます大きな可能性を持つと同時に、とりわけセキュリティに関わる多くのリスクも孕んでいる。そのリスクをコントロールしていけば、地球規模の集学的ナレッジ空間における知の協創という新たなステージに到達するだろう。

astavisionでは「成長している市場」、「未来を創る企業」を掲載しています。

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