2015.06.03 WED NewsPicks インフォグラフィック・エディター 櫻田潤氏インタビュー~未来志向のメディア、インフォグラフィックの可能性~
text by : | 編集部 |
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photo : | 編集部 |
情報やデータ、知識を視覚的に表現した「インフォグラフィック」という手法への注目が高まっている。
古くから交通機関の路線図等で使用されていた手法だが、近年メディア上のコンテンツでもよく目にするようになった。
いち早くこの手法に着目し、著書『たのしいインフォグラフィック入門』の執筆や個人で運営する『ビジュアルシンキング( visualthinking.jp )』でも知られている櫻田潤さんに話を聞いた。
―櫻田さんの現在の活動内容を教えていただけますか?
はい、2014年12月に株式会社ユーザベースに入社しまして、NewsPicks上で主にビジュアルを使ったコンテンツ戦略を中心に活動しています。
現在はインフォグラフィックを活用した記事に加え、この4月からはもう少し「デザイン」の部分をしっかりやっていこうと考え、従来「コンテンツ」という視点で公開していたものを、もう少し拡げたものにも挑戦しています。
―コンテンツ視点だったものを拡げる、というのは?
特にモバイルで顕著なのですが、インターフェースとコンテンツの部分が融合してきていると考えています。
利用者の方は、ここがコンテンツここはナビゲーションと分けてはいないので、作る側の僕たちもそこを分けず、総合的な体験性の提供というものを試験的に進めたいと考えています。
―半年前に入社されて、もともと編集部にはデータビジュアライズやインフォグラフィックの文化が無かったと思いますが、1人で活動していた時との違いなどはありましたか?
そうですね、編集部内には文章中心の記事や紙媒体を中心に活動してきた方が多くて、文章中心の記事とインフォグラフィックの記事は、特にページ構成や内容の部分でアプローチや考え方が違うため、そこの考え方をすりあわせるのに時間を惜しまないことを意識しました。
基本的に編集部メンバーもすごく話を聞いてくれるので、僕が持つ考え方やノウハウをどう融合するか、が大事でした。
―融合させる上で、大変だったことなどはありましたか?
取り扱うデータを収集する手法の部分でありました。
僕はインフォグラフィックを作成する時、一度関係しそうなデータを、余分かもしれないものも全て収集し、そこから取捨選択していく手法をとるのですが、他の方にデータ収集をお願いすると、「あれ、これじゃ足りない。一旦やり直そう」となるケースもありました。
そういう時には、収集されたデータを一度自分の手元で色々加工してみて「こことここにデータの欠落があるのでピンポイントで探して埋めてもらえないか?」という形でやりとりしました。
1人で作成する時は欲しいデータは最初から集まるというか、集まるまで自分が探すのを止めませんから(笑)そういった意思表示や連携を大切にしました。
―櫻田さん個人の中で、働き方や心境に変化はありましたか?
かなり自由な社風なので、あまり心境の変化は無いですね。
強いて言えば会社として記事を公開する日取りや締め切りがありますから、それを守りますという当たり前レベルのものくらいです。
先ほどのデータ収集の話もメールで行う形ですし、必ず常にチームメンバーが膝を突き合わせて議論して、という感じでもないです。
だから「ここまでやればあとは流れでお互い分担できる」というルール作りが大事ですね。
―NewsPicksに入った後も個人で運営されているサイトの更新や、ピクタソンの開催などは継続されていますよね。会社と個人での活動を、櫻田さんの中で線を引いたり意識して分けたりしていますか?
そうですね、NewsPicksは「ビジネス」という軸がありますから、経済やビジネスという文脈で記事を公開するという基本路線があります。
一方、そういう点からは漏れてしまうけど個人では興味があるものをビジュアルシンキングのサイトで公開するというのはあります。
―櫻田さん個人の活動を通じて、実現したいものや継続するテーマのようなものはありますか?
「ビジュアルというものが文化としてしっかり根付き、メディアの中でその表現が生まれて確実に育っていく」というのが考えているゴールで、これは会社とか個人とか関係なく共通しています。
―個人の活動を拝見して、もっとインフォグラフィックを作成する人の裾野を広げたいという思いを感じるのですが。
そうですね、言われてみるとそういうことを周囲から求められて活動をしていますし、インフォグラフィックの利用シーンを増やす、そういうものにお金を払う人が増えること、そして作り手が増えること、という点にはこだわりを持っていたいなと思います。
―グーグルの買収やYcombinatorの投資先など、ITやイノベーション、技術革新が目覚ましい分野を題材として多く扱っている印象があります。こうした題材を扱う体験を通じて何か感じたところなどありますか?
