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核融合・プラズマと超伝導の要素技術と研究開発具体例|特許・論文・学会データを元にした世界の動向

text by : 編集部
本記事は、核融合・プラズマと超伝導について、アスタミューゼ社作成の『R&D/知財戦略構築向け分析』レポートから一部抜粋した内容となっている。

はじめに

アスタミューゼ社のご紹介

弊社は世界の無形資産・イノベーションを可視化し 社会課題解決と未来創造を実現する、データ・アルゴリズム企業であり、
イノベーション投資の流入に加え、イノベーターの流れを機械的に分析し、データに基づいた成⻑領域を定義している。

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アスタミューゼ株式会社: https://www.astamuse.co.jp/

R&D/知財戦略構築分析レポートのご紹介

アスタミューゼでは今芽吹きつつある黎明期の技術シーズや今後 10 年から 20 年 のスパンで大きく開花すると期待される初動段階の技術市場に重点を置きつつ、生活文化の中に根 付く技術にも光を当て、総じて未来を創る技術分類の網羅に取り組んできた。
このために、国内第一線の知を結集して全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、展示会等の情報並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、136 の有望成長市場と、40 の 未来技術を選んだ。主にビジネス視点で策定された有望成長 136 市場を対象にしており、本レポートは、『核融合・プラズマと超伝導』のR&D/知財戦略構築に特化した内容となっている。

核融合・プラズマと超伝導 R&D/知財戦略構築分析レポート タイトル 核融合・プラズマと超伝導
R&D/知財戦略構築分析レポート
レポート
体裁
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発行元 アスタミューゼ株式会社

事業会社に向けては、イノベーションに関わる経営課題を中心に戦略構築支援/実行支援を実施しており、
・自社の既存事業の優位性がいつまで続くかわからない
・既存事業の成長が踊り場にきているので、使っている技術 を別で活かせる可能性を探りたい
・既に着手している研究開発を続けるべきどうか、もしくは 自社開発ではない方法があるかを含めて検討したい
といった企業のよくあるお悩みを解決している。

研究開発のための概要および現状把握

現在の原子力発電で活用されている核反応はウランやプルトニウムの核分裂反応であり、反応後の燃料棒のような高レベルな放射性廃棄物が残るといった問題点を抱えている。それに対し核融合炉の場合、発生した中性子がプラズマの周辺物質を放射性物質に変えるものの、低レベルの放射性廃棄物が残るだけであり管理が容易い。また、核分裂における連鎖反応のような反応は核融合では起こらず、暴走の危険性がない。さらに、核融合炉において主に扱われる反応には水素(重水素・三重水 素)やヘリウムが用いられており、水素は地上に無尽蔵に存在するので、化石燃料やウランなど核分裂反応での燃料のように枯渇する心配がない。そのうえ、核融合反応で作りだされるエネルギーは、 同質量のウランが核分裂反応を起こす場合での 4.5 倍以上、石油の場合では優に 8,000 万倍以上である。温室効果ガスによる気候変動の問題や発展途上国を中心とした人口爆発によるエネルギー需要のひっ迫などに対応する技術の一つとして、核融合炉を次世代の原子力発電として利用するための技術開発が急がれる。

核融合の反応を起こすには、反応条件が他の核融合での反応と比較して緩やかな重水素・三重水素 反応(D-T 反応)の場合でも原子核同士を 1,000 km/s 以上で衝突させることが必須である。そのため、この状態を生み出し維持するにはプラズマを 1 億度以上といった超高温かつ超高密度にして炉 内に閉じ込めておくことを必要とする。このようにプラズマを炉内に閉じ込めておく方式としては、 主に磁場により閉じ込める方式のトカマク型とヘリカル型、レーザーによる慣性閉じ込め方式とがあり、現在のところトカマク型が最も一般的となっている。

