2018.04.12 THU 飲食店の予約を通じて、自然と途上国を支援する「チャリティ予約」 ―― 株式会社テーブルクロス 黒田史子
text by : | 編集部 |
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photo : | 編集部,株式会社テーブルクロス |
“「アイデアとは複数の問題を一気に解決するもの」”
これはドンキーコングやスーパーマリオの生みの親、任天堂の代表取締役宮本茂さんの持論です。
「日本国内の飲食店の集客コスト」と「途上国のこどもたちに給食を提供する」この2つの課題を同時に解決するサービスが株式会社テーブルクロスの飲食店予約システム。
食事を楽しむためにテーブルクロスのアプリから予約をすることが、お店にとっては格安の集客手法となり、同時に途上国のこどもたちに給食が提供される。テーブルクロス流の「継続可能な仕組み」について黒田さんにお聞きしました。
■「途上国で働くこどもの姿」と「バイトで知った飲食店の負担」が繋がった
――まずは飲食店予約サービスと社会貢献を繋げた「テーブルクロス」を始めたきっかけを教えてください。
代表の城宝が大学時代に飲食店向け広告営業のアルバイトをした経験と、こどもの頃海外旅行時に「同じ年のこどもが生活のために働いている姿」を見た、この2つの経験が根底にあります。
飲食店向け広告においては一般的に「掛けた広告費の3倍の売上があるか」が基準になるのですが、これが小さな会社や個人経営店舗にとってはとてもリスクのある重い負担だという事を知ったそうです。
そこで、「1人来客あたり一律180円」、初期費用も月額費用も0円の格安完全成果報酬でサービスを提供しよう、というのがテーブルクロスの仕組みです。
――そこにこどもの頃にみた「途上国のこどもたちを支援する」社会貢献の要素が更に入った。
はい、城宝が小学生の頃、家族でインドネシアを旅行した時にほぼ同い年のこどもたちがストリートチルドレンとして暮らしていたことや、生活のために働く姿をみて、無視できない問題だと感じたそうです。
その後アメリカに留学し、現地のNPO団体に参加した際に議論のテーマが「どうお金を集めるか」ではなく「いかに自分たちで継続できる仕組みを作るか」を重視していたことがヒントになったそうです。
――単発で支援するのではなく、サステナブルでなければ意味がない
はい、「途上国のこどもたち」と「負担の大きい飲食店」のどちらか一方ではなく両方同時に支援し、継続的にこの2つの問題を解決し続ける。
これがテーブルクロスのはじまりです。
――2014年6月創業で、約4年弱経ちましたが現時点での利用者数などは?
現在登録店舗数が約6,000店舗、アプリダウンロード数は約28万ダウンロード、現在は大体1か月に1万ダウンロードずつ伸びている状況です。
登録店舗様側は先ほどお伝えした広告費用面でのメリットから導入頂いていますが、それと共に「お客さんが自分たちの店を予約するだけで途上国支援になるのなら」と、サービスのコンセプトに共感された個人店舗オーナーさんが多いと思います。
また、アプリユーザーや登録店舗を増やす以外にチャリティー予約文化の推進プロジェクトとして「エンジェル倶楽部」という活動も展開しています。
――チャリティ予約文化とは?
テーブルクロスで飲食店予約すると、途上国のこどもたちに給食を提供できる。
日常の何気ない予約行為がそのままチャリティになります。
この仕組みは飲食店に限らず、例えば病院、ヘアサロン、ホテルの宿泊や旅行ツアーにも展開することが可能だと思います。
この「日常で行う予約行為を通じて、途上国の支援をしていくチャリティ予約」の文化を一緒に広める事業参加型のファンクラブをエンジェル倶楽部と名付け、精力的に活動すると共に随時会員を募っています。
――アプリ利用だけじゃなくてもっと関わりたい、という方向けのような
はい、各地でランチ会などイベントを実施して、私たちの想いに共感された方々と交流して、応援してもらいながら全国にこの仕組みを拡げるための活動をしています。
■毎日当たり前に給食が食べられる。そのための「年間4千万食」支援
――今後の事業目標は?
いま掲げているのは「2020年末までに、年間4千万食の給食を途上国に届ける」です。
ありがたいことに、現在わたしたちのサービスを通じて飲食店予約をしてもらうことで、月間1万2千食の給食を途上国に提供しています。
かなり挑戦的な目標ですが、これをあと2年で年間4千万食にする。
――現状で月1.2万食×12か月、約15万食ですから、かなり高い目標設定ですね。
はい、この数値は「こどもたち全員が毎日必ず給食を食べられる」規模から算出しています。
わたしたちが途上国に給食を提供する上で提携しているNPO法人様がいて、その先で支援する学校、そこに通うこども全員に毎日欠かさず給食を提供すための数が4千万食です。
――その4千万食に向けて、いま注力している事は?
