情報通信

MEMS・マイクロマシン・組込システム

2025年グローバル市場規模予想

450億ドル

MEMS・マイクロマシン・組込システム
MEMS (Micro Electro Mechanical Systems:微小電気機械システム)は、半導体製造技術やレーザ加工技術など各種の微細加工技術を応用し、微小な機械要素やセンサ、アクチュエータ、電子回路を、概ね1㎝角以下のシリコンやガラス、有機材料などでできた一つの基板上に集積化したデバイスを指す。加速度センサやジャイロセンサなどの各種センサ類、インクジェット・プリンタヘッド、自動車のエアバッグ、プロジェクタなどの調光マイクロミラーデバイスなどに用いられている。1台のスマートフォンにはマイクやカメラ、加速度センサはじめ数十種類のMEMSセンサが搭載されている。医薬品や食品に1mm角以下のMEMSセンサを混ぜて被験者に飲み込ませ、その効果や生体情報をモニタリングしようとする試みもある。MEMSとは別に、微小サイズの歯車やモータ、人工鞭毛などで駆動する電子デバイスや分子デバイス、さらに、μTAS(Micro Total Analytical System)またはLab-on-a-Chipと総称されるマイクロ流体チップ(microfluidics)やナノポア・アレイなどの次世代DNA解析チップなどの分析用デバイスなどを合わせ、より広い概念のマイクロマシンとして論じられることも多い。スマートフォンやタブレット端末の普及により、MEMS市場は爆発的な成長を遂げているが、さらに大きな波が押し寄せてきている。米国Trillion Sensors Summit社のCEO兼会長 Janusz Bryzek氏は、2014年12月、東京ビッグサイトで開催されたSEMICON Japan 2014において、「トリリオンセンサーがもたらすInternet of Everything」と題する講演を行い、年間1兆個のセンサを活用する世界(Trillion Sensors Universe)がもたらす”Abundance(潤沢)”について熱く語った。 “Abundance”とは、食糧不足や環境破壊、エネルギー枯渇、医療格差などから解放された「満たされた世界」を意味する。そもそも、”Trillion Sensors Universe”とは何か? Trillionは1兆、年間1兆個のセンサとは、現在のセンサ需要の100倍に匹敵し、世界人口70億人が毎年一人150個ずつのセンサを使う計算になる。それらのセンサは、バイオ、ヘルスケア、ナノ、ネットワーク、ロボット、人工知能、農業、都市、交通、エネルギーなど様々な分野の機器やインフラに組み込まれ、実世界の観測から得られたビッグデータに基づき、新しい技術やサービスを創出し、雇用を生み出し、指数関数的に豊かさを積み上げていくのだという。中でも、モバイル、ユビキタス、ウェアラブル、デジタルヘルス(データヘルス)、M2M(Machine to Machine)、IoT(Internet of Things)、 O2O(Online to Offline)などのスマート・システムが、クラウド技術やビッグデータ解析などとコラボして、新たな技術革新、産業革新を牽引していくと考えられる。

MEMS・マイクロマシン・組込システムの活躍の場

  • ・ビッグデータ・データマイニング・
    データセンター
  • ・スマートモニタリング、インフラ監視
  • ・宇宙開発・航空宇宙工学
  • ・ファクトリーオートメーション・
    工作機械・産業ロボット
  • ・IoT/M2M
  • ・コミュニケーションロボット
  • ・生体情報センサ・バイオセンシング
  • ・1分子計測・次世代シーケンサ
  • ・創薬・分子構造設計
  • ・資源探査・エネルギー開発
  • ・先進医療、医療情報スーパーハイウェイ、
    データ医療

