Interview

食物アレルギーの人たちが、安心して食を楽しむ未来のために大事なこと ――株式会社ウィルモア 石川麻由

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photo   : 編集者,株式会社ウィルモア

国内の4.5%、0~1歳児の約10%(※2016年厚生労働省調べ)が発症する「食物アレルギー」鶏卵や牛乳、小麦など身近な食材で発症し、命に関わることも起こり得る。
「自分や、自分の子供が食物アレルギーを発症した時、安心して食べられるもの」の情報をスマホアプリやウェブサイト上で2011年から提供しているウィルモア代表石川さんにお話を伺いました。


■食物アレルギーの正しい判断を「必要なので今日から」行うのは難しい。


――まずはウィルモアが展開する「食物アレルギー」のサービスについて教えてください。

食物アレルギー、食事制限中の方が食品を探して購入できる「クミタス」、商品のバーコードをスキャンするとアレルギー成分を含むかチェックできるスマホアプリ「アレルギーチェッカー」を、自社で構築している食品データベースを活用し展開しています。

創業時点から「予防」をテーマにしており、予防のための情報サービスを考えていましたが、例えば風邪ならウイルス感染、温度、湿度、疲労や睡眠不足、栄養不足など要因が複合的ですし、偏頭痛だと思っていたら脳梗塞だったといった自覚症状と疾患が違うケースもあります。

食物アレルギーにおいては、食物アレルゲンの摂取コントロールにより症状出現を抑えられ得る領域でもあり、また私自身も幼少時からアレルギーとの関わりがあったことから、2011年より食物アレルギーに特化し展開しています。

――食物アレルギーなら摂取→発症と、因果関係が明確だということですか?

食物アレルギーにおいては、食べてアレルゲンを摂取する以外に皮膚から吸収するなどの経路もあり、食物と抗原交差性のある花粉やラテックスに感作して食物アレルギーになるケース、また初発での症状出現も少なくなく、いつどうやって抗原に感作していたか、自覚は難しいものです。

感作や発症対策として皮膚を良い状態で維持することなど有用可能性が考えられている対応はありますが、食物アレルギーにならないようにする予防は難しくても、症状出現を抑えることは出来得るところでもあります。

食物アレルギーの方は表示を確認しながら食べられる食品か確認をしますが、病院でお子さんが食物アレルギーだと判明した、今日の晩御飯や明日からの食事に際し食品表示やアレルギーについての情報を身に付けるというのは大変ですよね。

食品選択時の負担を軽減したいと思い、「アレルギーチェッカー」の開発に至りました。

――原材料中には似たような名称や見慣れない内容のものもありますよね。

例えば、「乳化剤」は乳という字があるけど乳成分を含まず大豆由来のものがあったり、省略される原材料もあります。

食物アレルギーのお子さんのいらっしゃるママさんだとご存知の方も多いですが、卵殻焼成カルシウムと卵殻未焼成カルシウムがあって、未焼成だと卵が残留する可能性はあるけど焼成だと卵の残留はかなり少ない、といったことを診断された今日から判断していくのは大変なことでもあります。

――ちょっと聞いただけで難易度高いって思いました。

スーパーやコンビニエンスストアで食品を手に取り、スマートフォンでバーコード読み取れば、アレルゲンを原材料に使用している商品かどうかがわかります。それと同時に「この商品は原材料にアレルゲンを使用していますが、他にこの商品なら使用していませんよ」を知ることが出来るように工夫しています。

「使用しているかどうか」だけでなく、「使用していないもの」も一覧で様々な食品メーカーの食品がわかるようにしています。

スマートフォン、アプリを使い慣れていない方にもシンプルに使いやすく、を心がけている。

■「食べられないもの」と「食べられるもの」を知りたい


――食べられませんだけではなく希望を提供したい

食物アレルギーの方や食物アレルギー児のママさんとしては、「食べられるかどうか」そして「食べられるもの」が知りたいところでもあります。
わたしたちのサービスも「食べられないもの」だけではなく「食べられるものを知る・いま購入できるものを知る」もおこなえるようにしています。

現在食品の表示義務7品目+推奨20品目、この27品目に対応しつつデータベース自体は55品目まで分類しています。アレルギーチェッカーのユーザー層は、アレルギーのあるお子さんの親御さん、アレルギーのある成人の方が多く、「クミタス」では食に関する記事を読む方も多く、アレルギー以外の食事制限中の方にもご利用頂いています。

――クミタスはその場で購入できるようになっていますね。

はい、「購入へ」ボタンをクリックすると、商品の販売価格で並び替えもできるようになっています。手づくりされる方も多いので、レシピでは、材料の食品も購入できるお店につながるようにしています。

卵、乳、小麦不使用のクッキーも複数商品が検索結果に表示されるのを見て、「あーこんなに食べられるものがあるんだ!」と喜んでくれたアレルギーっ子もいますね。

――選択肢は多い方が良いのでしょうか?

安心して食べられても、美味しいと思っているわけではない場合や、いつも同じ商品では食が進まない場合もあります。食物アレルギーの方向け商品は、卵、乳、小麦、大豆といった主なアレルゲンを使用しないで作られるため、風味や食感に特徴のあるものもあり、また価格が高くなる面もあります。

アレルギーがあっても、これも食べられる、これは食べてみたら好みだった、これは食べたことがないから今度試してみようかな、など楽しみながらの食の機会になれば、となるべく多くの選択肢を提供できるようにしています。

食物アレルギーごとに対応商品の検索と購入、食材を活かしたレシピが見られる「クミタス」
訪問者の半数以上は、レシピや記事を参考に情報収集をする人たちだそうです。

■自己判断ではなく、医療機関でアレルギーかどうか診断を受けるのが望ましい


――サービス利用者の方に普段から呼びかけていることなどはありますか?