確かにテクノロジー系の題材を扱うことは多くて、日に日に興味が湧いてきているなと感じます。
テクノロジー系の題材を扱ってデータ収集をすると、よく小さなベンチャーが急成長する戦略やストーリーで指摘されている「まずは小さく絞ってスタートし、成長フェーズに入り、その後ある段階から企業買収など大きな動きへ変化していく」という点が本当に共通しているな、という点が見えてきます。
例えば、色々調べてみるとグーグルってそんなに全部自分たちで作っていないのだな、とか。
最もコアな事業である「検索」のところは自分たちでひたすら作り磨く、そのコアを見つけて育てればあとは他の力を加えていけばいい。勿論そんなにシンプルではない部分もあるのでしょうけど、要はコアコンピタンスというものがいかに大事かという事を改めて感じます。
―そうやって得た視点を、他の分野を扱う時にも活用されていますか?
はい、サッカーやスポーツの題材について分析をすることでプレイヤーや監督も重要だけど、マネジメント・経営というものの大事さを再認識しますし、あとデザインって結局全部に関係するなと感じます。
―デザインが全てに関係している、とは?
企業やサービスの発展の歴史を紐解くと、実は細かい部分での機能ではそれほど差が出ているわけではなく、
決定的な違いは広義のデザイン、ブランディング、利用者の使い勝手、全体の体験性という部分で生まれているなと感じます。
一つ例を挙げると、Ycombinatorから輩出された企業での代表格としてAirbnbやDropboxというサービスがありますが、これらのサービスは彼らだけが提供していた機能というものは無く、他社でも出来たはずです。
しかし、実際には機能面ではなく先ほど触れたブランディング、使い勝手、体験性、広義のデザインが大事だという目線を持ち、違いを産み類似サービスに勝ったのではと考えています。
―社内外を通じて、イノベーションを起こしたいとか、世の中を変えたい!という活動をする人と話される機会が多いのではと思います。そうした方たちから何か影響を受けたりしましたか?
社内で出会った、社長の梅田、編集長の佐々木などが話す内容やイノベーションを起こそうという気持ちに触れて影響を受けていますね。
編集長の佐々木に関して言うと、彼は編集長ですから全部を決める権限を持っている。
でもコンテンツ作成時に、彼はデザインについて「自分の意見よりも僕の意向を優先する」っていう決断をしています。
自分の直感や好みよりもデザインの力を信じて任せている。
いいものかどうか、のみで判断しそれを外にも宣言してチーム内でも有言実行しているのはすごいと思います。
―一緒に働いて、編集長はなぜそれを実践できているのだと思いますか?自分が持つ考えやノウハウを優先しないってなかなかできませんよね。
一言で言うと「未来志向だから」だと思います。
これまで得た情報とかノウハウとか、何が得意か、を二の次にして「次はどうあるべきか、次に何をしたいのか」という方向を常に彼は見ていると思います。
―編集長に感化されて、櫻田さん自身も未来志向になってきたと思いますか?
はい、僕はまだまだメディアにおけるビジュアル活用って全然進んでいないと思っています。
ですが、いまはやるべきだと思うことを一つ一つ実行できているので、感化されたというより「ちょうどいい感じ」で気持よくチャレンジできていると感じます。
―お話を伺っていると、非常に充実した日々を過ごしているのだなと感じるのですが、そこまで思える職場、仲間、環境に自分が巡り会えた理由はなんだと思いますか?
僕は、個人サイトの運営なども通じて、僕自身なにができるのかを明確にしていたということと、そして今後なにがしたいのか、を発信していたことがありますが、それに加えて、色々な方と出会う機会があったこと、この3つが鍵だったのではと思います。
そんな中で、ちょうどいいタイミングで佐々木編集長から声がかかった事が決定的でした。
―正直、入社前には色々な方からお誘いがあったのではないですか?
正直ありました、会社を一緒に立ち上げる話とか、本当に色々とお声がけいただいたのですが
僕の中では「メディアでやりたい」という軸がありました。
単発で終わるものではなく、継続的な形でビジュアル活用したコンテンツを、本当の意味で色々と試す気概のある人たちと一緒にやりたいと思っていました。
そんな中で最初、佐々木編集長と話した時に、バシッと意見が合った。
彼とあのタイミングで出会っていなかったら、今も淡々と『ビジュアルシンキング』のサイトを更新していたかもしれないです(笑)
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