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今からでも遅くない!各産業のゲームチェンジャーとなりえる量子技術の導入・R&D投資は最新萌芽技術の選択が決め手⑧(全8回)~世界の研究開発動向と有望技術解説~

text by : アスタミューゼ㈱テクノロジーインテリジェンス部 川口伸明、米谷真人、*福永元

第8回 量子材料・量子派生技術のこれまでとこれからのプレイヤー


<目次>
・量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術による量子技術と異分野の融合技術の動向と活用
・世界の量子材料・量子派生技術研究開発動向
―技術領域別グラント額(推計)の年推移
―技術領域別グラント額(推計)の年推移
―量子コンピュータ全体のグラント資金流入額機関 世界上位5大学
―日本国内のグラント資金流入額上位5研究
・量子材料・量子派生技術分野別研究開発動向
(1)量子材料技術
(2)量子物理・理論
・量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術に関する出願済み特許に見る各国の技術動向
―世界の特許出願状況
―世界の特許出願動向
―「量子材料・量子派生技術全体」特許出願ランキング


 


量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術による量子技術と異分野の融合技術の動向と活用


量子材料(Quantum materials)とは、量子状態を精密制御することで機能を発現する物性・材料であり、メタマテリアルも含む広義の「材料」を示す言葉として使われます。近年のナノテクノロジー技術の発展に伴い、1原子単位の制御が可能になってきたことや、位相幾何学(トポロジー)の数学的概念が導入され、新たな量子物質の探索や現象理解に関する研究が急速に進んできたことで、先進国を中心として国際競争が激化しています。次世代のデバイス開発や、今までにない新たな物性をもつ材料の創成など、様々な成長産業における「ものづくり」の高付加価値化につながる有望な技術領域として位置付けられます。したがって、ここまで示してきた量子コンピュータ・量子センサー・量子通信の領域への用途・応用のみならずこの量子物性から派生した新たな用途領域へと派生することも期待される、未来の量子応用技術の根幹を支える領域となります。

量子派生技術とは、この量子基盤技術と既存の様々な技術とを融合・連携させ、これまでの重要な3領域および新たなまだ見ぬ領域へと応用を派生展開させた技術領域であり、派生技術の例としては、量子アルゴリズムに着想を得て古典アルゴリズムの高速化に応用した量子派生アルゴリズム技術や、量子通信ネットワーク構築のために量子情報を記録させる量子メモリ(Quantum Memory)・量子中継器(Quantum Repeaters)、微弱な環境要因により量子の変化を計測する量子センサー(Quantum Sensor)、量子技術と生命・医療等とを融合し、生命現象を細胞レベルで機能を解明して医療技術や環境技術の革新につなげることを目指した「量子生命技術」(Quantum Life Science)、などが挙げられます。他にも、活性層にナノメートルサイズの半導体量子ドットを用いた「量子ドットレーザー」(Quantum Dot Laser)は従来半導体レーザーを凌駕する特性を有し、これまで想定できなかった新市場の開拓に向けた量子技術の開発が進んでおり新たなイノベーションが見込まれます。