「自己判断」と「医学的な診断結果」は異なることがあります。

「食物アレルギー」そのものの認知が向上したことで、食後に不調があると食物アレルギーを想起する方も増えていますが、食物アレルギーかどうかにより対応が異なることもあります。症状程度にも依りますが、強い症状の場合、繰り返し症状が出現する場合や、以前よりも症状が強くなった場合は特に医療機関でアレルギーかどうか、診断されることをお勧めしています。

何か特定の食材でお腹を壊しやすい方で「自分は〇〇アレルギーだから」と自己判断される方もいらっしゃいますが、実は「アレルギーだと思っている人」と「実際にアレルギーと診断されたた人」の数には差があるんです。

――食後の不調は食物アレルギーが原因とは限らない

食べ物で湿疹が出たとしますよね。
その場合にアレルゲンが原因ではなく、実はヒスタミンなど食物に含まれる生理活性物質による反応の場合もあります。誰にでも起こり得ることで、体質やその日の体調でも反応が変わってくることもあります。

「山芋を食べて口のまわりが痒くなった」場合は、山芋に含まれるシュウ酸カルシウムの針状結晶による刺激を感じたことが原因となっている可能性があります。

食後に運動などの活動をして症状が出現する食物依存性運動誘発アナフィラキシーのケース、職業上接触、吸引機会のある食物に反応するケースなど、アレルギーも様々で、反応する量には個人差がありますし、アレルゲンによっては加熱程度次第で食べても症状が出現しないこともあります。

アレルギーかどうか診断されたうえで必要に応じた対応をできるのが望ましいでしょう。

――本来食べられるものまで制限しないようにするのも大事

そうですね、アレルギーの発症を恐れて、ピーナッツ、ナッツ、そばなどを年齢が進むまで食べさせないご家庭も少なくなかったり、いくらにアレルギーがある場合、すべての魚卵を食べないようにしている方もいらっしゃいます。

現在はピーナッツや卵において、早期から摂食していくことで食物アレルギーの発症予防につながるとする見解も示されていますし、また魚卵やナッツのなかで1つの食物にアレルギー症状がある場合でも、他の魚卵やナッツにアレルギー症状が出現するとは限りません。

既にアレルギー症状のある方が自己流に積極摂取をすることは危険行為ですが、アレルギーの原因食物を摂取し食べられる量を増やしていく経口免疫療法を受けられている方もいらっしゃいます。

食物の除去をしていたけれど、食べてみたら症状がなかった、という方もいらっしゃいますが、食べたくないわけではない食物の除去は必要最低限にとどめられるのが望ましいところです。

原材料にアレルゲンを使用しているかがわかるだけでなく、使用していない食品がわかり、使用していないレシピもわかるようになっている。


■「ベジタリアン、保育士、飲食店の方にも利用されています」



――アレルギー患者さんや家族以外の方にも利用用途はありますか?

はい、ビーガン、ベジタリアンなど食に対する様々な考えの方の受け皿として、卵、乳など動物性原料を使用しないレシピや商品を探すためにもご利用いただいています。

他にも飲食店を経営している方や保育士の方など、仕事上アレルギーについて理解する必要のある方に記事を参考にして頂いているようです。先日も、大豆の代替食物を探されている食品メーカーさんが、候補となる豆をご紹介したクミタスの記事を読まれたらしく、実際にその豆が採用されたこともあります。

アレルギー対応において社会の協力が必要な面がありますが、摂取可能量に個人差がある中で、食品においては食品表示法に準拠した対応が取られています。

――飲食店や保育士など食事を出す側にも知識が求められますね。

食物アレルギーにおいては誤食により症状が出現することがあり、誤食は避けたいものです。

食べられると思っていたら食品のラベルが貼り間違えられていた。外食時にアレルゲンの確認をした際は不使用だと聞いていたが実際には使用されていた。施設や学校で給食の誤配や確認ミス、伝達漏れが起きた。

残念ながら、こうした理由で意図せず摂取し症状が出現することもあります。

「牛乳0.05mlで症状出現する」方において、こうしたミスを避け、アレルギー成分が使用されているかどうかの情報は明確に信用できるものである必要があります。

また、飲食店においてアレルギー対応のために完全に厨房も従業員も設備も分ける、というのは容易なことではありませんが、食材として使用しているもの、一定量以上の混入が避けられないものについて、飲食店スタッフで把握ができていることで、飲食店さん側の事故リスク低減にもつながります。

クミタス内ではアレルギー対応商品の食品メーカーとのコラボレーションやキャンペーンなども行っている。

 


■食物アレルギーの方の行動に制限のない世界を構築したい


――ウィルモアの取り組みを通じて実現したいビジョンがあれば教えてください。

クミタスでは食べられる選択肢を提供することをおこなっており、アレルギーに関して理解を深める読み物の提供をおこないつつ、食物除去中の方でも食べられる食との出会いの機会を創出しています。

○○不使用で検索して商品が見つかり、購入可能なお店もわかる、○○を使用しないで作れるレシピの提供など。先に中食から始めていますが、外食対応も進めています。

食物アレルギーにおいては食べられる許容量が増えることで、混入による症状出現リスクの低減につながり、外食、旅行と行動範囲も広がります。アレルギーのある方も行動に制約なく楽しみながら食の選択肢を持てるように、これからもしていきたいですね。

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