インターネットを通して、誰でも気軽に寄付ができるプラットフォーム「Yahoo!ネット募金」。今年でサービス開始から15周年を迎え、これまでの寄付金の総額は約49億5千万円に達しています(2018年9月末時点)。寄付にあまり馴染みがなかった日本において、“ネット上の募金箱”としての手軽さで寄付・募金を一般的に広めたパイオニアと言えるでしょう。ヤフーがこの事業を行う意義について、Yahoo!ネット募金のサービス責任者の井手章博さんに話をうかがいました。
「何か社会貢献したい」という人の受け皿になる
大きな災害が発生してまもなく、Yahoo! JAPANのトップページに緊急災害支援募金の案内が表示されているのを見たことがある人は多いのではないでしょうか。そこからYahoo!ネット募金のページに飛ぶと、クレジットカード利用なら100円から、Tポイント利用なら1ポイントから簡単に寄付をすることができます。
緊急災害支援以外にも、被災地域の復興支援、貧困に苦しむ子どもたちへの支援、殺処分されるペットの保護支援など、さまざまな社会課題を解決するためのプロジェクトが常時450〜500件ほど掲載されています。
寄付型クラウドファンディングの多くが募集期間や上限金額を定めているのに対して、Yahoo!ネット募金では災害支援募金など一部のプロジェクトをのぞいて期間や上限金額を定めておらず、中長期にわたって寄付を募ることができます。
今でこそ多くの人に知られるサービスとなり、大きな災害が起きて寄付をしたいと思ったときにまず「Yahoo!ネット募金」のページをチェックするという人も増えました。しかし、「Yahoo!ネット募金」が立ち上がった2004年当時は、インターネットで寄付をするという行為はまだ一般的ではありませんでした。
「Yahoo!ネット募金はYahoo! JAPANの月間ページビューが100億を超えた際に、記念事業として『利益につながらなくてもいいから、何か新しいこと、社会に貢献できることをやろう』という話が持ち上がりサービスが生まれました。当時はインターネットで寄付を募るという取り組みは他でもやっているところはなく、まったく新しいチャレンジでした」
そんな中、より多くの人にサービスが知られるきっかけとなったのが、2011年3月11日に発生した東日本大震災ではないでしょうか。最終的にYahoo!ネット募金で集まった寄付金額は13億7100万円、寄付人数は93万人を上回り、日本赤十字社・中央共同募金会・各自治体などを通じて、義援金として被災者のみなさまに配分されました。その後も、台湾地震、熊本地震、直近では平成30年7月豪雨や北海道胆振東部地震といった大きな災害が発生するたびにYahoo!ネット募金が活用され、たくさんの寄付金が集まりました。
「各地で大きな災害が発生する中で『被災した方のために、何か自分にできることをしたい』という想いを持つ方が増えて、Yahoo!ネット募金がその受け皿のひとつになっているのではないでしょうか。
寄付を募るサイトはいくつかありますが、Yahoo!ネット募金の強みはTポイントで手軽に寄付ができること、Yahoo! JAPANのトップページなどから募金ページへと誘導していることです。災害が発生すると多くの方が情報を得るためにYahoo! JAPANにアクセスします。その場所に募金の案内を掲載することで、より多くの方に知っていただくことができますし、『何かしたい』という想いを持つ方に対して選択肢を提供することができていると思います」
目立ちにくい社会課題に光を当てる
大きな災害が発生したタイミングで世の中に善意の輪が広がり、それとともにYahoo!ネット募金のユーザー数、寄付金の額は一時的に増加するのですが、一方で継続的にサービスを利用していただけるユーザーがなかなか増えないという課題もありました。
「世の中にある課題に光を当て、少しでも多くの人に関心を持ってもらうきっかけを作ることも私たちの役割だと考えています。Yahoo!ネット募金には、日常の中にある社会課題を解決するためのプロジェクトがたくさんあります。災害支援募金をきっかけにYahoo!ネット募金を知っていただいた方に、ほかのプロジェクトについても知ってもらうためにどうすればいいか。そこで、3年ほど前から始めたのがメルマガ配信です。
寄付の際にメルマガ登録していただいた方に、おすすめのプロジェクトをメールで定期的にお知らせしています。この取り組みをはじめてから、定期的に寄付をしてくださるユーザーさまが増えました。1回のメール配信で、多いときは100〜1000万円の寄付が集まることもあります」
日常使いするサービスではないからこそ、ユーザーとの接点をいかに生み出すかが大切。Yahoo!ネット募金ではほかにもさまざな取り組みを行っています。
「日常の中で寄付を意識する機会は多くありません。そのため、Yahoo!ネット募金では世の中のトレンドに合わせた情報発信を心がけています。たとえば、5/5のこどもの日には子どもの貧困や学習への支援、6/5の環境の日には自然環境保護への支援、9/20の動物愛護週間には動物・ペットへの支援といった感じで、年間のイベントに合わせてプロジェクトを選定し、特集ページの作成やメルマガでの配信を行っています」
買い物のついでに寄付できる仕組みを
より多くの方からの支援を集めるためには、知ってもらう機会を増やすことに加えて、手軽に寄付ができる仕組みを作ることも必要です。その1つが、Yahoo!ショッピングをはじめとした日常の買い物で貯まるTポイントの活用です。
「1ポイント(1円相当)から寄付ができるという手軽さからユーザー数が爆発的に拡大し、寄付の金額も大幅に増えました。クレジットカード利用とTポイント利用では寄付の金額では同じくらいですが、寄付の人数では1:9くらいで圧倒的にTポイントが多いんです。Yahoo!ショッピングで買い物をして、期間固定ポイントが少しあまったときに、そのまま何も買わずに失効してしまうくらいなら寄付しようと思っていただける方が増えたのではないかと思っています」
1人あたり1円、10円といった金額でも、寄付をする人がたくさん集まれば社会を動かす大きな金額になります。より多くの人が気軽に寄付できる仕組みを整え、寄付をすることが身近な社会を作ることがYahoo!ネット募金の役目。
「Yahoo!ネット募金が目指すのは、コンビニのレジ横にある募金箱のように、買い物をしたついでに小銭を寄付できるくらいの手軽さです。寄付してよかったなと思う人が増えていくことで、少しずつ世の中が良くなっていくはず。たくさんの善意が集まる場所を作るために、我々にできることはまだまだあると思っています」