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(インタビュー前編)プロトスター株式会社 栗島祐介さん 「時価総額1兆円超え”ムーンショット企業”創出のため、挑戦者支援インフラを創る」

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多くの企業を輩出した起業家コミュニティ「Supernova」は2017年1月に経営陣によるMBO実施、社名とコミュニティ名をそれぞれ「プロトスター株式会社」「StarBurst」へと変更した。
宇宙、エネルギー、金融、建築土木、教育・・・産業構造や社会構造そのものをブレイクスルーさせる可能性を有し、事業化に膨大な時間と資金を要するHardTech領域の支援に向けた理想的なコミュニティを追求し続けるプロトスターCOO栗島さんにお話を伺いました。


■まだ日本では、ハードテック領域への挑戦者・支援者どちらも層が薄い。


ープロトスターでは起業家コミュニティStarBurstに加えて、新たに「顧問」や「サロン」サービスを開始しています。参加資格や基準はどういったものでしょうか?

起業家コミュニティStarBurstの場合「ムーンショット企業(※時価総額1兆円超え)の創出のために、プロジェクトを長期的にやり遂げる素養や軸を持っているかどうか?」という基準を設けています。

特にStarBurstのテーマでもある、HardTech(ハードテック)領域。
産業や技術の構造、社会構造的にブレイクスルーを必要とする領域に対して、構造を理解するための実践と思考を繰り返しながら挑戦できるかを重要視しています。

一方で新たに始めたプロトスターサロンでは、起業家に限らず投資家や大企業の新規事業担当者等のスタートアップ領域のプレイヤー全般に対して、その時々のトレンドに沿った”限定イベント”を提供しています。プロトスター顧問は創業フェーズを乗り越え、新たに資金調達や組織作りに挑む起業家に対して伴走型支援をするものです。

参加基準の厳しさで言うと、サロン<顧問<StarBurstの順になると思います。

 

ーStarBurst選抜スタートアップのインフォステラ社などは、ハードテック領域のわかりやすい例ですね。

そうですね、インフォステラは衛星通信インフラのクラウド化を目指しており、人工衛星のための通信機会を効率よく配分することでコストを下げ、使い勝手を高める試みをしています。将来的には、地上局設備の初期投資なしに、人工衛星との通信機会(パス)を提供しようとしています。

 

ープロトスターの各サービス、特に起業家コミュニティStarBurstを考えるにあたり、参考にした海外の仕組みなどはありますか?

海外事例についてはそれほど細かく情報収集することはしていません。
Ycombinatorについて翻訳された馬田さん(東京大学 本郷テックガレージディレクター)の資料、Andreessen Horowitzの資料程度です。
基本的に海外事例をそのまま日本市場に当てはめても上手く作用するか懐疑的でしたので、本質に触れていそうなものに目を通して仮説抽出し、過去実践してきましたが、やはりうまく行かないものも多かったです。

例えば現在の日本では、「投資家のメンタリングがあまり効果的ではない」という気付きがありました。
主な要因は、起業家が挑戦する領域に対して最適なメンターをマッチングさせることが困難であること。

ハードテック領域に挑む人に対し、過去に挑戦したことのある支援者の層が、まだまだ日本では薄く最適な人が見つけにくい環境にありました。
そのため、メンターが知見を持つ領域と起業家が挑む領域とで差異が生まれてしまいました。特に多くの支援者の方は良い方であるが故に、何かアドバイスをしようとして、結果的に有益ではないアドバイスになり、場合によっては起業家側が支援者の意見に振り回されるという図式が生じてしまいました。

 


■「自立自発的に思考していく」ための場をどう提供するか?の試行錯誤


ーハードテック領域は国内の先行事例が少ないので、先ほどの「メンタリングが効果的でない」といった状況が生じるんですね。

そうです。ティーチングよりもコーチング的に、起業家の理想的な壁打ち相手になる意識が重要だと気が付きました。
起業家自身が寝ても覚めてもその領域について考えつづけて詳しい状態であれば、門外漢が数十分で考えた視点を起業家が考えていない場合はほぼ無い。それなら起業家の思考整理と違う角度からの壁打ちによって構造理解を深める方が良いなと。

