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With/Afterコロナで 進化が加速する20分野の未来と、解決が早まる26の社会課題 ~「個人」「企業」「社会」で、短期、中期、長期それぞれにおけるWith/Afterコロナがもたらす変化とは

text by : 編集部

アスタミューゼは、世界80ヵ国、約2億件に及ぶ新事業、新製品/サービス、新技術/研究、特許情報、投資情報などの自社データベースを元に、現在、経済や生活に大きな影響を及ぼしている新型コロナウィルスに関し、今後どうなっていくのかを「個人」「社会」「企業」の各レベルで、短期(~6か月)、中期(6か月~3年)、長期(3年~)において分析し、それぞれの視点で“With/Afterコロナ”がもたらす変化を見通すために押さえるべき成長分野、社会課題を抽出・整理しました。

■With/Afterコロナに関する見立て

外食やインバウンドが90%を超える需要減に喘ぐ一方、75,000人の追加採用を発表したAmazonのようにコロナ禍を成長につなげている企業も存在します。この荒波を乗り越えるためには、コロナに伴う人々の生活・マインドセットの変化をファクトベースで真摯に見つめ、変化に合わせて素早く対応することが求められます。

アスタミューゼでは、With/Afterコロナの世界における変化を見通すために押さえるべき論点を、成長領域・社会課題に紐づけて「個人」「社会」「企業」の各レベルに分類しました。上記の図表では、With/Afterコロナの影響で進化が加速すると思われる領域を青文字で、解決が早まる社会課題を緑字で表記しています。

各国にて発令されている非常事態宣言や世界的な外出自粛期間を経て、中長期的にどのような変化が起こりうるのか、またその変化により発展すると考えられる具体的な分野や注目される技術例、カルチャーなどの一部を挙げました。

【個人】
<短期的(~6か月)な変化>
感染防止のため「三密」回避=外出を控える生活

<中期的(6か月~3年)な変化>
① 孤独感の増大/新たな娯楽の追求

  • 人との接点や外出の制限が長引くにつれ、孤独感の増大から、うつ病などの精神疾患や世界で毎年80万人程度いる自殺者が増加する可能性がある
  • また労働人口のみならず、重症化可能性が高く生活が制限される高齢者や、休校/休園の影響を受ける幼児・若年層まで幅広く影響を受ける
  • それに伴い、制限された人との接点やアクセスできなくなった娯楽を代替するサービスが求められるようになると予想
    ・オンライン/非接触で他人と接点を持つzoom飲みなどの新しい文化の誕生
    ・個人に寄り添うような、人間の感覚や感性を考慮したコミュニケーションロボットやパーソナルロボットの製品化の加速。例:GROOVE X社のLOVOT(らぼっと)
    ・感染拡大防止のために、物理的な会場を持たない形態での娯楽の発展。
    ・例えばスポーツにおいて、従来の動画配信のみならず、VR/AR技術を利用したHMD(Head Amount Display)による視聴や、高臨場ライブ体験(Immersive Live Experience, ILE)を用いたパブリックビューイングによる「体感」の加速
    ・他者との交流や一体感をより楽しむ目的でe-sportのトレンドが加速。2017年での海外の市場規模は700億円を超え、視聴者数も3億人
  • また、娯楽のみでなく、メンタルヘルスケアの文脈で、心理カウンセリングなどの心理療法や、コンパニオンアニマルとの生活、アロマテラピーの普及なども加速

② 運動不足/健康への意識の高まり

●通勤が不要、かつプライベートでも外出自粛の流れの中で運動不足が深刻化

●人々の生活の中で、人との接点を持たずにできる運動(筋トレやランニング等)が活発になり

●加えて、効果的/効率的な健康管理・運動管理への意識が高まると考えられる。
・具体的には、アディダスのスマートスポーツ構想のように、呼吸量や加速度、心電/心拍などのデータをモニタリングし、運動のアドバイスに役立てるサービスが多く展開され
・またリモートワークで深刻化する腰痛などの健康課題を、自宅で解決するための運動器具(米SpineGym社のStrong Back and Abs for life等)の普及の可能性がある

●また一部の要介護者など、従来の健康問題が更に悪化してしまう可能性のある層に対して、パワーアシストスーツのように利用者が装着するタイプの移動支援機器や、電動車イスのようなパーソナルモビリティの開発も進むと考えられる

③働き方の多様化

●不景気による解雇/組織再編とリモートワークの加速によって、(特に数年後になると目されている雇用の回復局面以降、)多様な働き方が生まれる可能性が高い
・企業は、コロナのパンデミック再発による事業の再停滞リスクを恐れ、業務委託などの外部人材の活用を加速させる
・リモートワーク環境下では、明確な数字的成果以外での人事評価が難しくなり、また不景気下でより成果にシビアになっていくことから、人間関係や残業時間に基づいた組織/人事制度設計は変化していく
●上記の流れから、時間や場所、雇用形態、年齢や性別を問わず、成果を出せば対価が支払われるというようなトレンドが加速すると考えられる
●別の側面として、人的資本を活用する「感染拡大リスクが0ではない」経済活動を最小化し、AI等による自動化・省人化を進める企業が増えると予想され、一部産業における雇用は超長期的にも回復しない可能性もある

