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燃料電池と熱電変換材料を一体化した「熱電シナジー排ガス発電システム」

text by : 編集部
photo   : shuttestock.com

(※)この記事は2013年9月17日にastamuse「技術コラム」に掲載された内容を再構成したものです。

 

温室効果ガス削減など環境意識の高まりの中、車などのエンジンの燃料消費の改善が強く望まれている。 しかし、自動車やバイクを始め、さまざまな産業で使われているエンジンは、燃料エネルギーの3分の1程度しか使われておらず、残りは排ガスと廃熱として捨てられているのが現状だ。 そこで、エンジンの排熱エネルギーを電気エネルギーに変換する熱電変換技術などが開発されているが、発電効率が低く、実用化には至っていない。

株式会社アツミテック(静岡県浜松市)は、独立行政法人産業技術総合研究所の研究成果をもとに、排ガスと廃熱を同時に利用して電気エネルギーに変換する発電装置の開発に成功した。それが燃料電池と熱電変換材料を組み合わせた「熱電シナジー排ガス発電システム」である。

新たに開発したSOFC(固体酸化物形燃料電池)で排ガス中の未燃焼成分である水素などから電気を取り出し、さらに排ガスやSOFCの発熱を利用して熱電変換素子から電気を取り出すというものだ。余った電力はバッテリーに蓄蔵される。

SOFCの電極(空気極)には、燃料電池にも熱電素子にも使える混合伝導体である酸化物(BSCF)を使用、SOFCの電極と熱電変換素子を一体化し、複合体(シナジーセル)を試作した。さらに複数のシナジーセルを用いて排ガス発電システムを構築し、オートバイに搭載。実際の排ガスで発電性能を測定した結果、排ガス温度500-600℃において、400ccエンジンがの排ガスエネルギーの2.5%を回収できたことが確認された。これは400W級の発電ユニットの性能に相当する。

今回開発した発電システムは、熱と希薄な未利用燃料が存在すれば発電が可能となるため、発電効率などを上げることにより、工場の排ガスを利用した発電装置など広範な応用展開が見込める。今後は低コスト化を図り、2015年を目途に商品化をめざすという。

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