認知症とは、世界保健機関(WHO)による国際疾病分類第 10 版(ICD-10)によると、「慢性あるいは進行性の脳疾患によって生じ、記憶、思考、見当識、理解、計算、学習、言語、判断など多数の高次脳機能障害からなる症候群」と定義されている。認知症には様々な原因疾患や病態が含まれており、アルツハイマー病、血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症などがある。これらの中には根本的な治療が困難なものが多いが、血管性認知症は脳梗塞や脳出血、クモ膜下出血などが原因で発症するため、高血圧や糖尿病、脂質異常症(高脂血症)などの基礎疾患を治療することで、 発症予防や進行抑制が可能である。
一方、神経変性疾患とは、血管障害や感染症、中毒などの明確な原因がなく、神経細胞が減少・死滅してゆく疾患群を指す。発症や進行は緩徐であるが、神経細胞は再生能を持たないため不可逆的に進行し、最終的には重篤な病態に至るものが多い。疾患毎に、特定の解剖学的部位(大脳・基底核、小脳、脊髄、末梢神経など)や特定の種類の細胞が選択的に障害を受けるが、その原因やメカニズム は十分に解明されていないものが多い。
目次
はじめに
アスタミューゼ社のご紹介
弊社は世界の無形資産・イノベーションを可視化し 社会課題解決と未来創造を実現する、データ・アルゴリズム企業であり、
イノベーション投資の流入に加え、イノベーターの流れを機械的に分析し、データに基づいた成⻑領域を定義している。
本レポートのご紹介
アスタミューゼでは今芽吹きつつある黎明期の技術シーズや今後 10 年から 20 年 のスパンで大きく開花すると期待される初動段階の技術市場に重点を置きつつ、生活文化の中に根 付く技術にも光を当て、総じて未来を創る技術分類の網羅に取り組んできた。
このために、国内第一線の知を結集して全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、展示会等の情報並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、136 の有望成長市場と、40 の 未来技術を選んだ。主にビジネス視点で策定された有望成長 136 市場を対象にしており、本レポートは、『認知症・神経変性疾患』の未来推定に特化した内容となっている。
事業会社に向けては、イノベーションに関わる経営課題を中心に戦略構築支援/実行支援を実施しており、
・自社の既存事業の優位性がいつまで続くかわからない
・既存事業の成長が踊り場にきているので、使っている技術 を別で活かせる可能性を探りたい
・既に着手している研究開発を続けるべきどうか、もしくは 自社開発ではない方法があるかを含めて検討したい
といった企業のよくあるお悩みを解決している。
認知症・神経変性疾患の現状
近年、分子細胞学や分子遺伝学の進展により、疾患に関連する遺伝子やタンパク質が同定され、分子病理が明らかになってきている。タンパク質が正常な立体構造をとる過程において、折り畳みに失敗 (ミスフォールディング)し、分解を免れたミスフォールドタンパクが凝集して神経細胞内に蓄積することが明らかとなり、それらの神経変性疾患はコンフォメーション病(Conformation Disease) と名付けられている。
最も頻度が高い認知症であるアルツハイマー病は、高齢化が進んでいる先進各国では国家的課題として取り組まれている。画像診断バイオマーカーとして ADNI(Alzheimer’s Disease Neuroimaging Initiative)というコホート研究が北米や日本で行われている。また、2011 年 1 月に米国のオバマ大 統領は国家アルツハイマープロジェクト法(NAPA)に署名し、2025 年までにアルツハイマー病の予防と効果的な治療の実現を目指している。
今後の見通し・将来性や展望
国立長寿医療研究センターの柳澤勝彦所長を中心とした研究グループは、アルツハイマー病の原因物質であるアミロイドベータ(Aβ)-PET 検査結果を基準にしてバイオマーカー探索を行い、 APP669-711/Aβ1-42 の強度比が変わることを 2018 年 2 月に Nature 誌に発表した。この知見を基に、長寿医療研究センターと島津製作所は共同でアルツハイマー病をスクリーニングする血液分析法を開発し、早期のアルツハイマー病を血液数的から高精度に予測することが可能となった。これにより、アルツハイマー病の治療薬・予防薬の開発が加速していくものと期待されている。
また、上記のような医学的な研究や治療薬・治療法の開発など医療面での進展がある一方で、認知症や神経変性疾患における診断や介護に対して、人工知能(Artificial Intelligence, AI)やもののインターネット(Internet on Things, IoT)の活用など医療外のアプローチも進められている。
近未来 2030年の市場規模予測
アスタミューゼ社による『認知症・神経変性疾患』現在の世界市場規模推定と近未来の世界市場規模予測。
2022年には推定10,991億米ドルだったものが、2030年には17,859億米ドルになると予測している。
スタートアップ投資動向と投資額
認知症・神経変性疾患の2010 年から 2019 年の 10 年間における世界のグラントの資金流入額は総額 $15,000M である。
本レポートでは、
・世界のスタートアップ設立社数と被投資額の累計/推移
・グラント採択数と総配分額ランキング
・世界のグラント配分額上位25テーマ
・日本のグラント配分額上位25テーマ
を提供している。
現在の主要企業
本レポートでは、認知症・神経変性疾患分野において、現時点で保有する技術が総合的に優位な企業を各種特許指標から評価し、ランキング形式でリスト化して提供している。
主なプレイヤーとして、
国外では、
・Roche Holding AG
・Merck KGaA
などが含まれ、そういった
上位企業の保有する特許の中で、特に競争優位性が高い特許の概要と、最高エッジ指数での定量的な評価を記載している。
最新の技術開発具体例
本レポートでは、認知症・神経変性疾患における最新の技術開発事例を紹介している。
認知症・神経変性疾患の未来予測・将来性
未来の構成要素
本レポートでは、認知症・神経変性疾患に関連する・ 画像診断
・体液診断
・脳腸相関・HPA 軸・マイクロバイオーム
・遺伝子治療
・幹細胞を活用した治療法
・VR/AR
・医療/介護ロボット
などの技術要素と、
そういった様々な技術の進化、新しい可能性の発現、企業の把握すべき範囲を記載している。
未来のストーリー想定
本レポートでは、近未来に、先進国での高齢化が一段と進む一方で、遺伝子治療や再生医療の進歩によ
り、根治的治療法や新規治療薬の開発が進展する認知症・神経変性疾患について、
未来のトレンドとして想定し得るストーリーを記載している。