 

④過密地域のリスク増大/地方移住

●リモートワークの加速と密集地域での感染リスクの高さのため、都市に居住するインセンティブが失われる可能性がある。
●不景気下では、生活コストも大幅に下げることが可能で、感染リスクも低い地方への移住/複数拠点生活が進む
●そのため地方でも、教育/医療などや各種職業へのアクセスの拡大と、そのインフラとしてのネットワーク環境や行政制度の整備も求められるようになる
・例.全米の大学や教育機関と提携し、子供・教師・保護者向けに「オンラインで修士がとれるプログラム」を提供しているHotchalk
●上記の整備度合によって、地方間でも格差が拡大する可能性がある(神山バレーなどネットワークや移住環境が整ったエリアへの資本集積)
●地方拠点では営業メンバーの生産性が下がるなどの事例もあり、モチベーションと生産性を担保するための新しい仕組みの開発も進む

【企業】
<短期的(~6か月)な変化>
在宅勤務の推奨・不確実環境下での投資抑制

<中期的(6か月~3年)な変化>
⑤ 事業のオンライン化

●感染拡大防止のため、リモートワークが加速。テレワーク助成金など行政の支援もその追い風に
●また職場環境のオンライン化だけでなく、オフラインで展開していた事業そのもの(小売りやイベントなど)もオンライン化が進む
●物理的なオフィスは最小限にしつつ、オンラインでいかに効率的に働くかという課題に取り組むサービスの提供が進む可能性
・例えば、JINSの、ユーザーのまばたき/視線移動/体の動きなどのデータから、その人の集中度をアプリ上で確認できる「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」などのウェアラブルデバイス
●テレワークを支えるための、動画配信・画像配信の技術や通信インフラは加速的に普及。併せてAR(Augmented Reality)/VR(Virtual Reality)技術も進展が見込まれる
●一方個人情報管理やサイバー攻撃対策などセキュリティ面での課題は増え、より効果的に解決するためのソリューションが求められる可能性

<長期的(3年~)な変化>
⑥ 地理的リスク・感染拡大リスクの少ないサプライチェーンの構築
(地産地消 or グローバル分散の加速)

●不景気による事業効率化/コストカットの圧力と、パンデミックが再度発生した際の商品安定供給体制確立のため、あらゆる産業のサプライチェーンの再構築が求められる
●その地で消費するものはその地で調達/製造する「地産地消」と、一部地域でパンデミックが起こった際も、別の場所から調達/製造できるような「グローバル分散」の2つの方向性で再構築が進む
・そのトレンドの中で、在庫等リスクを最小限にし、かつ効率的に運用可能なサプライチェーン設計を目的とし、物流IoT化、例としては商品管理や返品ロスの低減、積載率の向上が可能なRFIDなどの実用化が進む
●そもそも人的資本に頼らないサプライチェーンの構築、つまり自動運転やファクトリーオートメーションにも投資が進む。
・例えば、船舶貨物では2025年までに、国土交通省を中心とした「自動運行船」の実用化に向けた技術開発が進められている
・企業レベルでも、独で2017年に設立したWandelbots社は、数十個のセンサーを内蔵したジャケットを着用して作業することで、業界でメジャーな12のメーカー製のロボットに動作をプログラミングすること(ロボットティーチング)を可能としている
●これらの物流IoTでは、5G規格などに代表される情報通信技術の確立が不可欠であり、今後、既存技術の改善と同時に、自動化を中心とした技術確立が期待される