超伝導(※)現象とは、金属を非常に低温にした時に、電気抵抗が消失し、マイスナー効果(超伝導磁 気浮上)が観測される状態を指す。超伝導は 1911 年にカマリン・オネスによって発見され、その時 水銀が超伝導となった温度(臨界温度)は 4.2K(-268.8℃)であったが、1986 年にヨハネス・ベドノルツとカール・アレクサンダー・ミューラーにより確認されたバリウム・ランタン・銅の酸化物の 臨界温度は 35K(-238℃)であった。以後、臨界温度は飛躍的に向上し、酸化物超伝導体において臨界温度が 100K(-173℃)を超える物質が相次いで発見され、液体窒素(-196℃)を超える温度で超伝導現象を示す物質は高温超伝導体と呼ばれるようになった。従来、超伝導状態を実現するためには 液体ヘリウム(-269℃)が必要であったが、安価な液体窒素で安定して超伝導状態を保てるため、コストが劇的に低下した。

※超伝導の表記に関して、学会など学術分野では「超伝導」を用いることが多く、産業界など応用分 野では「超電導」を用いることが多い。本レポートは前者の記述に従った。

課題・問題点とその解決事例

核融合炉は超高温のプラズマ状態で燃料を持続的に反応させる必要があるため、装置は極めて大掛かりなものとなる。そのため、国家レベルあるいは国際協力での研究開発が一般的であり、代表的なものとしては日欧米韓中露印の 7 極参加で建設を推進し、2025 年にファーストプラズマを目指すトカマク型の「国際熱核融合実験炉」やマックスプランク・プラズマ物理学研究所のヘリカル型核 融合実験炉「Wendelstein 7-X」、米国国立点火施設のレーザー方式での核融合の研究が挙げられる。 一方近年になって、米国を中心とした民間企業の核融合の研究開発への参入が行われるようになってきており、その資金調達は国家予算からクラウドファンディング、自社資金とさまざまである。最近では 2018 年に Massachusetts Institute of Technology(MIT)とスタートアップ企業である Commonwealth Fusion Systems(CFS)が共同でイタリアのエネルギー会社 Eni から 5,000 万ドル の資金提供を受けている。MIT と CFS はこの資金調達を公表した同じ日に、高温超伝導体を用いることで核融合炉を小型化して実験を行い、発電所につながるパイロットプラントを 15 年以内に実現させると発表している。

超伝導を利用した産業応用としては、交通・輸送分野ではリニアモーターカー、医療分野では脳磁図や MRI などがあるが、エネルギー分野で今後期待されているのが、超伝導現象を利用した電気抵抗ゼロの送電ケーブルを用いて効率の良い送電を行う超伝導送電である。超伝導送電のメリットは、 第一にコンパクトで大容量な送電が可能となることである。現行では内径が約 2,000mmの洞道と呼ばれるトンネル内に送電線を布設しているが、超伝導ケーブルは単位面積当たりの送電容量が従来比で 100 倍以上あるため、内径約 150mmの管路内に布設が可能となる。このように収容断面積が抑えられることで、既存設備が有効活用でき、新設する際のコストダウンも可能となる。また、第二 のメリットとしては、ジュール熱が発生せず、ヒステリシス損失(外部磁界が増減する際に、強磁性 体の磁束密度が変化することによって生じる熱エネルギーによる損失)などによる交流ロス(交流電 流を流すことによる電力損失)や冷凍機に掛かる電力を差し引いても、電力損失が低減できることである。また、限流器や変圧器にも超伝導機器を導入することで、小型軽量化や系統安定度の向上が期待できる。
現在超伝導送電に使用されている高温超伝導線材は、ビスマス系とイットリウム系があり、前者は 既存の圧延プロセスを利用して容易に製造できるが、後者は蒸着などのプロセスが必要で製造が容易ではないものの、電流密度が大きく大電流を流せる特徴を有する。ビスマス系においては新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「高温超電導ケーブル実証プロジェクト」(平成 19-25 年 度)において既に実系統連系試験を行っており、トータルシステムとしての総合的な信頼性が検証されている。また、イットリウム系では、NEDO の「イットリウム系超電導電力機器技術開発」(平成 20-24 年度)において、長尺線材や超伝導変圧器などの技術開発が進められた。その後に行われた NEDO の「次世代送電システムの安全性・信頼性に係る実証研究」プロジェクトにおいて、地絡試験 の実施や冷却システムシミュレーションのモデル作成など、安全性・信頼性にかかるデータを得てい る。
超伝導送電技術が実用化されれば、核融合炉のような大規模な発電施設から遠方の需要地にエネルギーロス無く送電を行うことができると期待されている。未だ実用化への距離はあるが、今後の研究の進展が待たれる。

