二次電池やキャパシタは、正極材・負極材・電解質・セパレータなどで構成され、電極間に電気を蓄え、充放電可能な蓄電体である。二次電池は、電極間の酸化還元反応により電気を蓄える化学電池であり、リチウムイオン二次電池(LIB)やニッケル水素電池など、ノート PC や携帯電話のバッテリーとして利用されている。また、エネルギー密度が高く、航続距離を伸ばせる LIB は、電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の駆動用電源としても使われている。
キャパシタは、一般的にはコンデンサと呼ばれ、電極間の静電気力により電気を蓄える物理電池であり、一時的に電気を蓄え、電圧を安定させるなどを目的とした電子部品に使われることが多い。キャパシタの中で、活性炭を使う正極と負極の表面に電子が吸 着する現象を利用して電気を蓄えるキャパシタは電気二重層キャパシタ(EDLC)と呼ばれる。EDLC は化学電池に比べて容量を増やすことが難しいが、充放電が速く、瞬間的に大きな力を生み出せるなどの特徴を持ち、複合機の省エネモードからの復帰電源、自動車の減速時の回生エネルギーの蓄電用などに使われている。
目次
はじめに
アスタミューゼ社のご紹介
弊社は世界の無形資産・イノベーションを可視化し 社会課題解決と未来創造を実現する、データ・アルゴリズム企業であり、
イノベーション投資の流入に加え、イノベーターの流れを機械的に分析し、データに基づいた成⻑領域を定義している。
本レポートのご紹介
アスタミューゼでは今芽吹きつつある黎明期の技術シーズや今後 10 年から 20 年 のスパンで大きく開花すると期待される初動段階の技術市場に重点を置きつつ、生活文化の中に根 付く技術にも光を当て、総じて未来を創る技術分類の網羅に取り組んできた。
このために、国内第一線の知を結集して全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、展示会等の情報並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、136 の有望成長市場と、40 の 未来技術を選んだ。主にビジネス視点で策定された有望成長 136 市場を対象にしており、本レポートは、『二次電池・全固体電池・キャパシタ』の未来推定に特化した内容となっている。
事業会社に向けては、イノベーションに関わる経営課題を中心に戦略構築支援/実行支援を実施しており、
・自社の既存事業の優位性がいつまで続くかわからない
・既存事業の成長が踊り場にきているので、使っている技術 を別で活かせる可能性を探りたい
・既に着手している研究開発を続けるべきどうか、もしくは 自社開発ではない方法があるかを含めて検討したい
といった企業のよくあるお悩みを解決している。
二次電池・全固体電池・キャパシタの現状
菅義偉首相(当時)は、2020 年 10 月の 203 臨時国会の所信表明演説において、温暖化ガスの排出量について 「2050 年までに全体としてゼロにする」と宣言した。全体としてゼロにするとは、温暖化ガスの排出量と吸収量を同じにし、排出量を実質ゼロにする「カーボンニュートラル」と同じ意味である。地球規模で気候変動が進む中で、2015 年 12 月に第 21 回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)において、パリ協定が採択された。当該協定では、世界の気温上昇を産業革命前と比べて 2 度未満、できれば 1.5 度 以内に抑えることをめざしており、そのためには、2050 年ごろに温暖化ガスの排出を実質ゼロにする必要があるとされる。菅首相のカーボンニュートラルの目標提示は、パリ協定の目標実現のために日本も積極的に協力することを示したものといえる。
日本のカーボンニュートラル目標は、一義的には気候変動に対応するためだが、経済政策の意味もある。菅首相は「グリーン」と「デジタル」を経済成長の重点分野と考えており、太陽光発電、蓄電池、洋上風力発電など再生エネルギー関連事業に取り組む企業を支援する。また、脱炭素効果がある製品の生産設備や、製造工程で発生する温暖化ガス排出量を減らす設備を導入する企業について、税制面で優遇し、カーボンニュートラル関連事業を日本全体で拡大し、経済成長につなげ、雇用創出も狙う。
今後の見通し・将来性や展望
