医療・健康

ワクチンと自然免疫制御

2025年グローバル市場規模予想

560億ドル

ワクチンと自然免疫制御
2009年6月、世界保健機関(WHO)は、新型インフルエンザA(N1H1)のパンデミック(pandemic:世界的大流行)を宣言、日本でも一気に危機感が高まった。このとき、日本におけるインフルエンザワクチン供給力の低さが露呈し、海外のワクチンの緊急承認による輸入解禁という事態に至った。近年、自然免疫に対する理解の進展により、DNAワクチンや細胞ワクチン、人工ウイルスなど、ワクチン自体の概念も変わりつつある。折しも、2014年夏のエボラ出血熱の欧州・米国への感染拡大により、日本国内でもワクチンの製造供給体制に対する危機意識が高まった。今後、世界的に新世代ワクチンの開発競争が過熱することが予想される。

ワクチンと自然免疫制御の活躍の場

  • ・進化分子工学・
    コンビナトリアルバイオエンジニアリング
  • ・ゲノム医療・核酸・遺伝子治療
  • ・がん医療
  • ・予防医療・見守り

ワクチンと自然免疫制御のグローバル市場規模推定

世界の製薬市場の中で、ワクチンの占める割合は約3%(約2兆円)とニッチ市場であるが、近年の急激な気候変動と関係するといわれる感染症の拡大傾向を鑑みると、予防による安心安全の確保、さらに、医療飛躍性や産業成長への負の影響の削減など、ワクチンによる経済効果は大きい。
2011年のワクチン世界市場規模は約280億ドルで、グラクソ・スミスクライン、サノフィパスツール、メルク、ファイザー、ノバルティスの5社が市場の82%強を占める寡占状態にある。 2005年から2011年までの年平均成長率は15。6%である。
今後、年8%の成長率を維持すると仮定すると、2020年時点でのワクチン世界市場は2011年の約2倍の560億ドルと推定される。

ワクチンと自然免疫制御との連携により発展していくと予想される事業分野

単一分子計測・極微量分析・次世代 シーケンサ

ゲノム医療・核酸・遺伝子治療

進化分子工学・コンビナトリアル バイオエンジニアリング

がん医療

先進医療機器

予防医療・見守り

inSilico創薬・スパコン創薬・ 機能分子設計

個別化医療・ポイントオブケア・ 診断薬

ユビキタス機器(ウェアラブルデバイス)

生体情報デバイス・バイオセンサ

この市場で活躍する可能性が高い職種です。

この市場で
活躍する職種

プラントエンジニア

食品分野研究開発

メディカル系
商品開発

メディカル分野研究
開発

化学分野研究開発

メディカル系
技術サポート

バイオ分野研究開発

MR

化学系分析・評価

医療機器研究開発

臨床開発

食品系分析・評価

総括

ワクチン(vaccine:予防接種剤)とは、感染症の予防を目的に、各種伝染性疾患の病原体(細菌、ウイルス、リケッチア等)の一部または全体を「抗原」として接種し、人工的に免疫応答を誘導するための薬剤の総称である。ハーセプチンやレミケードなどの抗体医薬は抗体自体を投与して抗原である疾患原因分子を除去または阻害しようとする治療薬であるが、ワクチンは抗原を投与することにより、感染前に、病原体に対する抗体産生能を付与して感染に対する抵抗力を高めようとする予防薬である。なお、ワクチンは予防手段であるため、既にウイルスに感染して増殖が進んでしまっている場合にはワクチンの効果はない。一方、インフルエンザに対する抗ウイルス剤のタミフル、リレンザなどは、感染後のウイルスの増殖を阻止する薬剤である。ワクチンによる感染予防は、特定の病原体(抗原)について、自然感染による免疫応答の誘導プロセスを擬体験させること、つまり、人工的に擬感染を起こさせることによってその抗原に対する獲得免疫(抗体産生や細胞性免疫)を誘導することが基本原理である。獲得免疫は過去に感染したことのある抗原に対する免疫システムで、B細胞(抗体産生)とT細胞(細胞性免疫)が中心的な役割を果たす。

一方、自然免疫は未だ遭遇したことの無い初対面の抗原に対する免疫システムであり、白血球、好中球、マクロファージ、NK(ナチュラルキラー)細胞、樹状細胞などの食細胞(異物を食べて破壊する)が中心的な役割を果たす。従来は病原体・異物を貪食するだけの非特異的な免疫反応と考えられていたが、近年、樹状細胞の膜上にToll様受容体(Toll-Like Receptor:TLR)が発見され、自然免疫において、樹状細胞は、10数種類のTLRによって抗原種別を識別することが明らかとなった。自然免疫は抗体のように「狙い撃ち」こそしないが、様々な病原体に初発段階で対応できる。そこで防ぎ切れなかった病原体を狙い撃ちするのが獲得免疫である。自然免疫と獲得免疫が連携してこそ、病原体を確実に排除することができるのである。このように、ワクチン開発には自然免疫のメカニズムを理解し、制御することが非常に重要な課題となってきた。現状、日本国内のワクチン製造供給力は十分とはいえない。パンデミックにこそ至っていないが、新型インフルエンザや高病原性鳥インフルエンザ、SARS(重症急性呼吸器症候群)、プリオン病(クロイツフェルト・ヤコブ病、狂牛病)などの脅威は記憶に新しい。さらに、2014年夏には、西アフリカで猛威を奮うエボラ出血熱が、海を渡って、スペイン、フランス、アメリカに上陸したという衝撃的なニュースが伝えられ、その検査体制やワクチン、治療薬を持たない日本の危機意識を高揚する結果となった。近年の感染症の急激な拡大には、地球規模での気候変動・環境異変が影響しているとする説もあり、今後、異業種からの転入も含め、研究開発競争が激化することが予想される。

astavisionでは「成長している市場」、「未来を創る企業」を掲載しています。

Loading