いくつかありますが、まずはサービスの展開規模です。
現在の登録店舗の約6割が東京なので、これを全国展開していく。
全国各地にスタッフを雇うという手段もありますが、現在は先ほどお話したエンジェル倶楽部の会員を全国に増やし、その方々が導入店舗を開拓したり、アプリの利用ユーザー様を増やす展開を考えています。
ただ、それだけで達成するのは難しいので、もっと企業とのコラボレーションやブランディング強化も必要だと思います。
――コラボやブランディングというのは?
現状言える範囲で、正直アイデアレベルのものもありますが、例えば旅行会社さんとの連動です。
NPO団体を通じて途上国を支援する話をしましたが、実は時々現地に足を運んでいます。
社内のメンバーやアプリの利用者様、飲食店の方やエンジェル倶楽部の会員の方と現地に行き、給食を手渡しして現地のこどもたちと交流するスタディツアーです。
例えばこうしたツアーを大手の旅行代理店さんとコレボレーションする。
それによりもっと興味ある方を広く巻き込むようなアクション、そして一見ハードルの高そうな「途上国支援」を身近に自分が参加するもの、としていく施策が必要だと感じています。
他にも食品やお酒の卸業者さん、おしぼり屋さんなど、飲食店と取引のある業者の方々とも連携を深めていくため、飲食店を紹介いただいた場合に報酬をお支払いする代理店制度も設けています。
■給食が、途上国の教育問題にも貢献する
――実際途上国への給食支援を通じて知る現状や問題意識があれば教えて欲しいのですが。
そうですね。やはり「食べられない環境で育ったこども」がどうなるか?
その先に繋がる課題と共に感じています。
食べられない環境で育ったこどもは、しっかりした学校教育を受けないケースが多いです。
学校に通うよりも家計を助けるため働いたり、そもそも親が学校に通わせなかったり。
すると、教育を受けていないことでその後簡単に「麻薬の売人」や「体を売る」といった選択を特に悪いことだと感じないまましてしまいます。
――勉強してビジネスをするとか、研究者や政治家になろうという発想自体が無い。
はい、そこで「食事」って大事な要素になると思います。
教育が必要だ、と現地に学校を建設しても、それだけではこどもたちが学校に来ない。
勉強するメリットが何かもわからないし、家計を助けるために親の仕事を手伝うことが優先されます。
でも「学校に行くと給食があるよ。ご飯食べられるよ」となればみんな学校に来ます。
親も、こどもに食事を与えてくれるならと学校に行かせる。
じゃあ、せっかく学校来たなら1時間くらい座ってお話聞く?とみんなで勉強する流れが作れる。
――箱だけ作っても人は来ない、行くメリットが大事。給食がその役割を果たす。
そうです。
現地にも世界中にも、途上国の教育支援を行う団体は多いのですが、その多くは資金面の悩みを抱えています。
ですから、テーブルクロスのような仕組みがもっと貢献できるんじゃないか、と考えています。
――そういえば4千万食を「2020年末までに」というのは、東京オリンピックのタイミングを意識しているのですか?
はい。私たちが目指しているのは「自分も美味しいご飯を予約して食べて満足、その予約自体が誰かのためになる」そういう他者貢献の精神が世界の当たり前になる世界です。
なるべく2020年までに国内でアプリユーザーや利用可能な加盟店様を増やせば、海外から訪れる世界中の方が日本での食事を楽しめるのと同時に、「予約すると支援に繋がる」という文化が伝えられると思います。
渡航者によって日本の飲食店の売上が上がるだけでなく、それが日本以外の海外のこどもたちのためにもなるんだよという考え方。
欧米では既に寄付文化が根付いているので「そうか、これが日本の寄付スタイルなのか」と伝えられるようにしていきたいですね。
黒田史子(くろだあやこ) 株式会社テーブルクロス マーケティング部 エンジェル倶楽部室 室長
1991年京都市北区生まれ。滋賀大学経済学部卒業。大学在学中には議員秘書を経験。卒業後は、ITベンチャー企業にて取締役を経験後、株式会社テーブルクロスに滋賀県エリアマネージャーとして参画。2018年からはファンクラブの開拓等を統括する現職務に従事。また、自身の体験を交えた「平成生まれの働き方」というテーマで、経営者団体を始め、企業研修や東京ビックサイトでの働き方改革EXPO等で、講演活動を行う。
インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)
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