全固体電池は電解質が固体であり、発熱、電解質の液漏れ・凍結・揮発の危険性がなくなることで、高い安全性が確保できるだけでなく、電池セルの積層化による高エネルギー密度化や高電圧化が可能であると期待され、メーカーだけでなく国のプロジェクトを含めて日本で多くの開発が進んでいる。 2020 年 4 月 1 日にトヨタ自動車とパナソニックは、車載用角形電池事業に関する共同出資会社を設立し、車載用の高容量・高出力角形リチウムイオン電池、全固体電池および次世代電池の開発・製造に関する事業を開始し、車載用全固体電池の実用化と量産に向けた準備を進めている。車載用としては、航続距離に直結する高エネルギー密度の実現に向けた研究がいち早く進む硫化物系の全固体電池が、有力視されている。車載用途レベルのサイクル寿命や出力が不要な小型電子デバイスなどに対しては、村田製作所や TDK などが酸化物系材料を使う全固体電池の量産開発を発表しており、今後、5~10 年程度で様々な分野で全固体電池の実用化への動きが加速していくと予想されている。新エネルギー・産業技 術総合開発機構(NEDO)は、電気自動車(EV)に搭載する蓄電池のリチウムイオン電池から全固体電池への技術シフトが 2020 年前半に起こるとのロードマップを描いており、まず硫化物系が 2020 年前半から普及し始め、2030 年くらいから「先進硫化物系」あるいは「酸化物系」の全固体電池にシフトするとみている。硫化物系の材料は空気に触れるとガスが生じる課題があり、酸化物系は性能向上により、車載向けにも採用される可能性もある。
キャパシタの技術革新も進む。キャパシタの中でエネルギー密度を高めるなどの性能向上により、 化学二次電池の代替用としても期待できるキャパシタが、スーパーキャパシタ、ウルトラキャパシタと呼ばれる。これら高性能キャパシタとして、電気二重層キャパシタ(EDLC)およびリチウムイオンキャ パシタが、主に研究、実用化されている。キャパシタは全般的に瞬間的に大きな力を出すが、エネルギー密度を高めて容量を増やすことが苦手とされている。EDLC も化学二次電池ほどのエネルギー密度を実現できず、製品への応用は限定的だが、充放電サイクル耐久性が高い、使用温度範囲が広い、充放電が高速である、などの特徴を生かした用途開発が始まっている。例えば、充放電の速さを活用して瞬時の電力調整を必要とするバーチャル・パワー・プラント(VPP)発電所向け機器としての需要が見込まれている。VPP は太陽光発電などの再生可能エネルギー、蓄電池、電気自動車(EV)などを一括管理して、1つの大規模な発電所のように機能させる仕組みである。
近未来 2030年の市場規模予測
アスタミューゼ社による『二次電池・全固体電池・キャパシタ』現在の世界市場規模推定と近未来の世界市場規模予測。
2022年には推定897億米ドル だったものが、2030年には1,626億米ドル になると予測している。
スタートアップ投資動向と投資額
二次電池・全固体電池・キャパシタの2010 年から 2019 年の 10 年間における世界のグラントの資金流入額は総額 $540M である。
本レポートでは、
・世界のスタートアップ設立社数と被投資額の累計/推移
・グラント採択数と総配分額ランキング
・世界のグラント配分額上位25テーマ
・日本のグラント配分額上位25テーマ
を提供している。
現在の主要企業
本レポートでは、二次電池・全固体電池・キャパシタ分野において、現時点で保有する技術が総合的に優位な企業を各種特許指標から評価し、ランキング形式でリスト化して提供している。
主なプレイヤーとして、
国外では、
・LG Chem Ltd.
・Samsung Electronics Co., Ltd
国内では、
・株式会社村田製作所
などが含まれ、そういった
上位企業の保有する特許の中で、特に競争優位性が高い特許の概要と、最高エッジ指数での定量的な評価を記載している。
最新の技術開発具体例
本レポートでは、二次電池・全固体電池・キャパシタにおける最新の技術開発事例を紹介している。
二次電池・全固体電池・キャパシタの未来予測・将来性
未来の構成要素
本レポートでは、二次電池・全固体電池・キャパシタに関連する・パワー密度
・温度特性
・重量エネルギー密度
・エネルギーバックアップ
・劣化判定
・触媒
・非接触給電
などの技術要素と、
そういった様々な技術の進化、新しい可能性の発現、企業の把握すべき範囲を記載している。
未来のストーリー想定
本レポートでは、近未来に、全固体リチウムイオン電池が普及し、次世代電池である革新型蓄電池の開発が進展する二次電池・全固体電池・キャパシタについて、
未来のトレンドとして想定し得るストーリーを記載している。