astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を分類した「2025年の成長市場」。近日公開予定の「超電導送電」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。
2013年7月、世界初の超電導ケーブルによる電車の走行試験が鉄道総合技術研究所で公開された。
超電導現象は、金属を非常に低い温度にしたときに、電気抵抗がゼロになる現象であり、この超電導現象を利用して抵抗ゼロの送電ケーブルを用い、効率のよい電力送電を行うのが超電導送電である。
液体窒素などの冷媒を内部に流して超電導状態を維持することで、一般的な銅線を使った場合などに比べて、送電時の電力損失を劇的に減らせる。現在使用されている銅ケーブルの電力ロスは5%程度と言われており、電気抵抗がゼロになれば、送電時の電圧降下や発熱が劇的に抑えられ、送電効率が飛躍的に高まる。
超電導になる温度は、金属によって異なり、液体窒素の沸点(-196℃)以上で超電導現象を起こすものを高温超電導物質という。
1986年に高温超電導体が開発されて以来、世界で研究開発が進められてきた超電導による送電が、日本で実用化に向けて大きく踏み出した。
一方、北海道石狩市では、「石狩超電導直流送電プロジェクト」として、中部大学、千代田化工建設、住友電気工業、さくらインターネットなどがコンソーシアムを組み、2013年より経済産業省委託による実証試験をスタート。約500mと2km超の2つの超電導ケーブルを石狩湾新港地域に設置。
約500mのケーブルは再生可能エネルギー(太陽光)を超電導直流送電でデータセンタに送電を行い、2km超では商用電源(交流)を直流に変換し、2Km以上の超電導管を敷設し、データセンタに送電を行う。さらに、将来的な構想としては、石狩において超電導技術を活用したスマートコミュニティの実現や、国産技術として海外での長距離送電プロジェクトへの活用などをも目論んでいる。
超電導ケーブルは高電圧小電流の送電に向いており、一次変電所の出力側(66kV)に接続することを想定して開発が進んでいる。
現在、開発されている超電導ケーブルはビスマス(Bi)という金属を含んだ銅酸化物で出来ており、液体窒素で-196℃に冷却している。
現在実用化されているビスマス系超電導ケーブルの問題点は、銀との複合材料を使用しているため、材料コストが高く、液体窒素による冷却設備コストがかかり、従来の銅ケーブルと比べて製造コストがかかることである。2020年に同ケーブルと同等コストを目指して開発が進んでいる。
また、ビスマス系は、外部磁場に弱いため、新材料としてイットリウム系材料を使った超電導ケーブルが開発されており、現在、各社でケーブルの大容量化、コンパクト化、長期信頼性向上、低損失化に向けた研究開発と実証実験が実施されている。但し、イットリウム系材料は、ビスマス系材料の製造工程では安価な圧延工程が使えるのに対し、半導体製造プロセスに似た複雑な製造プロセスが必要であり、製造コストの低減が課題となっている。
ビッグデータ、IoTという時代の波の中、超伝導送電技術は環境にも低負荷なインフラ技術として、世界展開できる期待が持たれる。
近日公開予定の「超電導送電」市場コンテンツでは、この市場のグローバル市場規模、用途展開、活躍できる職種などを紹介する。