【社会】
<短期的(~6か月)な変化>
社会では、COVID-19治療への投資集中

<中期的(6か月~3年)な変化>
⑦ 教育・医療のオンライン化

●COVID-19の治療への投資と既存医療体制の見直しから、医療のオンライン化・オペレーションの効率化が進む。先行する以下のような取り組みが参考になる
・遠隔手術:遠隔操作により手術を行う目的で開発され、2000年にFDAで承認を受けた内視鏡手術用ロボット「ダ・ヴィンチ」。このような手術支援ロボットの市場規模は約4000億円とも言われている
・ウェアラブル&ユビキタス医療:アメリカでは、絆創膏型のパッチにより糖尿病や高血圧などの慢性疾患の患者の服薬行動やバイタル情報をモニタして分析レポートを作製し、医療者の診断を支援するサービスが提供されている
・データを活用した効果的な医療オペレーション:国内でも、政府が主導して文科省・厚労省・経産省の協力により、2022年度末までの到達目標として「高セキュリティの医療情報データベース構築」「 AI支援による医師―患者間のコミュニケーション増進と医療従事者の負担軽減」「 AIを利用した遠隔画像・病理診断、血液による超精密診断」などによる『AIホスピタルシステム』導入モデル病院の運用開始を掲げている
●また、教育に関してもコロナショックの影響を受けた休校等の措置により、オンラインでの教育事業が加速。下記などの事例がすでに存在する
・イマジニア社はNTTドコモ社との共同事業による教養動画メディア「10MTVオピニオン」を2014年よりリリース。学者、医師、経営者など各界の有識者が出演し、大人の教養が身に付く1話約10分の生の声を講義映像として配信している。スマートフォンアプリにもなり、いつでもわかりやすく楽しんで学ぶことができる
・アルクテラス社「Clear(クリア)」は自分のノートをスマホで撮影して共有し合ったり、他生徒のノートを閲覧したり、質問したりと「生徒(学習者)の主体性」が原動力となっているアプリで。他生徒と交流を持つことで、オンラインスクールで問題となりがちなモチベーションの低下を防げる

<長期的(3年~)な変化>
⑧ 治安低下 / 新たなセキュリティの構築

●不景気による失業率の世界的な高まり/ストレスと不安の増加と、外出を控えることによる他者からの監視の減少により、犯罪の増加が社会課題化
●支援金や、マスクなど不足物資の取引に関するオンラインでの詐欺等犯罪が増加。オンライン上でも安全かつ信頼できる取引の担保が急務に
・メールアドレスと郵便番号のみの情報提供(クレジットカード不要)でサービス利用ができ、商品購入後に届く請求書でもって後払いが可能なeコマース向け後払い決済サービス(Klarna)などの普及が見込まれる
●強盗などの暴力犯罪も増加し、新たな治安維持機構が行政/民間ともに望まれる。
・ワイヤレスで、365日間持続可能なセキュリティカメラ「eufyCam」などのサービス普及の可能性高
●万一集団感染により警察などの治安維持機関の活動が鈍化すれば、テロリズムなどの凶悪犯罪も増加の可能性。下記のような取り組みが進む
・Dataminrが提供する、ソーシャルメディア、ブログなどの様々なコンテンツを含む情報(毎日数十億)から、犯罪の兆候のあるリスクを検出する「人の手に頼らない」AIによるリアルタイム情報監視・解析サービス
・Quanergy Systemsは、スマートセンシング技術により、リアルタイムの3Dマッピングとオブジェクトの検出、追跡、分類が可能。当センシング技術を備えたQ-Guardは侵入検知機能を提供し、空港、国境警備等で活用可能

⑨ 不景気 / 資本主義への不信・新たなる経済的安定性の追求

●外出抑制による消費控えと、企業の投資抑制による失業率の増加/賃金低下によって、世界恐慌以来の不景気に
●国家間では、他国のコロナウィルスへの対応不信やマスクなど物資の奪い合い、またグローバリゼーションが世界的なパンデミックを引き起こす一因となってしまったとの意識から、国家間政治不安の可能性
●各国内部でも、政府/政党のコロナショックへの対応政策のパフォーマンスの高低により、大胆に支持率が変化する可能性が高まる
●コロナショックによる影響を受けた人/受けなかった人の格差の増加や、他にも医療の整っていない途上国での感染深刻化や食料問題など、さまざまな経済的な社会課題の深刻化が考えられる
●これらの課題を解決するための新たな経済システムや金融などの民間サービスの展開が求められるのではないか

 

アスタミューゼでは、約2億件の世界最大級のイノベーションキャピタルデータベースを構築、活用し、”成長領域”とSDGsに対応した人類が解決すべき“社会課題”に分類・分析しています。今回の分析では独自に定義した「2025年の有望成長領域136」及びSDGsの17目標に対応した「未来に向けて解決すべき社会課題105」を活用し予測しました。上記で挙げた事例は膨大な情報のごく一部ですが、個人、企業、社会の側面からどのように変化していくかイメージしていただけるかと思います。

当社では、データベースを活用した新規事業創出コンサルティングの提供及び各分野における様々な分析データを掲載した「成長領域レポート」「社会課題レポート」を販売しております。また、複数の分野や課題を横断的に理解したい、特定の分野について深堀りしたい、具体的なアライアンス先を検討したいといった個別のニーズに応じて、レポートの内容をカスタマイズいただけます。詳細は下記連絡先までお問い合わせください。

より多くの企業がこの未曽有の危機に事業機会を見出す一助となれば幸いです。


【お問い合わせ先】
アスタミューゼ株式会社 事業開発本部
Tel: 03-5148-7392  Mail : report-support-ml@astamuse.co.jp(担当:河崎)

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<Nikkei-Astamuse 成長領域レポート>
https://nvs.nikkei.co.jp/Nikkei-astamuse-report/?utm_source=astamuse&utm_medium=email&utm_content=&utm_campaign=Nikkei-astamuse
<社会課題レポート>
https://www.innovation-capital.biz/social-issues/