astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「生体情報デバイス・バイオセンサ」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。
「生体情報デバイス・バイオセンサ」について
「音楽を学習した人工知能は、人間を感動させることができるか?」をテーマに、クラブイベント「2045」が、2015年2月始動した。アーティストでプログラマの真鍋大度とプログラマでDJの徳井直生の二人がオーガナイズするイベントで、コンピューター・テクノロジーが完全に人間を超える「シンギュラリティ」が起こるとされる2045年をモチーフに、音楽とテクノロジーの未来を実践的に考える試みだ。
二人は人工知能を使って選曲するアルゴリズムDJと専用iPhone用アプリを開発。iBeaconや加速度センサなど複数のセンサでオーディエンスの情報を収集し、それらの情報を人工知能に送り、フロアに流す楽曲を最適化する。オーディエンスのiTunesプレイリストデータや、会場内での位置情報、加速度センサによる盛り上がり度合いなどのほか、オーディエンスのDJに対して送る「いいね!」や「ブーイング」などの反応などを収集し、それらを人工知能で解析。DJが自らの感性でその場の空気を読み取り選曲するプロセスをミミック(擬態)したものだ。これは、アーティスト自身がIoT/IoEのノード(結節点)となる未来の予兆かもしれない。
小型軽量のデバイスを皮膚表面に貼っておくだけで、体温や心拍、運動状態など24時間の健康状態をモニタリングし、異常が検知されればアラートを発信し、遠方にいる家族や医師にもメールで異常を知らせることができる。計測データをモバイル端末で見ることや、インターネットを介してPCにデータを送ること、クラウドサービスにデータを蓄積して評価分析することもできる。これがウェアラブル生体情報センサの典型的な利用例であり、セルフケアや患者・高齢者の見守りに威力を発揮する。
近年、鳥の羽毛の様に軽くて柔らかなフレキシブル回路を利用した薄膜トランジスタセンサ、皮膚に直接貼りつけられる電子タトゥ型センサなど、より自然に身体になじむ生体センシング技術の登場が相次いでいる。さらに、バイオMEMSなどのナノテクとVR(仮想現実)技術の融合により、失われた視覚を一部取り戻すインプラント(体内埋込み)型の人工網膜センサチップがFDA(米国食品医薬局)で認可されるなど、生体情報センシングの可能性はますます広がりつつある。
日立ハイテクノロジーズは2015年2月、人間行動データを取得・解析し、組織生産性に強く相関する「組織活性度」を計測できる新ウェアラブルセンサを開発したと発表。先に日立製作所が開発した、集団の幸福感を身体運動の特徴パターンから「ハピネス度」として定量化する技術を活用したものである。組織生産性の向上に相関のある行動の抽出や業務改善、生産性向上などの支援を目的とする。
生体情報は、健康や医療の範疇を超えて、芸術文化や企業経営の世界までをも活躍の舞台としつつある。
「生体情報デバイス・バイオセンサ」のグローバル市場規模
米国の市場調査会社であるIHSによると、2012年のMEMS市場全体の売上高は84億7000万米ドルだった。また、Global Industry Analysts(GIA)の2012年の市場予測によると、医療ヘルスケア向けバイオセンサの市場は2017年には約100億米ドルになる見通しとされる。
astavisionでは、MEMS・マイクロマシン・組込システムのグローバル市場規模を2025年段階で450億米ドルと推定した。現状ではその7-8割を車載用途が占めるが、今後、ヘルスケア需要が増大し、全体の3割強を占めると推定する。このことから、生体情報デバイス・バイオセンサの2025年段階でのグローバル市場規模は、年間150億米ドル(≒1.8兆円)と予想する。
近日公開予定の「生体情報デバイス・バイオセンサ」市場コンテンツでは、この市場の最新技術や関連して発展する市場、活躍できる職種などを紹介する。