施設園芸とは、野菜や果物、花卉などを、ガラス温室やビニールハウスなどの屋外施設において、 生育環境を制御しながら栽培する園芸をいう。施設内には温調設備や自動給排水設備などのコンピュータ制御システムが導入されることも多い。一方、植物工場とは、施設内の温度・湿度・光・炭酸ガス・風向・風量・灌水・養液などの環境条件を自動制御装置で最適な状態に保ち、作物の播種・移植・収穫・出荷調整まで、周年計画的に一貫して行う生産システムをいう。植物工場は、施設園芸がより高度化・大型化された施設ということもできる。
目次
はじめに
アスタミューゼ社のご紹介
弊社は世界の無形資産・イノベーションを可視化し 社会課題解決と未来創造を実現する、データ・アルゴリズム企業であり、
イノベーション投資の流入に加え、イノベーターの流れを機械的に分析し、データに基づいた成⻑領域を定義している。
本レポートのご紹介
アスタミューゼでは今芽吹きつつある黎明期の技術シーズや今後 10 年から 20 年 のスパンで大きく開花すると期待される初動段階の技術市場に重点を置きつつ、生活文化の中に根 付く技術にも光を当て、総じて未来を創る技術分類の網羅に取り組んできた。
このために、国内第一線の知を結集して全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、展示会等の情報並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、136 の有望成長市場と、40 の 未来技術を選んだ。主にビジネス視点で策定された有望成長 136 市場を対象にしており、本レポートは、『植物工場・施設園芸』の未来推定に特化した内容となっている。
事業会社に向けては、イノベーションに関わる経営課題を中心に戦略構築支援/実行支援を実施しており、
・自社の既存事業の優位性がいつまで続くかわからない
・既存事業の成長が踊り場にきているので、使っている技術 を別で活かせる可能性を探りたい
・既に着手している研究開発を続けるべきどうか、もしくは 自社開発ではない方法があるかを含めて検討したい
といった企業のよくあるお悩みを解決している。
植物工場・施設園芸の現状
近年、植物工場・施設園芸への新規参入者が増加している。室内で環境を制御する生産方法は、量・質ともに安定的な生産、近年の異常気象や環境都市開発への対応、医療用途での遺伝子組み換え作物生産の観点から、利点が大きい。通信ならびに人工知能、ロボティクス技術の発達により、そのメリットが低コストかつ高品質に享受できるようになったことが新規参入増加の背景として挙げられる。
また、2009 年に農林水産省と経済産業省が 150 億円の補助金を投じ、これが継続されていること、 2009 年の農地法改正により、企業なども最長 50 年の農地借用が可能になったことも法人化を後押ししていると考えられる。植物工場・施設園芸は世界中で投資が集まっている分野である。
今後の見通し・将来性や展望
植物工場・施設園芸の課題は収益性であり、低コスト化および高付加価値化の両方の戦略がとられている。収益性が低い原因の一つが、露地栽培より高くなる傾向にある、植物工場・施設園芸の生産コストである。太陽光型では人件費、人工光型では水道光熱費が主たるコストとして挙げられる。この課題に対しては、IoT を活用した空調システムや安価な建設資材、データをもとにした栽培ノウハウ活用など、初期投資と維持経費のそれぞれをおさえる技術開発がなされている。一方、植物工場・ 施設園芸の特徴を生かして付加価値向上により収益性を向上するケースもある。無農薬・高栄養・おいしさといった食品としての価値向上のみならず、例えば低カリウムレタスといったニッチな野菜や、甘草など漢方薬原料の薬用植物、医薬品などの高付加価値物質生産のための「遺伝子組み換え植物」など、特殊な植物の栽培も注目されている。
環境低負荷で、高品質の植物を安定的に任意の場所で生産できる植物工場・園芸施設の技術ニーズは高い。通信や機械制御などの周辺技術発展とともにコストの課題を克服し、市場は健全に成長すると見込まれる。
近未来 2030年の市場規模予測
アスタミューゼ社による『植物工場・施設園芸』現在の世界市場規模推定と近未来の世界市場規模予測。
2022年には推定44億米ドルだったものが、2030年には276億米ドルになると予測している。
スタートアップ投資動向と投資額
植物工場・施設園芸の2010 年から 2019 年の 10 年間における世界のグラントの資金流入額は総額 $91M である。
本レポートでは、
・世界のスタートアップ設立社数と被投資額の累計/推移
・グラント採択数と総配分額ランキング
・世界のグラント配分額上位25テーマ
・日本のグラント配分額上位25テーマ
を提供している。
現在の主要企業
本レポートでは、植物工場・施設園芸分野において、現時点で保有する技術が総合的に優位な企業を各種特許指標から評価し、ランキング形式でリスト化して提供している。
主なプレイヤーとして、
国外では、
・Fluence Bioengineering, Inc.
・Green Plus Co. Ltd.
国内では、
・株式会社三菱ケミカルホールディングス
などが含まれ、そういった
上位企業の保有する特許の中で、特に競争優位性が高い特許の概要と、最高エッジ指数での定量的な評価を記載している。
最新の技術開発具体例
本レポートでは、植物工場・施設園芸における最新の技術開発事例を紹介している。
植物工場・施設園芸の未来予測・将来性
未来の構成要素
本レポートでは、植物工場・施設園芸に関連する・栽培室
・栽培方式
・栽培棚
・栽培床
・栽培容器
・空調
・照明
・発電(太陽光・水力・バイオマス・ 風力・廃熱・地熱)
などの技術要素と、
そういった様々な技術の進化、新しい可能性の発現、企業の把握すべき範囲を記載している。
未来のストーリー想定
本レポートでは、近未来に、一般的な青果物まで市場が拡大し、法人化に加え、個人や地域での生産が進む可能性もある植物工場・施設園芸について、
未来のトレンドとして想定し得るストーリーを記載している。