MEMS・マイクロマシン・組込システムのグローバル市場規模推定

MEMS 市場は、スマートフォンやタブレット端末の消費に火が付いた2010年以降、動きに伴う角度・速度(角速度)・加速度などのいわゆる慣性センサに加え、地磁気センサのような位置や方位に関するセンサなどの需要が爆発的に伸びている。また、自動車のタイヤ空気圧監視システムなどの圧力センサも大きく伸びている。つまり、モバイル機器と自動車がMEMS市場の拡大に大きく寄与しているといえる。フランスの市場調査会社 Yole Développement の2015年3月発表によると、市場トップ企業としてRobert Bosch を挙げており、2014年のMEMS関連のグローバル売上高は前年比20%増の12億米ドル(≒1440億円)としている。2位はTexasInstrumentsの8億米ドル、3位はSTMicrolectronicsの6.3億米ドル、 Hewlett-Packard(5.6億米ドル)、 Knowles (4.6億米ドル)と続くが、Boschが2位以下を大きく引き離している。日本企業としては、Canonが7位(3.6億米ドル)に入っている。Yole 社によると、MEMS業界は、2012-2017年まで需要が数量ベースで年間平均20%のペースで増加する一方、コンシューマ機器向けでの価格急落(コモディティ化)により、収益の伸びは平均13%にとどまる。MEMS市場は2017年までに210億米ドルに達し、2011年の102億米ドルから倍増すると予想している。これまでMEMS市場の中で圧倒的地位を占めていたインクジェット・ヘッドやDLP(Digital Light Processing)ミラーの巨大市場は成熟し成長が鈍化する一方、慣性センサの売り上げが一気に拡大した。2017年には、慣性センサと磁力センサは、MEMS市場全体の25%程度(52億米ドル)を占めるとされる。マイクロ流体チップは、年平均23%の成長を見込み、2017年には売上高が48億米ドルに達し、MEMS市場全体の20%程度を占めるとしている。Yole社の上記予想に加え、近年のIoT/M2M市場やO2O市場の期待感、デジタルヘルス市場やスマートモビリティ市場の活況を鑑みると、今後10年間程度は成長のペースアップが期待される。ただし、汎用センサのコモディティ化は避けられず、疑似SoC(System-on-a-Chip)等の組込み技術を駆使した高機能デバイスのスマートシステムや都市・交通インフラへの搭載が牽引力を担っていくと考えられる。これらの考察を踏まえ、2025年時点でのグローバル市場規模を、450億米ドル(≒5.4兆円)と予想する。

MEMS・マイクロマシン・組込システムとの連携により発展していくと予想される事業分野

ビッグデータ・データマイニング・
データセンター

ウェアラブルセンサ・バイオセンサ

ウェアラブル・ユビキタス

スマートスポーツ・スマートウェア

ロボット

人工知能

IoT・M2M

ファクトリーオートメーション・
工作機械・産業ロボット

スマートモニタリング・インフラ監視

スマートモビリティ・
パーソナルモビリティ

スマートシティ

スマートエネルギー

スマートアグリ・植物工場

深海底探査・宇宙開発・資源探査

3D・VR・AR

先進医療

生体イメージング

3Dプリンタ医学応用

この市場で活躍する可能性が高い職種です。

この市場で
活躍する職種

機械系エンジニア

サーバエンジニア

電気分野研究開発

電気系エンジニア

IT・通信分野研究開発

インフラエンジニア

化学分野研究開発

機械分野研究開発

ネットワークエンジニア

IT・通信系プロジェクトマネージャー

システムエンジニア

データマイニング/データサイエンティスト

総括

人体を構成する細胞の総数は、約37兆個といわれる( Bianconi E et al., Ann Hum Biol. 2013 Nov-Dec;40(6):463-471 )。それをも超える累計45兆個のセンサが、地球規模のビッグデータを生み出し、それが人類の抱える様々な問題を解決に導く“Abundant”な世界(理想郷)、それが”Trillion Sensors Universe”のコンセプトである。米国Cisco社は、今後のビッグデータの主要な生成源がM2Mなどのセンサに委ねられると予想。さらに、米国Hewlett-Packard社は、センサによる情報爆発とそれにより構築される情報のエコシステムを “Central Nervous System for the Earth(CeNSE)”と命名した。センサが集める膨大な情報資源への期待の大きさが窺える。IoE(Internet of Everything)時代の情報爆発を担う素子は、センサに限らず、3Dスキャナのプローブや3Dプリンタヘッド、BioMEMSと総称されるDNAチップや糖鎖チップなどのバイオチップ、錠剤に添加して体内に摂取可能なMEMSセンサ(Proteus社のIngestible Sensor、2012年にFDAがde novo 510(k)承認)、GPS(測位衛星)やiBeacon(建物内や地下などGPS電波の届かない場所で位置情報を発信する発信機)などの位置情報、BAN(Body Area Network)や人体通信などの通信技術、音声認識・音声合成技術、タッチパネル、VR・AR・MRなどの仮想現実技術等々が垣根なく複合的に作用する。得られた情報は医療データ、環境モニタリング、道路交通情報解析、マーケティングや商品企画、広告宣伝、ゲームなど様々な応用が考えられる。