量子材料の基盤技術はいずれも将来の産業波及効果が高い技術領域であるが、その中でも注目される量子材料の具体例として、グラフェン等のトポロジカル量子物質は、高効率なスピン・電荷変換等の実現を通じて、省エネデバイスや新物性材料等への応用が期待される物質材料であり、超低消費電力デバイスや、新方式の量子コンピュータの実現への応用研究が進められています。また、炭素が抜けてできた空孔(V)と窒素(N)の対からなるNV中心と呼ばれる不純物欠陥をもつ人工欠陥ダイヤモンド(NV中心)は、一つ一つのNV中心がスピンを生成室温で保持・操作・検出できるなどの特性から、磁場などの超高空間分解・超高感度センサー,量子情報素子、バイオマーカー等への応用も期待されています。このような量子状態が安定化する特性を利用した応用分野としては、量子メモリ、量子中継器などがあり、量子暗号通信の課題の一つである通信距離の短さを、安定した量子ビット中継器として活用し、大規模量子ネットワークの実現を目指した研究開発が進められています。量子派生技術としては、例えば光量子である単一光子の生成とその検出技術の応用による高精度のイメージング技術や、単一の量子状態の生成とその磁性の検出により、地磁気や生体の微小磁気を解析して地球の活動や生命の活動に対する知見を得ることなどが可能となります。この磁場を検出する機構の小型化によるMRIやNMR技術展開したハンディなMRIやNMRなどの応用可能性についても議論されています。また、これらの量子論・量子センシングにより生命現象を解明しようとする量子生命技術においては、高感度・高精細な毛細血管や細胞レベルでの生命現象の細部を観察・理解したり、MRIの感度を大幅に向上・小型化により、眼科疾患や動脈硬化など様々な疾患の超早期診断が可能性も提案されています。また、これまで計測できなかった細胞内部および細胞組織のパラメータを取得することで、老化状況や、がんの発症前予測など新たな診断技術など、健康長寿社会の実現につながる技術も開発されています。また、高精度の量子センサーによる化学物質の検出により麻薬・麻薬・爆発物の高感度検知によるセキュリティ技術の高度化や、量子ドットなどを活用した人工光合成の効率を飛躍的に向上させる環境技術の革新を目指す研究もあり、量子材料の要素技術から量子派生技術まで、幅広い研究投資が各国の国家プロジェクトとして、研究開発の投資が拡大しています。


量子材料・量子派生技術研究開発動向


量子材料・量子派生技術の近年の動きとしては、数学的な概念を用いて、超電導や層状磁石の電子の振る舞いを統一的に説明する理論を構築した功績から2016年に「物質のトポロジカル相とトポロジカル相転移の理論的発見」でノーベル物理学賞を米ワシントン大学のデビット・サウレス氏など米国の3氏が受賞し、量子材料の理論面での進展に伴い、超伝導や層状磁石などの材料や応用面での研究が加速し始め、2017年に米マイクロソフトが「トポロジカル物質」をプロセッサーに使った量子コンピュータ技術を発表するなど、原理からアプリケーションまでトポロジカル材料の研究が急速に加速しました。日本でも2019年に理研と東京大学らがトポロジカル絶縁体と超伝導体を接合したトポロジカル超伝導体の界面における整流効果に関する発表を行うなど、研究が活発に行われています。またダイヤモンド材料に関しては、2015年のNTT物性科学基礎研究所がピンクダイヤ(NV中心)で、生体分子など様々な物質の構造や磁気的性質が観察できる可能性を理論計算で求め発表したのに続き、欧米、豪州、中国など世界各国でもダイヤNVセンタの注目が高まり、様々な大型研究プロジェクトが発足し、基礎研究からセンシング応用まで研究が活発化し、最近では2019年には京都大学、産総研、量子科学技術研究開発機構(量研)などでダイヤモンド量子センサー開発に関する発表が相次ぐなど、量子材料自体の研究開発、センシングでの応用研究のいずれも急速に活発化しており、これら材料分野での基盤技術の革新が共にコンピューティングなど量子応用技術全般へつながっていくものと考えられます。

世界の量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術に関連する研究投資(グラント)は、2009年以降の積算値で順調に伸びており、量子物理・理論や量子材料の基盤技術投資を軸としながら、コンピューティングやセンシング・イメージングなど、各国の大企業とシナジーが比較的強い応用領域へも研究投資が増えてきています。米国では量子コンピュータや量子ネットワークの研究で先行するMITに加え、UC群においてはトポロジカル材料、磁性体、スピン流、センシングなど、基礎から応用まで量子技術の幅広いテーマに渡って研究開発への投資がなされています。中国では中国科学技術大や复旦大を中心にスピントロ二クス材料を利用したイメージング応用技術開発や、上海交通大学においてトポロジカル量子材料や、フェムト秒・アト秒などの極短パルスを応用したイメージングなどへの大型研究投資が国家戦略として進められています。

