astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。その13番目にあたる「地下大空間・地下構造物」の市場ページが公開された。
周口店洞窟の北京原人、ラスコーやアルタミラの壁画洞窟に象徴されるように、人類は太古から地下空間を生活の場として利用してきた。文明が発達するにつれ、古代ローマの上下水道やトルコのカッパドキア遺跡の地下都市のように地下構造物を都市インフラとして利用するようになった。
さらに近現代では、地下空間は電気・水道・ガス等のライフライン設備や都市交通網、商業施設としてさかんに開発が行われてきた。ニュートリノ観測を行うスーパーカミオカンデ(東京大学宇宙線研究所付属神岡宇宙素粒子研究施設)も地下1000mに作られている。また、「地下のパルテノン神殿」と呼ばれる首都圏外郭放水路はメディアでも取り上げられ、多くの人々の関心を呼んだ。そして今、防災や環境保全、エネルギー活用の観点から、大深度地下に注目が集まっている。
大深度地下とは、2001年に施行された「大深度地下の公共的使用に関する特別措置法」(大深度法)によって、地下室建設などが行われない地上から40m以深の地下、または、建築物の基礎工事が行われる支持地盤上面から10m以深の地下を指す。現在までに、神戸市大容量送水管整備と東京外かく環状道路が認可を受け、リニア中央新幹線が事業間調整に入っている。高速道路の地下化や地下発電所、エネルギー備蓄基地など、未開拓の地下空間を有効活用することで、地上の景観や自然環境・住環境を確保しつつ、経済活動を進めることが可能となるため、大きな期待が寄せられている。
環境・景観保全という観点での参考事例としては、米国ボストンのBigDigのように、高速道路を地下に埋めることで地上緑化と交通渋滞緩和を両立させているケースが挙げられる。また、フィンランドの「オンカロ」(Onkalo=フィンランド語で「深い穴」)のように、高レベル放射性廃棄物の最終処分場としてまもなく稼働を始める地下施設もある。
この市場で注目される技術としては、仮想現実・拡張現実技術やプロジェクションマッピングなどの空間演出、事業として可能性がある地下植物工場や藻類工場、環境保全の観点から都市緑化技術などがある。
現時点での地下大空間に関わる総事業費および今後の地下プロジェクトの増加を考慮し、astavisionでは「地下大空間・地下構造物」市場の2035年時点でのグローバル市場規模を年間2670億ドル≒32兆円と推定している。
astavision「地下大空間・地下構造物」市場ページでは、「地下大空間・地下構造物」市場に参入している企業、この市場で活躍できる職種、「地下大空間・地下構造物市場との連携により発展していくと予想される事業分野などを紹介している。