医療・健康

がん医療

2020年グローバル市場規模予想

5000億ドル

がん医療
国立がん研究センターの統計予測は、2015年の国内全がん罹患者数を982,100人、同死亡数を370,900人と見込んでいる。医学薬学の飛躍的進歩の中でも、依然、がん(悪性新生物)の脅威は治まらない。2012年度―2016年度の5年間を対象とする「がん対策推進基本計画」では、1. がんによる死亡者の減少(75歳未満の年齢調整死亡率の20%減少)、2. 苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上、3. がんになっても安心して暮らせる社会の構築 が全体目標とされている。さらに、重点的に取り組むべき課題として、放射線療法・化学療法・手術療法の更なる充実、精神心理的苦痛に対する心のケアを含めた全人的な緩和ケアの推進、がん登録の推進、働く世代や小児へのがん対策の充実 が挙げられている。医療技術としては、miRNA(マイクロRNA)マッピングなどの早期発見技術と同時に、早期治療技術の確立が急務である。早期治療には生体の自然免疫システムを活性化する免疫細胞治療や遺伝子治療に期待が持たれる。また、がん幹細胞の弱点を突き止めれば、がんの根治にも繋がる可能性もある。臓器再建に向けての再生医療への期待も根強い。今後のがん医療全体として、身体により優しい低侵襲性治療や様々な分野の専門医・専門家が分野の壁を外して治療に参加する集学的治療が重要となる。そして何より、全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう医療技術等の格差の是正を図る「均霑(てん)化」の徹底が必須である。

がん医療の活躍の場

  • ・再生医学・細胞治療
  • ・ゲノム医療・核酸・遺伝子治療
  • ・超小型モビリティ・パーソナルモビリティ
  • ・抗体医薬・分子標的薬・薬物送達システム
    (DDS:Drug Delivery System)
  • ・予防医療・見守り
  • ・地域包括ケア
  • ・個別化医療・ポイントオブケア・診断薬
  • ・伝統医学・伝統薬物・EBM・統合医療

がん医療のグローバル市場規模推定

厚生労働省発表の国民医療費の概要によると、平成24年度の国民医療費は39兆2,117億円、前年度の38 兆5,850 億円に比べ6,267億円、1.6%の増加が見られる。そのなかで、医科診療医療費を主傷病による傷病分類別にみると、「循環器系の疾患」5兆7,973億円(構成割合20.5%)が最も多く、次いで「新生物」3兆8,120億円(同13.5%)。前年度23年度と比較すると、 1,739億円、4.8%の増加となっている。平成21年度以降、4-5%程度の伸びが続いている。この状況が続くと仮定すると、2020年度には、5兆4,210億円に達することになる。また、2020年度の罹患者数を100万人とし、保険医療以外の民間保険費用、リラクゼーションや補完代替医療の費用、介護費用などで年間120万円かかるとすれば、全体で1.2兆円、総計6兆6,000億円となる。
OECD諸国の医療費を対GDP(2012年)でみると、日本は約10.3%、米E国以外の主要先進諸国も概ね10-12%程度であるが、米国だけが16.9%と突出している。米国でのがん医療費は3倍以上といわれ、人口が2倍であることを考慮しても、高い水準にある。これを考慮して全世界規模でのがん医療費を推定すると、2020年で60兆円≒5000億米ドル程度と見込まれる。

がん医療との連携により発展していくと予想される事業分野

単一分子計測・極微量分析・
次世代シーケンサ

テレプレゼンス・テレイズジステンス
(遠隔臨場制御)

ゲノム医療・核酸・遺伝子治療

3D・VR・AR・MR

伝統医学・伝統薬物・EBM・統合医療

個別化医療・ポイントオブケア・診断薬

コミュニケーションロボット

機能性食品

機能性化粧品

先進医療機器

予防医療・見守り

生体情報デバイス・バイオセンサ

inSilico創薬・スパコン創薬・
機能分子設計

ユビキタス機器
(ウェアラブルデバイス)