今年立ち上げた起業家CxO限定コミュニティーでもこの学びを活かしています。
起業家CxO限定でNDAを結び、その状況だからこそ共有できる組織作りや資本政策や営業・広報など、メディアに出る加工済みの二次情報では無い、現場の濃いノウハウを一次情報として話し合う場です。

NDAを全員と締結しているため安心して共有し合えるので、有益な場になってきていると思います。
最近では、国内におけるほとんどのアクセラレーションプログラムへ関係者を送り込めており、各主体の起業家から見た評価も集まっています。

 

ー優れたスタートアップを創出して送り込む養成所のようなものですね。

自然とそうなりますね。
中立的ポジションで、ひたすらハードテック領域の起業家を支援者に繋げまくった結果です。

メンタリングも「短時間で効率的なフィードバックを多くの人から得る」を追求した結果、最近は以下の形式で運用しています。
・最初に起業家が全体へピッチした上でオープンなQ&A→その後少人数でのフィードバック数回
・起業家1人:メンター2~3人比率の維持(コミュニケーションロスの低減)
・メンター側はなるべく顔見知り同士(支援者間の牽制を削減)
など、やり方を工夫した結果、メンターが多過ぎてアドバイスの伝達率が下がる、遠慮して本音のアドバイスが出づらいといった状況を改善できました。

「自立自発的に思考していく」ための場をどう提供するか、ですね。
大規模なグローバル起業家ネットワークのEO (ENTREPRENEURS ORGANIZATION)の方針も参考にしています。
EOは「創業者かつ代表者、売り上げ1億円以上」が入会基準、かつ守秘義務で運用されていますが、EOの「ゲシュタルトプロトコル」という手法を踏襲し、単なるアドバイスの場では無く、経験のシェアリングやあくまで生々しい一次情報を共有する場を創ることを意識しています。

 

―栗島さんがスタートアップ支援の専門家になった経緯は?

三菱UFJ投信にいた頃、趣味として手伝っていた途上国における適正技術開発コンテストの「See-D Contest」に関わり、パーソナルモビリティのWHILL、アスリート用義足のxiborgなど、尖ったメンバーが面白いものを生みだす光景を見たこと、そして2012年に参加したSxSWで世界に挑戦しようとするスタートアップたちとの交流が生まれたこと、が大きかったです。

その後、多くの起業家やクリエイターたちと関わるようになるにつれ、「新しい価値を作る挑戦者をもっと輩出すべき」と考えるようになり、東京大学の近くにハッカソンハウスという秘密のクリエイターハウスを作りました。その家からはProgateという現在10万人が学ぶプログラミング教育のスタートアップが誕生したり、ARスポーツで有名なHADOを提供するMeleapの福田さん、サイマックスの鶴岡さんなど個性的な人も遊びにくるような場になりました。

当時はちょうど会社も辞めており、縁あってエスエムエスの創業者でREAPRA代表の諸藤さんとお会いし、教育領域特化型のシードVC・アクセラレータ「Villing Venture Partners」の立ち上げに誘われたという経緯です。
私が起業家を輩出するようなクリエイターハウスを趣味で作り、一緒に住んでスタートアップ支援をしていたので、「栗島さんなら出来るよね」と思っていただいたのが理由だと思います。

ハードテック領域を支援するためのStarBurstが、従来のアクセラレーターとどう異なるか?をまとめた図。

 


■熱量のないところに化学反応は起きない→革新的なものが生まれるよう、偶発性を極限まで高める。


―教育領域特化型でスタートして、どうハードテック領域全体の支援にシフトしていったのでしょうか。

VCになって、日本の支援環境の薄さを目の当たりにしました。特に教育、いわゆるedtechはお金になりにくいという先入観で、支援者が非常に集まりづらかった。製造業、金融、宇宙産業なども同様で、全然支援者がいない。

