2016.04.11 MON 「醸造・発酵食品」市場における科研費獲得金額ランキングTOP50
text by : | 編集部 |
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photo : | shutterstock |
どのようなテーマが共感を呼び、どのような形で投資を集めているのか、世界中の特許/論文、科学技術研究費、ベンチャー投資、クラウドファンディング情報などを集め、独自に分析する本企画。今回は、180の有望成長市場のうちの88番目である「88. 醸造・発酵食品」市場における大学・研究機関別の科研費獲得金額ランキングを発表、さらに注目すべき研究テーマを紹介する。
■全大学/研究機関111、300テーマ中、「88. 醸造・発酵食品」市場における大学・研究機関別(※1)の科研費獲得金額ランキングTOP50(※2)
(※1)研究代表者が所属する大学・研究機関
(※2) 2006~2015年の交付分。2016年4月時点でデータ取得
■注目すべき研究テーマをご紹介
(※)敬称略
麹菌の細胞間連絡の制御機構解明と有性生殖への応用(東京大学 丸山潤一助教 他 / 2470万円)
麹菌は味噌、醤油、清酒など日本の伝統的な食品醸造に用いられている糸状菌(カビ)である。しかしながら麹菌では有性世代が発見されていないため交配育種が不可能であり、複数の優良な性質を備えた麹菌株を育種することが困難である。この研究では、細胞間連絡を制御する分子機構を解明し、麹菌ではまだ見つかっていない有性生殖メカニズムとの関連を見出すことにより、有性世代を発見することを目的として行われている。
酢酸菌「酸化発酵」の分子基盤解析とそれに基づく「酸化発酵」能の開発(山口大学 松下一信教授 他 / 1794万円 )
「酸化発酵」は食酢醸造に古くから産業的に利用されてきた酢酸菌の細胞膜に存在する呼吸鎖電子伝達系によって行なわれる特異な発酵システムである。この研究では、酸化発酵に関与する酸化還元酵素キノプロテインや補酵素、およびその酸化呼吸鎖についての分子基盤を解明することを目的とされた。その結果、酸化反応における電子移動経路の解明、新規な基質酸化反応の発見、細胞内資化代謝酵素の解明、新規な酸化発酵系酵素の発見などがなされた。
微生物機能の多面的活用による新規機能性脂質の創製(京都大学 清水昌教授 他 / 4771万円)
共役リノール酸は不飽和脂肪酸の一種で、脂肪を分解・燃焼する働きがあることからも注目されている。主に乳製品に含まれており、乳酸菌により共役リノール酸が作られる。この研究ではリノール酸から共役リノール酸への変換に関わる一連の酵素系を解明し、乳酸菌による共役リノール酸の生産方法を確立した。さらに、油糧微生物による高機能性な高度不飽和脂肪酸やステロール類の発酵生産技術を確立した。これら機能性脂質は医薬・健康食品の利用に期待される。
■「88. 醸造・発酵食品」市場について
酒・醤油・味噌・納豆・ヨーグルト・チーズ・紅茶など、微生物または酵素による発酵(醗酵)作用を利用して生産される加工食品を発酵食品と呼ぶ。発酵(fermentation)とは、 微生物または食材自身に含まれる酵素の働きで種々の有機物を分解あるいは化学変化させ、人間にとって有用な味や香り、その他の機能を持った産物をつくりだす現象をいい、アルコール発酵や乳酸発酵、酢酸発酵などが知られている。
現在フェーズでは成熟段階、近未来フェーズ(5-10年以内)では初動(公開・公表特許、プロトタイプの公開、製品初期モデルの発表など)、未来フェーズ(10年以上)では成長開始が期待されている。
主な技術要素としては「ビール混濁性判定マーカー」「醤油の抗アレルギー活性」「焼酎粕の血圧降下作用」などがあり、主な技術・製品・サービスの例としては、「前発酵茶」や「ナタ・デ・ココ」「タバスコ」などがある。
また、この市場の主なプレイヤーとしては、キッコーマン、味の素、花王などがあり、180の有望成長市場における主な関連市場としては、「22. がん医療・オンコロジー」「63. 有人宇宙探査・スペースコロニー・スペースラボ」「165. 伝統産業と先端技術の融合」などがある。
astavisionでは、この市場の2015年世界市場規模を5,000億米ドルと推定、2025年世界市場規模を1.3兆米ドルと推定している。
■「88. 醸造・発酵食品」に関するベンチャー・最先端技術などの情報配信サービス
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