(注)この記事は2013年9月6日にastamuse「技術コラム」に掲載された内容を再構成したものです。
駅ホームからの転落事故を防ぐため、鉄道各社はプラットホームドア(ホーム柵)の設置を行ってきた。 しかし、現在設置されているホームドアは開口部が固定されているため、車両によってドアの位置や数が異なると、柵の開閉位置に車両ドアが合致しないという問題があり、ホームドアの設置があまり進んでいない状況にある。
そこで、東京大学生産技術研究所と神戸製鋼所は、扉と戸袋が個別に移動することで、あらゆる車両のドア位置に対応できる「どこでも柵」の共同開発を行ってきた。 2013年8月31日より、商業化に向け、西武新宿線 新所沢駅にて約半年間のフィールド試験が始まった。「どこでも柵」は、ホームに沿って移動可能な長さ1.4m程度の可動戸袋の両側に、長さ1.1m程度の扉体が1枚以上ずつ出入りする「ユニット」を複数個連設したもので、列車入構時に列車の乗降口に合わせて戸袋や扉体が移動し、ユニット間に開口部が形成される仕組みだ。
ユニットの制御方法はこうだ。列車側にドア位置・車両数・列車長などの列車情報を格納したICタグを設けておき、列車がホーム入構時にホーム側に設置した受信部で列車情報を受信する。得られた情報に基づいて、戸袋や扉体がホーム床面に埋設されたガイドレール上をモーター駆動により移動する。あるいは、ICタグには列車IDのみを記憶しておき、制御装置側に格納した列車IDと列車情報を対応させて、戸袋及び扉体の移動制御を行うこともできる。
また、「どこでも柵」使用にあたっては、ホームに設置した複数のカメラを用いて、列車が実際に停車した位置の、標準停止位置からのズレを検出する。これによって、基本的にはすべての駅でホームドア等の利用が可能になる。 さらに、列車がどこに止まっても対応できるため、定位置停止装置を導入する必要がなくなり、投資費用の大幅削減が可能となる。これによりホームドアの設置が進み、ホームの安全が担保されることが期待される。