この市場で活躍する可能性が高い職種です。

この市場で
活躍する職種

IT・通信分野研究開発

食品分野研究開発

看護師/准看護師

メディカル分野
研究開発

化学分野研究開発

臨床検査技師

バイオ分野研究開発

MR

医師/歯科医師

医療機器研究開発

臨床開発

薬剤師

総括

がん医療を支える技術としては、現在研究が進んでいるmiRNAマッピングやイメージング抗体技術などの早期発見技術、免疫細胞ワクチンやがん幹細胞破壊などの早期治療技術、低侵襲性治療(外科領域では内視鏡下手術、放射線領域では重粒子線治療や陽子線治療、化学領域では抗体医薬など分子標的薬、細胞ワクチンなど)、集学的治療(異なる専門領域の医師、看護師、臨床心理士、理学療法士、作業療法士、ソーシャルワーカーなどがチームを組んだり、他科と連絡を取り合うリエゾンカンファレンスなどにより、患者の治療方針・計画を立案する取り組み)が重要となる。miRNAは、20-25塩基程度の短いRNA断片で、様々な組織に特異的な配列のmiRNAが見いだされている。近年、各種細胞がエクソソーム(exosome)と呼ばれる小胞に、その細胞に特異的な配列のmiRNAを封じ込めて細胞外に放出すること、さらに細胞間でエクソソームのやり取りで何らかのコミュニケーションをしていることなどが明らかになってきた。がん細胞は、がんの種類や発達段階に応じて、異なる組成のmiRNAを放出していると見られる。驚くべきことに、がん細胞が、抗がん剤や免疫細胞などからの攻撃を回避するために、自らの情報を偽るmiRNAを放出したり、仲間のがん細胞に攻撃者の情報を共有していることも考えられるmiRNA放出をしていることが分かってきた。こうしたメカニズムを可視化することで、がんの早期発見や早期治療に大きく寄与することが期待される。がん幹細胞については、白血病幹細胞、乳がん幹細胞、大腸がん幹細胞など種々のがん幹細胞やその特異的マーカーが同定されており、これを標的とする創薬が始まっている。大腸がん幹細胞では、抗体依存性細胞介在性細胞傷害(ADCC)機構を利用した抗体医薬が有効性が高いと考えられる。免疫細胞ワクチンは、現在、患者自身から採血し、その中から免疫に関係する、樹状細胞やナチュラルキラー(NK)細胞、細胞傷害性T(CTL)細胞などのいずれかを選択的にとりだし、増殖させたのち、体内に点滴で戻すというもの。その他、患者本人に合わせたオーダーメイド医療、個別化医療の第一歩として、コンパニオン診断薬が挙げられるが、国立がん研究センターは、2015年2月、大腸がんの複数のRAS遺伝子変異を同時検出する体外診断用医薬品の開発に成功したと発表、患者一人ひとりのがんの遺伝子の状態に合わせた、より高い精度での個別化治療が実現できるとして期待が高まっている。また、2015年4月末、米国食品医薬品局(FDA)は、米国立保健研究所(NIH)の小林久隆・主任研究員らが開発した体外から近赤外光線を照射してがん細胞だけを破壊する分子標的光治療の治験を許可した。がん細胞特異的に結合する抗体に、近赤外光に反応して発熱する物質を結合させ、これを患者に注射してがん細胞に発熱物質を集中させるDDS(Drug Delivery System:薬物送達システム)と人体表面から5-10㎝の深さまで到達する近赤外光の性質を利用したものだ。一方、医療サービスでは、全国どこでもがんの標準的な専門医療を受けられるよう医療技術等の格差の是正、「均霑(てん)化」が必須であるが、これには、がん医療にかかわる人材の育成や啓蒙教育のほか、技術的には遠隔医療や在宅医療を可能とする医療ICTやデータ医療、テレプレゼンス(遠隔臨場制御)など仮想現実技術も有効だ。

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