2015.12.24 THU 「パワー半導体」市場とは?
text by : | 編集部 |
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photo : | shutterstock |
astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を分類した「2025年の成長市場」。近日公開予定の「超電導送電」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。
パワー半導体とは、家電、コンピュータ、自動車、鉄道などあらゆる機器に幅広く使われている電力のスイッチングや変換、モータ制御等で必要となる半導体素子を指し、主にインバータ回路やコンバータ回路で使われている。
例えば家庭のエアコンは、コンプレッサ(圧縮器)に組み込まれている交流モータの回転数を制御して温度を調節している。回転数を制御するために、電力周波数を既定の50Hz・60Hzから任意の周波数に変換することにより、温度調整や、省エネ、CO2排出量削減の効果が得られる。直流電源を利用する家電製品には、交流電力を直流電力に変換するための整流回路(AC-DCコンバータ)や、家電に搭載された各種電子部品に応じた電圧・電流を供給するレギュレータ(DC-DCコンバータ)などが使われている。
コンピュータやインフラ装置など、電圧変動や遮断が許されない機器の無停電電源にも、インバータが2次電池とセットで使われている。自動車もまた、パワー半導体を多く必要とする。エンジン出力を最適に制御するために燃料供給や吸気システム、バルブの開閉、点火などを電子制御するモータやアクチュエータを各種パワー半導体で制御している。また、パワー・ウインドーや各種車載電装機器の制御にもパワー半導体が使われている。そして、ハイブリッド自動車や電気自動車のモータ制御にインバータが採用され、需要が拡大している。
このほか、電車用モータ制御のための超高耐圧パワー素子、太陽電池や風力発電用のインバータなどがある。太陽光発電では直流電力、風力発電では不安定な交流電力が発生するが、インバータによって安定した周波数の交流に変換して送電する。一つの太陽電池の電圧はせいぜい0.5V程度なので、それをいくつも直列につないでインバータを使って交流100Vに変換している。
広義のパワー半導体には、IGBT(insulated gate bipolar transistor)、MOSFET(metal oxide siliconfield effect transistor)、パワー・バイポーラ・トランジスタ(PBT)、パワー・ダイオードなどのパワー個別半導体のほか、リニア・レギュレータ、スイッチング・レギュレータなどの電源回路、これらを制御するためのパワー・マネジメント用ロジックLSIなどが含まれる。利用品目としては、サイリスタ、GTO(gate turn-off thyristor)、バイポーラ・トランジスタなどからMOSFET、IGBTへと進展し、応用分野も家電製品からOA、産業、医療、電気自動車、鉄道、電力インフラに至る幅広い分野へと拡大してきた。
現在、パワー半導体が扱う電力の範囲は数Wのスイッチング電源からGW級の直流送電までに達している。身の回りのさまざまな電子機器にパワー半導体が使われているのである。しかし、従来のSiを使ったパワー半導体は、Siの物性で決まる理論的な性能限界に近づいており、飛躍的な性能向上を期待することが困難になってきた。そこでSiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム) などのWBG(ワイドバンドギャップ)の特性を持つ化合物を使った次世代型パワー半導体に市場が移行しつつある。
例えば、電力変換の際のロスを減らすためにパワーMOSFETの低抵抗化が求められているが、現在主流のSi-MOSFETでは大幅な低抵抗化が難しい。そこでバンドギャップが広い(ワイドギャップ)半導体であるSiCを使った低損失パワーMOSFETの開発が進む。 SiCはトヨタ自動車がデンソーや豊田中央研究所と共同で2020年のハイブリッド車はじめ電動車両用のSiCパワー半導体の量産化に向けた動きが活発化しており。 小型化が容易で高周波特性が強みのGaNもスイッチング電源などの高耐圧製品の量産化の期待が持たれている。
近日公開予定の「パワー半導体」市場コンテンツでは、この市場のグローバル市場規模、用途展開、活躍できる職種などを紹介する。
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