米国、欧州、中国においても研究開発が活発化する中、量子材料・量子派生技術領域においては、日本国内の大学・研究機関で質の高い研究がおこなわれており、人材層の厚みもあり、国際競争力を保持していると評価されています。こうした、日本の強みを持つ技術領域を基盤として、量子技術の中でも比較的実用化の早い技術とされている量子センシング領域や、これを応用した量子生命技術などへ先駆けて取り組み、高齢化の進展や医療費の高騰といった日本の社会問題の解決につなげていくことができれば、同様の社会課題をもつ他国にビジネス展開できる可能性もあり、この材料基盤技術を軸とした研究開発投資と人材の育成とを目的として企業の積極的な参入と産学の協業がより増えることが重要であると考えられます。

技術領域別グラント額(推計)の年推移

(2009-2018:USD換算で2009年からの積算値推計)

技術領域別世界研究費推計ランキング

US$ 18.6Bil (2009-2018年積算推計)

用途にとらわれない新規量子材料の幅広い開発と量子物理・理論の深化の両面による量子技術領域の拡張と異分野との融合がキー


世界の研究資金(グラント)において、量子材料・量子派生技術全体6700研究テーマでは、量子コンピュータ同様、英国が領域毎に研究センターを主要大学に設置して包括的な量子技術研究を行い、応用展開までを見据えた産学連携のための研究ハブを設置し、上位研究費テーマに並んでいる。英国では量子コンピューティング含めた量子技術の応用を視野に入れたダイヤモンドNVやトポロジカル材料などの研究センターをオックスフォード大、バース大、ケンブリッジ大に設置し、量子センサーや量子イメージングに特化した研究センターはバーミンガム大、グラスゴー大に設置するなど、10年以上を見据えた研究ソサイエティの形成が行われている。一方、米国でも基礎研究・応用研究含め幅広い投資が、この量子材料・量子派生技術領域においてもバランスよく進められている。中国では中国科学技術大や复旦大を中心にスピントロ二クス材料を利用したイメージング応用技術開発や、上海交通大学においてトポロジカル量子材料や、フェムト秒・アト秒などの極短パルスを応用したイメージングなどへの大型研究投資が国家戦略として進められています。

一方、日本の研究1500テーマを対象にした科研費の上位は、比較的大きな研究費を量子基盤技術に投資しており、特に東京大、理研や、京都大などを中心に、量子ドット/スピントロ二クスの要素技術や、フェムト秒アト秒レーザー開発と応用、トポロジカル絶縁体・超伝導体に関する基盤技術などに大きな投資を行っている他、日本の世界をリードする光格子時計やセンサー用途のダイヤモンド材料に関するセンシング技術など、これらが日本の量子基盤技術の強みになっています。一方で、具体的なセンサー用途や生命科学への応用に特化した研究は少ない状況であり、諸外国に比べて生体用途など異分野を含めた幅広い応用にアプローチする研究への研究開発投資は少なく、この点は具体的な用途展開案と市場をもつ企業との共同研究がより促進される研究体制の整備が重要と考えられます。

量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術全体のグラント資金流入額機関 世界上位5大学

(グローバル(6700研究テーマ))

日本国内のグラント資金流入額上位5研究

(科研費:2009-2020年(1500研究テーマ))

量子材料・量子派生技術分野別研究開発動向


量子材料・量子派生技術領域の主要2領域である、(1)量子材料、(2)量子物理・理論についてのグローバルでの投資額上位の研究課題を示しています。既に、上記の研究センター・研究ハブの設置の中には、網羅的にこれらの課題を包括しているものがおおく、上位としてリストアップされているものについては課題の内容は割愛しているが、これらから各領域における規模の大きな研究領域が把握できます。

(1)「量子材料」グラント資金流入上位5研究内容

(グローバル720研究テーマ)

