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「燃料電池」市場とは?

text by : 編集部
photo   : shutterstock.com

astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「燃料電池」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。

 

「燃料電池」市場について

燃料電池の歴史は古く、その原理は1801年に英国のデービー卿(Sir Humphry Davy)により発見され、1839年に英国のグローブ卿(Sir William Robert Grove)が、現在の燃料電池の原型を考案したとされる。これは、水素と酸素との反応により水を生成させ(いわゆる、水の電気分解の逆反応)、その反応エネルギーに相当するエネルギーを起電力として取り出すものである。しかしながら、水素を燃料とする燃料電池は、その出力の低さなどの問題からなかなか実用化の見通しが立たなかった。

20世紀に入ると徐々に性能も向上し、NASA(アメリカ航空宇宙局)がジェミニ計画やアポロ計画において宇宙船用の電源ならびに飲料水源として燃料電池を採用したことで実用化が進展した。このように宇宙開発において大きな成果を上げた燃料電池は、欧州を中心に自動車用としても検討されるようになる。1990年代になると、環境保護意識の高まりや排ガス規制の強化などを追い風にして、自動車用燃料電池、特に現在の主流でもある固体高分子形燃料電池の開発が加速していった。

日本では、旧通商産業省の省エネルギー技術研究開発計画である「ムーンライト計画」(1978年度~1993年度)において、燃料電池の開発が開始され、大学、公的研究機関をはじめ、自動車メーカー、電機メーカーやエネルギー関連企業、および部材のサプライヤーである化学メーカー等を中心に研究開発が続けられている。その成果として、2009年に家庭用燃料電池が上市され、また、2015年には世界初の市販燃料電池自動車「MIRAI」がトヨタ自動車から発売されたことは記憶に新しい。

 

トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」
トヨタ自動車の燃料電池車「MIRAI」

 

「燃料電池」市場のグローバル市場規模

家庭用コージェネレーションシステムにおいて民生用としての燃料電池が2009年に実用化されて以来、家庭用、産業用、およびポータブル/バックアップ用燃料電池が主に市場を牽引してきた。株式会社富士経済によると、2014年における家庭用、産業用、および燃料電池車を含めた燃料電池システムの世界市場規模見込は12億ドル(1363億円)であった。

2015年に燃料電池車の市販が開始されたこと、およびトヨタ自動車が特許の実施権を無償開放したことも相俟って、今後、参入企業の増加が期待され、2030年には540億ドル(6兆4,923億円)規模にまで成長すると予想されている。

 

近日公開予定の「燃料電池」市場コンテンツでは、この市場の最新技術、関連して発展すると予想される事業分野、この市場で活躍する職種などを紹介する。

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