Interview

「人」と「機械」の高次元な共存・共鳴を目指して——株式会社光伸 後藤晋司

text by : 編集部
photo   : 編集部

2045年にシンギュラリティを迎え、人工知能が人間の知性を超える予測が立てられ「機械に人間が仕事を奪われる」という危機感は、最近のマスメディアでもよく見かける話題になりました。

「機械化は人間をよりクリエイティブな仕事に解放するための手段である」とファクトリー・オートメーション(FA)の分野で広範囲な業種にわたり顧客に価値を提供してきている株式会社光伸の後藤さんは訴えます。そう思うに至った経緯や、人に対する思いを伺ってきました。


創業から約70年。部品加工から積み上げた信頼が今の社内一貫製作に繋がっている


当社は昭和22年に私の祖父が創業しました。戦後すぐに1台の旋盤から金属加工業を開始しています。どういった理由でその仕事を開始したかは今となっては分かりませんが、自宅兼工場の家内工業でした。それを今の会長、私の父が継いでマシニングセンターなどの設備投資を積極的に行い、技術の幅を地道に拡げてきました。地道に積み上げてきた信頼から、当時付き合いのあるお客様に部品加工だけではなく機械組立もやってくれないかと依頼を受けて事業領域を拡大してきました。

私が当社に入社したのは2003年です。その時に「今の業容(客先図面支給による機械製造)だと付加価値も付けづらいし、景気の波の影響を受けやすいので、自社でも設計から出来るようにならないと」と思い、採用を増やし、設計部門を立ち上げたのが15年くらい前になります。それから電気制御も社内対応が可能となり、機械の設計から加工、組立、電気、据付まで一貫してようやく出来るようになってきました。


2007年に業容拡大で移転した現在の社屋


フルオーダーだからこそ求められる高い技術力。加えて対応の幅広さも強みに。


FAの世界では、基本的にオーダーメイドが当たり前です。同じ業種でも様々な工程がありますし、覚えることも多く、求められる技術水準も高いです。でも当社の社員は、それを毎回新しいチャレンジと前向きに捉えて、モチベーション高く取り組んでくれています。お客様の課題を一緒に解決し、そのことでお客様と、その先にいるユーザー様に喜んで頂ける。そういうところにやりがいを感じています。

求められる技術水準が高いゆえに簡単に人を採用することは難しく、経営者として頭を悩ませるところなのですが、その分OJTなどの育てる部分に力を入れています。ここ4~5年くらいで特に採用に力を入れて新卒採用なども行っています。それと、私が今年で45歳と業界では比較的若いので、若い人が定着しやすいという背景もあるようですね。結果として平均年齢が30代前半で、若手とベテランが上手くバランスを取った構成が出来ていると思います。

また、対応できる幅が広いのが当社の強みかと思っています。検査の装置専門とか、専用機のメーカーもたくさんあるのですが、当社は自動車の他に半導体や食品、化粧品などできるものはみんなチャレンジしてきました。それが他社と比較した時の強みかもしれません。実際に2008年のリーマン・ショックの際は、当時売上の7割を占めていた半導体関連の仕事が0になったのですが、対応可能な幅の広さのおかげで何とかいろいろな業界の仕事を繋ぎ、結果として人を減らしたり、給与のカットもなく乗り越えることが出来ましたね。


当社が手掛ける自動化装置・FAシステムの一例


「人」を資本と考え、職場環境も積極的に改善


社員のことを考えると「働きがい」というのはとても重要で高めていきたい要素です。働きがいは「仕事の面白さ」と「職場環境・社風」の2つの要素で出来ていると考えています。仕事に関しては、先ほど申し上げたとおり、毎回新しいチャレンジで新規感がありますし、お客様の課題を解決するためのモノを作って、それを使ってもらうことで課題が解決され、お客様にも利益が出て、消費者の方も満足する、という3方良しの分かりやすさがあります。

一方で職場環境や社風に関しては、全社員がより快適に、満足して働くことができるよう、オフィスのリフォームや福利厚生棟の新設を実施しました。
また、3年前に「KOSHIN’s 10 Core Values」という行動指針を制定し、社員の理念浸透にも力を入れています。これらの効果もあって昔と比べると確実に改善されたと思います。今流行の「ONE TEAM」に近づいて来ている感じですね(笑)


左)2017年に竣工した福利厚生棟 右)オフィスに設けられた人工芝スペース


機械を作ることで、人がよりクリエイティブなことに寄与できることが願い


当社は機械を製作しているのですが、何でもかんでも機械が主役でいいのかな、という疑問は常に持っています。機械でできるものは機械がやればいいし、人にしかできないものは人がやればいい。人がより人らしい仕事に専念する、機械化できることは機械に任せよう、そういう考えでいます。やっぱり大事なのは人ですよね。危険な作業、苦痛な作業はまだまだいっぱいあるので、そういったことから人を解放して、そのことでよりクリエイティブなことに時間を割けるようになればやりがいがあるな、と思っています。現在検討している自社製品も、そういった世界の問題解決に繋がるような製品にしていきたいですね。

現在、ロボットの技術が目覚ましい進歩を遂げています。従来ではロボットでは出来なかった精度・スピードが可能になり、FAの領域にもロボットが広範囲で入ってきています。そのことで当社の仕事を奪われる部分もあると思いますが、ロボットではできない作業や工程を自動化する機械を生み出すなど、そうした部分は負けないようにこだわって作っていきたいと思っていますね。そのことによって当社がより付加価値の高い製品を製作し続けられればと思っています。もちろん、ロボットを活用した自動化システムにも一層取り組んでいくつもりです。