量子材料・量子派生技術に関連した世界全体での720研究テーマにおいては、スピン量子を生成する系として超電導材料以外にも半導体量子ドットなどの量子のデバイス実装が可能な系の提案を目指す研究や、新規の磁性材料における量子状態の観測と制御技術の確立に関する研究が多く、日本が従来から先進的な技術を持つ磁性材料や超電導材料技術、計測・センシングさらには半導体デバイス技術での活用が期待でき、これまでの材料・半導体・センシング関連のプレイヤーが貢献できる領域と考えられます。

(2)「量子物理・理論」グラント資金流入上位5研究内容

(グローバル4800研究テーマ)

量子物理・理論においては、光量子のもつれや量子自体の計測、フォトニクス結晶、強磁場・磁性材料など量子技術の基盤にかかわる大型研究施設の整備や研究所の設立など、研究基盤環境の構築に関する大型投資が各国で進んでいる。光学的なイメージング・センシングは日本がもともと保有する強い技術のため、量子材料の応用・派生技術として日本のオプティクス・イメージングデバイス技術やセンシング技術を保有するプレイヤーが主要プレイヤーになりうる可能性を十分に秘めた領域で、積極的な企業からの研究投資と用途開発により技術の急速な進歩と実用化が期待されます。

量子物理・理論領域は量子計算科学や計測・センシング応用全般に波及する可能性のある基盤的な技術領域であり、高度な計測機器・装置を要する大規模設備が必要な基礎研究領域です。したがって、大規模な研究投資を基礎研究に対して行っている米国での投資が優位にあります。また、量子材料や量子センシングに関する研究に関しては日本にも比較的強みがあることから、世界的競争の動向も視野に入れた戦略的な投資を行い、人材育成も含め量子技術のさらなる研鑽が必要です。また、基礎研究での共同研究に企業も参入することで、新奇の量子材料の特性を早い段階から把握して自社技術化することで、用途開発を世界に先駆けて取り組むことができるため、企業とアカデミアの共同開発が重要な領域でもあります。比較的応用への障壁が低い量子センサーにおいては、基礎研究からの新規量子系の応用開発が直接出てくる可能性を期待し、英国などでは産学連携体制の構築を加速しています。日本においても量子センサーの材料や作製技術に強みをもっていることから、より一層の産学連携体制の構築に加え、人材面も含めた技術基盤への研究開発や整備を促進していくことが重要であると考えられます。


量子材料・量子科学理論・量子生命科学・量子派生技術に関する出願済み特許に見る各国の技術動向


以下に「量子材料・量子派生技術全体」の特許出願動向について、関連特許56か国、WO、EPでの出願特許、5382件より集計した結果を、出願数上位の国および機関(グローバル)について示しました。出願人・譲受人の国としては、中国からの出願が圧倒的に多い状況で、量子技術でしのぎを削る米国、英国は比較して大きな優位性をとれてない状況です。また日本でも特に大手企業を中心に出願が先行していますが近年は横ばいから微増の傾向です。出願先の国としては、中国が圧倒的な中で米国も比較的多いが、中国を含め国内出願とWOへの出願が多いフェーズです。今後、具体的な市場が立ち上がる段階で、国際出願への移行が増えてくる可能性があります。自国ではない企業が出願する国際出願の件数としては、米国への場合が最も多く、中国への場合も拮抗しており、また同程度のWOへの出願があります。一方で、日本からの出願は量子コンピュータ技術同様に、2010年くらいまでは世界トップクラスの出願数でしたが、近年は中国、米国の出願増加に対して日本は出遅れている傾向にあります。

世界の特許出願状況

(56か国、WO、EP公報(5382件)対象出願年:2001-2020)

世界の特許出願動向

(譲受人国別/出願年:2001-2018)

