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発生工学・再生医療・細胞治療の要素技術と研究開発具体例|特許・論文・学会データを元にした世界の動向

text by : 編集部
本記事は、発生工学・再生医療・細胞治療について、アスタミューゼ社作成の『R&D/知財戦略構築向け分析』レポートから一部抜粋した内容となっている。

はじめに

アスタミューゼ社のご紹介

弊社は世界の無形資産・イノベーションを可視化し 社会課題解決と未来創造を実現する、データ・アルゴリズム企業であり、
イノベーション投資の流入に加え、イノベーターの流れを機械的に分析し、データに基づいた成⻑領域を定義している。

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アスタミューゼ株式会社: https://www.astamuse.co.jp/

R&D/知財戦略構築分析レポートのご紹介

アスタミューゼでは今芽吹きつつある黎明期の技術シーズや今後 10 年から 20 年 のスパンで大きく開花すると期待される初動段階の技術市場に重点を置きつつ、生活文化の中に根 付く技術にも光を当て、総じて未来を創る技術分類の網羅に取り組んできた。
このために、国内第一線の知を結集して全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、展示会等の情報並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、136 の有望成長市場と、40 の 未来技術を選んだ。主にビジネス視点で策定された有望成長 136 市場を対象にしており、本レポートは、『発生工学・再生医療・細胞治療』のR&D/知財戦略構築に特化した内容となっている。

発生工学・再生医療・細胞治療 R&D/知財戦略構築分析レポート タイトル 発生工学・再生医療・細胞治療
R&D/知財戦略構築分析レポート
レポート
体裁
PDF 日本語
発行元 アスタミューゼ株式会社

事業会社に向けては、イノベーションに関わる経営課題を中心に戦略構築支援/実行支援を実施しており、
・自社の既存事業の優位性がいつまで続くかわからない
・既存事業の成長が踊り場にきているので、使っている技術 を別で活かせる可能性を探りたい
・既に着手している研究開発を続けるべきどうか、もしくは 自社開発ではない方法があるかを含めて検討したい
といった企業のよくあるお悩みを解決している。

研究開発のための概要および現状把握

発生工学(developmental engineering)は、生物の発生過程、すなわち精子と卵の受精から胚発生、形態形成などを研究する発生生物学をベースとし、受精卵や胚盤胞を体外に取り出す技術、それらを培養する技術、それらの胚を操作する技術、操作した胚を再び仮親の卵管や子宮に移植する技術などを含む。不妊治療として用いられる体外受精や病気など特定遺伝子を持たない受精卵の選別をするデザイナーチャイルド、複数の生物種の遺伝子を併せ持つキメラ生物や、クローン生物(完全に同一のを持つ生物個体)、ノックアウト・ノックダウン生物(特定の遺伝子の発現を抑制・低減した 生物)の作製など、現在の再生医学の源流になるような基礎技術が含まれる。
また、再生医学・再生治療(regenerative medicine)とは、疾患や傷害、加齢等により損なわれた生体組織の構造や機能を、幹細胞などを用いて再生・修復する医学・医療の領域をいう。特定の臓 器や組織の再生を指す場合、組織工学(tissue engineering)という表現を用いることもある。一方、 細胞治療とは生体細胞を体外に取り出し、選別、活性化、増幅などの処理を行った後に患者に投与する治療法を指し、免疫細胞移植や造血幹細胞移植などがこれに当るが、幹細胞から分化誘導した細胞 を患者に移植することにより組織修復を目指す再生医療も広義の細胞治療には含まれる。

近年の再生医療のトピックスとしては、理化学研究所と先端医療振興財団が 2013 年 8 月より開始 した 「滲出型加齢黄斑変性に対する自家 iPS 細胞由来網膜色素上皮シート移植に関する臨床研究」 がある。患者本人の皮膚細胞から多分化能をもった iPS 細胞を作製し、それを網膜色素上皮細胞に分化させシート状にして網膜の黄斑部に移植するものである。2014 年 9 月に日本における iPS 細胞 を用いた治験の 1 例目となる移植が 70 歳代の女性の片眼に対し行われた。移植の安全性や視機能への影響評価には約 1 年間の観察期間が必要とされ、これまでに 5 例の患者に移植が行われてきたが、2017 年 6 月には 1 名に合併症が発生したため移植した細胞シートが除去された。

課題・問題点とその解決事例

2012 年 12 月時点で上市製品数及び治験製品数は、欧州(上市 20 品目、治験 42 品目)、米国(9 品目、88 品目)、韓国(14 品目、31 品目)に比べて、日本は(2 品目、4 品目)と極端に少ない。 改正薬事法により、日本の再生医療関連市場が発展していくことが期待されていた。現在、再生医学・ 再生医療の主流となっているのは、細胞培養法(大量培養、三次元培養、自動システム化など)、細胞治療(幹細胞などを患部に注入・挿入して組織再生させる)、細胞シート療法(皮膚や角膜、網膜、 心筋などの細胞をシート状に増やした細胞シートを患部に挿入したり被せたりして患部に同化させ、 組織再生させる)だが、生体外で心臓や肝臓全体のような三次元的な臓器を作ることには未だ成功していない。しかし、東京理科大学の辻孝教授らは、2007 年、臓器・器官のもととなる「器官原基」 を再生する細胞操作技術として「器官原基法」を開発、同技術で再生した歯の器官原基(再生歯胚) から再生歯が口腔内で萌出・成長して、機能的な歯へと成長することを 2009 年に明らかにし、さらに、2011 年には、再生歯胚から再生歯ユニットを作製し、完成した器官を移植して歯の生理機能が 回復可能であることを示した。唾液腺、毛包についても器官原基が作成されており、2012 年には、 毛包原基を無毛マウスに移植して、毛包と毛幹の形成だけでなく、周囲の皮膚層、筋肉や神経繊維と 結合し、刺激に応答して逆立つことなども明らかになった。
再生医学のもう一つの役割としては、創薬研究や病態研究がある。再生医学の手法を応用し、分化誘導させて得られる種々の細胞や、難病患者から得られた iPS 細胞を用いることで、様々な病態モデル細胞を作製することができ、それらの細胞を使って創薬ターゲット分子や疾病原因遺伝子を特定 することで、疾患の治療や研究が飛躍的に進むと期待されている。