MEMSには、今後、より複雑なプロセスや高機能、異種機能素子との結合などが求められると考えられる。NEDO(独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構)は、高集積・複合MEMS 製造技術開発プロジェクト(2006-2008年)において、センサや通信など異種のMEMS やLSI の一体化とMEMS へのナノ機能付与による第2 世代MEMS の実現を目指し、大学・研究機関・企業のナレッジの集約を行った。MEMS /ナノ機能の複合のテーマとしては、疾患関連物質を検出するためのバイオMEMS デバイスの開発(産総研)やカーボンナノチューブを適用した高耐電力RF-MEMS スイッチ(三菱電機)などがあり、 MEMS /半導体の一体形成のテーマとしては、セルフアセンブリーと乗り越え配線によるMEMS - 半導体の低温高密度一体化実装技術(東北大学)、レーザー援用インクジェットによる高速微細配線描画技術(産総研)、高機能CMOS/MEMS 積層デバイスを実現するハイブリッド・スーパーコネクト技術(産総研)、異種デバイス集積を実現するハイパーシステムインテグレーション技術(東芝)、 MEMS をLSI の配線上に集積化した1chip 超小型圧力センサ(日立製作所)など、MEMS / MEMS の高集積結合のテーマとしては、異種機能を積層集積したMEMS デバイスの開発~超小型SPR(Surface Plasmon Resonance) センサ~(オリンパス)、機能集積化MEMSデバイスを実現するビルドアップ型ウエハレベルパッケージング技術(パナソニック電工)など、知識データベース整備のテーマとしては、ファインMEMS知識データベースの整備(マイクロマシンセンター)と、ファインMEMS システム化設計プラットフォーム(マイクロマシンセンター)が取りまとめられた。
その中の一つ、東芝のハイパーシステムインテグレーション技術は、モバイル機器に搭載する電子部品の小型化のために、MEMS-LSI 異種デバイス集積をワンチップで実現した。MEMS-LSI 異種デバイス集積をSOC (System On Chip) で実現する場合、プロセス互換と長期間の製品開発がシステム複合化の課題となっていた。一方、SIP (System in Package) で実現する場合,インターポーザ基板の配線の微細化限界が高集積化の課題となっていた。
そこで、東芝は、個別に製造された異種デバイスの検査良品チップを有機樹脂によりウエハとして再構築した後,異種デバイス間を横方向配線(インターチップ配線)で接続することでワンチップ化する擬似SOC を開発、SIP では達成できない高集積化とSOC では達成できない短期間の複合化を同時に実現することができたという。東芝は、2014年1月に東京ビッグサイトで開催された「nano tech 2014」に、疑似SoC技術によってモジュール面積を従来比1/4に縮小した脈波や心電用の生体センサを出展した。10個のICと60個の電子部品をモジュール化し、面積を従来比1/4の約8mm×約7mmに縮小、モジュールの厚さは約1mmだという。このように高集積化・異種結合など新しい技術により、今までにない高機能・高付加価値のMEMSが今後も増えてくると思われる。
中でも、モバイル、ユビキタス、ウェアラブル、デジタルヘルス(データヘルス)、M2M(Machine to Machine)、IoT(Internet of Things)、 O2O(Online to Offline)などのスマート・システムが、クラウド技術やビッグデータ解析などとコラボして、新たな技術革新、産業革新を牽引していくと考えられる。そして、やがて“Abundance”が実現する日が来ることを希いたい。

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