そこで、支援の集めづらい領域の起業環境を改善しよう、と「起業家コミュニティSupernova(※プロトスターの前身)」をサイドプロジェクトとして始めました。
改善しなければ、という課題意識と同時に、ブルーオーシャンの可能性も感じていました。
“逆説のスタートアップ思考”の著者、馬田さんの思考です。

・一見して時間の掛かりそうな領域には、ファンドの償還期限の性質上、投資しづらい
・しかもハードテック領域は産業構造が複雑であるため挑戦するためにはまとまった投資が必要

上記2つの理由によって、結果として挑戦のされていないブルーオーシャンな市場が多く残ったままの状況ではないか。このハードテック領域に資金を安定供給できれば、大きくて古い産業から新しい産業を創る起業家が生まれるのではないか。

そう仮説を持つようになった結果、StarBurstがたどり着いたのは「徹底的に中立的なポジションに立ち、支援者、特に投資家と交流させ続ける。」という形です。
ファンドを作った人、1兆円規模の事業に関心がある人、多くの起業家。新しい人を巻き込んで交流させ続け、化学反応を起こし続ける。その中で、起業家に対して最適な投資家・支援者をマッチングする。

 

ー「交流させ続け、化学反応を起こし続ける」の仮説はどこから?

過去の経験から、熱量の高いコミュニティーから突出したモノが生まれるのは知っていました。

私は「イノベーションを化学的に再現する」と言っていた時期がありましたが、その際は、StarBurstにおいて私自身が触媒となり、中立的なポジションで熱量の持つ起業家たちを交流させ続けました。“熱量のないところに化学反応は起きない”という真実がありますが、まずは熱量が溜まる仕組みを作っていました。

そこから革新的なものが生まれるよう偶発性を極限まで高め、「成功率高くこの化学反応を起こすには?」を日々追求しています。
おかげで1年半の間に国内最大級のインキュベーション実績を残せるようになりました。
その中には、新しい概念を生み出すようなものも出てきています。

電子国家ソリューションサービス、宗教法人設立を民主化するためのプラットフォームなど、国や宗教等の概念自体を新しくするためのプラットフォームですね。
既に海外に展開するメンバーも出始めて、「新しい経済」や「新しい資本」といったテーマに挑戦しています。また、最近話題となっているICO、トークンセールの話も多く出ています。

 

ーICOやトークンセールは、恐らく先ほどの「ハードテック領域への安定的な資金供給」にとって今後重要な要素だと思いました。

重要ですね。
ただ、ICO周辺の話の多くは情報が整理されておらず、玉石混合で危ない状況です。先日ICO情報を発信するメディアを起ち上げたのですが、今後起業家がICOを活用する際の支援が出来るよう自ら研究と実践をしていこうと思っています。(後編へつづく

 

インタビュー後編はこちら
プロトスターの課題や未来像、1兆円ビジネスの目線をもつ起業家をどう増やすか?
仮想通貨等がもたらす大きなパラダイムシフトなどについて伺っています。


プロフィール
プロトスター株式会社 代表取締役COO 栗島祐介
早稲田大学商学部卒業後、三菱UFJ投信に入社しトレーダー・ファンドマネジャーを経験。
その後、アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立。数多の起業家やクリエイターコミュニティに強い関心を持ち、起業家輩出及び起業家育成エコシステム作りに邁進。
産業構造・技術構造的にHardな領域を主軸に新産業創出を目指す起業家支援コミュニティ「StarBurst(旧Supernova)」の企画・運営総括を行う。
その他複数社に社外取締役・アドバイザーとして関与。東京ファッションテクノロジーラボ理事やTMCNエヴェンジェリストも務める。主な投資先はCreatubbles、Codertstrust、Arcterus、DVERSE。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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