要素技術の定義とそのランドスケープ

発生工学・再生医療・細胞治療の要素技術としては、下記のようなものが例としてあげられる。

  • ES 細胞(Embryonic Stem cell)
  • 自家細胞/他家細胞
  • iPS 細胞(induced Pluripotent Stem cell)
  • GVHD(Graft versus Host Disease)
  • 間葉性幹細胞
  • HLA(Human Leukocyte Antigen)
  • Muse 細胞(Multilineage-differentiating stress enduring cell)
  • 免疫抑制
  • 細胞マーカー
  • 疾患モデル
  • 培養条件
  • 医薬品アッセイ
  • 培地添加物
  • HTS(High Throughput Screening)
  • GMP(Good Manufacturing Practice)
  • 皮膚移植
  • 凍結
  • 軟骨再生
  • 解凍
  • 網膜再生
  • 分化誘導
  • 心筋再生
  • がん化抑制
  • 末梢神経再生
  • ベクター
  • 中枢神経再生
  • 遺伝子導入
  • 血管再生
  • 特性改変
  • 膵β細胞再生
  • 二次元/三次元組織構築
  • 造血能再生
  • 細胞シート
  • 毛髪再生
  • スキャフォールド
  • 歯槽骨再生
  • 細胞バンキング
  • 乳房再生
  • 幹細胞デリバリー
  • 腎臓再生

アスタミューゼ社の『R&D/知財戦略構築向け分析』レポートでは、発生工学・再生医療・細胞治療の基礎となる技術を川上とし、応用技術を川下とした要素技術のランドスケープと、用途・目的ごとに一覧化した詳細技術分類を提供している。

特許・論文・レポートとベンチャー・研究投資の世界動向

アスタミューゼ社では、世界中の無形資産/非財務・イノベーションを可視化するために 機械と人力で様々な情報を収集・統合し、世界最大級のデータベースを構築している。そのデータベースにおける発生工学・再生医療・細胞治療の2010 年から 2019 年の 10 年間における世界のグラントの資金流入額は総額 $3,000M である。

本レポートでは、
・主な技術・製品・サービスと2030年の市場規模予測
・特許出願件数推移/特許出願国別構成
・世界のスタートアップ設立社数と被投資額の累計/推移
・研究投資の国別動向: グラント採択数と総配分額ランキング
・研究投資の国別動向: 世界/日本のグラント配分額上位25テーマ
を提供している。

最新の技術開発具体例

本レポートでは、発生工学・再生医療・細胞治療において、押さえておくべき最新の技術開発事例を多数紹介している。

技術で収益化/事業貢献するために参考にすべきビジネスモデル

ベンチャービジネスの例としては、 がんや自己免疫疾患の治療を目的とした新規バイオ医薬品の発見と開発に取り組んでいる OncoImmune や、 CD40L 経路を標的とした専門知識を活用して、自己免疫疾患や神経変性疾患の患者のための潜在的な治療法を開発している Eledon Pharmaceuticals があげられる。
本レポートでは、発生工学・再生医療・細胞治療分野において、技術で収益化/事業貢献するために参考にすべきビジネスモデルを
・世界のベンチャー/スタートアップの設立社数と合計被投資額
・資金調達額上位30社の企業名/企業概要/資金調達額
とともに詳細に記載している。

共同研究/開発パートナーとなる企業・大学

アスタミューゼ社では、アメリカ・中国などの海外を含めた世界中のメーカー/ベンチャー/大学の情報を収集・統合しており、発生工学・再生医療・細胞治療においては、
・CorMatrix Cardiovascular, Inc.
・The Royal Netherlands Academy of Arts & Sciences
・University of California
・The Children’s Medical Center Corp.
・Seoul National University (ソウル大学校)
・Stanford University
・Zhejiang University(浙江大学)
・ACell, Inc.
・富士フイルム株式会社
・Sichuan University(四川大学)
などが例としてあげられる。
本レポートでは、発生工学・再生医療・細胞治療分野において、現時点で保有する技術が総合的に優位な企業を各種特許指標から評価し、ランキング形式でリスト化して提供している。

おわりに

本レポートの目次

発生工学・再生医療・細胞治療 R&D/知財戦略構築分析レポート表紙 発生工学・再生医療・細胞治療 R&D/知財戦略構築分析レポート目次
タイトル 発生工学・再生医療・細胞治療
R&D/知財戦略構築分析レポート
レポート
体裁
PDF 日本語
発行元 アスタミューゼ株式会社

会社概要

アスタミューゼ株式会社: https://www.astamuse.co.jp/

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