要素技術の定義とそのランドスケープ

核融合・プラズマと超伝導の要素技術としては、下記のようなものが例としてあげられる。

  • 高速中性子
  • 超伝導電磁石
  • 常温核融合
  • 磁場閉じ込め方式(トカマク型、ヘリカル型、磁気ミラー型)
  • 磁気絶縁方式慣性核融合
  • ジョセフソン接合
  • マイスナ―効果
  • 高温超伝導ケーブル
  • 臨界電流密度
  • 交流損失

アスタミューゼ社の『R&D/知財戦略構築向け分析』レポートでは、核融合・プラズマと超伝導の基礎となる技術を川上とし、応用技術を川下とした要素技術のランドスケープと、用途・目的ごとに一覧化した詳細技術分類を提供している。

特許・論文・レポートとベンチャー・研究投資の世界動向

アスタミューゼ社では、世界中の無形資産/非財務・イノベーションを可視化するために 機械と人力で様々な情報を収集・統合し、世界最大級のデータベースを構築している。そのデータベースにおける核融合・プラズマと超伝導の2010 年から 2019 年の 10 年間における世界のグラントの資金流入額は総額 $950M である。

本レポートでは、
・主な技術・製品・サービスと2030年の市場規模予測
・特許出願件数推移/特許出願国別構成
・世界のスタートアップ設立社数と被投資額の累計/推移
・研究投資の国別動向: グラント採択数と総配分額ランキング
・研究投資の国別動向: 世界/日本のグラント配分額上位25テーマ
を提供している。

最新の技術開発具体例

本レポートでは、核融合・プラズマと超伝導において、押さえておくべき最新の技術開発事例を多数紹介している。

技術で収益化/事業貢献するために参考にすべきビジネスモデル

ベンチャービジネスの例としては、 Magnetized Target Fusion(MTF)をベースにした新しいコンセプトを用いて、実用規模の核融合発電を開発している General Fusion や、 磁場ではなく剪断流(sheared flows)を用いてプラズマを安定化する核融合炉を開発している Zap Energy があげられる。
本レポートでは、核融合・プラズマと超伝導分野において、技術で収益化/事業貢献するために参考にすべきビジネスモデルを
・世界のベンチャー/スタートアップの設立社数と合計被投資額
・資金調達額上位30社の企業名/企業概要/資金調達額
とともに詳細に記載している。

共同研究/開発パートナーとなる企業・大学

アスタミューゼ社では、アメリカ・中国などの海外を含めた世界中のメーカー/ベンチャー/大学の情報を収集・統合しており、核融合・プラズマと超伝導においては、
・Tokamak Energy
・Korea Basic Science Institute
・TAE Technologies
・Siemens AG
・Lockheed Martin Corp.
・Commissariat à l’énergie atomique et aux énergies alternatives
・株式会社東芝
・General Electric Company
・General Fusion
・Western Superconducting Technologies Co., Ltd
などが例としてあげられる。
本レポートでは、核融合・プラズマと超伝導分野において、現時点で保有する技術が総合的に優位な企業を各種特許指標から評価し、ランキング形式でリスト化して提供している。

おわりに

本レポートの目次

核融合・プラズマと超伝導 R&D/知財戦略構築分析レポート表紙 核融合・プラズマと超伝導 R&D/知財戦略構築分析レポート目次
タイトル 核融合・プラズマと超伝導
R&D/知財戦略構築分析レポート
レポート
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発行元 アスタミューゼ株式会社

会社概要

アスタミューゼ株式会社: https://www.astamuse.co.jp/

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