astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「音響場力学・超音波浮揚」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。
「音響場力学・超音波浮揚」市場について
あたかも磁石の反発力でモノが浮かぶように、超音波の圧力で、モノを浮揚したり搬送したりする技術が開発されている。
Digital Content Expo 2014では、東京大学大学院在学中(当時)のメディアアーティスト 落合陽一氏(筑波大学大学院助教)らによる「超音波位相配列による三次元空中音響操作」(Three-dimensional Mid-air Acoustic Manipulation by Ultrasonic Phased Arrays)のデモが行われたが、小さなビーズの列が空中に浮き上がり、まるで団体行動のように、完璧なフォーメーションを保ったまま30cm程度の区間で上下左右に瞬間移動できるというその魔法のような現象(PixieDust)に驚嘆させられる。
超音波によってモノを浮かせて搬送するというアイデアは1980年代の特許にも散見されるが、多くは超音波の音圧によって0.1mm程度浮かせるだけであり、半導体ウェア等の加工工程において、ロボットハンドがつかみ上げるには不十分だった。現在では、超音波ベアリングによる非接触搬送技術などが半導体・太陽電池・フラットパネルディスプレイなどの加工工程で実用化されているが、実際には超音波の音圧でモノを浮上させているわけではなく、超音波振動表面上で薄いガス膜が周期的な圧縮と圧縮解除を繰り返すことで生じるガス圧力の上昇を浮上力に変えたもので、これは流体力学的な効果である。
落合氏らのイノベーションのポイントは、超音波音源を4面に対面して配置し、各音源の超音波出力を制御することで空間内に制御可能な音響力場(Computational Acoustic-Potential Field)を形成したことにある。
現状では小麦粉やビーズのような微細で軽量なモノの浮上制御に限られるが、スピーカーアレイの配置や出力制御により、MEMSなどの微細加工プロセスや制御機構に応用可能と思われる。
また、紛体を利用した変幻自在の三次元空間ディスプレイや新発想のアコースティックサイネージなど、音響場をビジュアルなコミュニケーションに応用することも可能になるだろう。さらに、IoEやO2O(Online to Offline)の出口として捉えるのも面白いかもしれない。分子設計や創薬シミュレーション、生体モニタリングなど、意外な分野への応用も考えられる。
詳細は不明だが、英国のマクラーレン社は、軍事技術の転用として、超音波振動を利用したワイパー不要のフロントガラス撥水技術(超音波ワイパー)を民生車用に開発中といわれており、超音波力学の産業化はこれからいよいよという感がある。Trillion Sensor Universe(毎年一兆個のセンサが使われる世界)が目前に迫る今、未知の可能性を秘めた音響場力学の新たな展開を期待したい。
近日公開予定の「音響場力学・超音波浮揚」市場コンテンツでは、この市場のグローバル市場規模や関連して発展する市場、活躍できる職種などを紹介する。