特許件数としては、量子光学、量子センシングから量子通信にまで用いられる「光子検出器」に関する基盤技術・材料技術を数多く保有するSTMicroelectronicsが首位となっています。日本でも量子センシング・量子イメージング技術に関係するCT・MRIや放射線治療機器の技術を持っている日立、東芝、がそれに続き、やはり同分野の技術を保有するPhilips、Siemens Healthineersといった世界の大手企業が近い件数で並ぶ形です。また、台湾の世界的な半導体製造ファウンドリであるTaiwan Semiconductor Manufacturingも、光子検出器や磁気検出やスピントロ二クスに関する技術を多数出願しており、本領域の応用分野として最も関連の深い半導体や磁気イメージングを扱う企業が量子デバイス開発を牽引している傾向が読み取れます。また、研究所や大学からの出願としては、米国のMITが基盤技術から量子計算機を構成するハードの要素技術まで幅広く出願していることから件数が最も多く、次いでスイス最大の自然科学・工学の研究センターであるポール・シェラー研究所(PSI)が続くが、日本の科学技術振興機構、東北大学、情報通信研究機構、産業技術総合研究所においても光子検出器、スピントロ二クスの要素技術や量子イメージングなどの技術で多くの出願があります。大学個別として欧米の大学が上位にランクインしていますが、各研究機関とも特定の要素技術に集中した出願が多いことから、日本が優位に立てる領域が十分あると考えられ、出願ポートフォリオ戦略を明確にしてある程度の束での出願をしていくことは、今後の本領域での主権を握るという点でも重要と考えられます。

「量子材料・量子派生技術全体」特許出願上位

(JP/US/EP/WO公報より集計)

また、そのうちの主要出願である、日本、米国、欧州(EP)、WO(PCT)、での特許公報2789件を対象に、特許の被引用履歴に基づいたアスタミューゼ独自のスコアリングを行いました。出願件数上位群であったTaiwan Semiconductor Manufacturing、東芝に加え、米国の製薬・ヘルスケアカンパニーであるABBOTT LABORATORIESなどもスコアリング上位となり、量子センサー、量子イメージングの基盤技術であるスピントロ二クスに関する要素技術や量子技術全般につながる光子検出に関す素技術のスコアが全般的に高く、これらの技術領域で有望な特許を保有するプレイヤーが量子材料・量子派生技術領域においても中心的プレイヤーになる可能性が高いと考えられます。他にも、センサー用途で最近注目される窒素空孔(N-Vセンタ)ダイヤモンド材料の技術は、ダイヤモンドを扱う最大手企業のDeBeers傘下の合成ダイヤモンド企業であるelement sixが特許の質・量ともに高い水準にあり、センサー用途のダイヤモンド材料を提供する次期有力プレイヤーとなる可能性が高いと思われます。また、豪州のメルボルン大はこのダイヤモンドを用いた量子センサーを生体用途に適用する特許を2010年付近に出願しており、件数は少ないですが最有力特許を持つプレイヤーの一つです。量子材料分野は、トポロジカル材料や(N-Vセンタ)ダイヤモンド材料の様に、近年急速に進展しており、まだ今後も新たな発見が期待される分野です。これら量子材料の研究が進むのと並行して、量子センシング・量子センサー技術などの応用デバイスでも有望な特許を保有するプレイヤーが今後の中心的プレイヤーになる可能性が高いと考えられます。

量子材料・量子派生技術の領域は、量子コンピュータ・量子センサー・量子通信の領域への用途・応用のみならずこの量子物性から派生した新たな用途領域へと派生することも期待される、量子応用技術の根幹を支える領域であり、様々な成長産業における「ものづくり」の高付加価値化につながる有望な技術領域です。スピン流材料、ダイヤモンド材料やトポロジカル量子材料の進展が、センサー、イメージング、量子計算機のハードウェアや量子通信など幅広く量子応用・派生技術として発展していく可能性が期待できます。日本では長年にわたる基礎研究の積み重ねにより、世界的にも競争力をもつ領域であることから、量子基盤技術・応用の両面において、既に日本の企業が持つエレクトロニクスやものづくり全般にわたる技術の強みを生かし、産・官・学の連携を通じて応用面でより世界に先駆けた技術を生み出すべく、人と技術の交流を基にしたコミュニティを形成する積極的な研究開発投資を行うことにより、世界をリードする基礎・応用技術を有する研究開発連合として台頭することが期待できる領域です。

(アスタミューゼ㈱テクノロジーインテリジェンス部 川口伸明、米谷真人、*福永元)

 

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