Interview

(インタビュー後編)プロトスター株式会社 栗島祐介さん 「時価総額1兆円超え”ムーンショット企業”創出のため、挑戦者支援インフラを創る」

text by : 編集部
photo   : 編集部,株式会社プロトスター

多くの企業を輩出した起業家コミュニティ「Supernova」は2017年1月に経営陣によるMBO実施、社名とコミュニティ名をそれぞれ「プロトスター株式会社」「StarBurst」へと変更した。
宇宙、エネルギー、金融、建築土木、教育・・・産業構造や社会構造そのものをブレイクスルーさせる可能性を有し、事業化に膨大な時間と資金を要するHardTech領域の支援に向けた理想的なコミュニティを追求し続けるプロトスターCOO栗島さんへのインタビュー後編です。(前編はこちら


■1兆円ビジネスの目線を持つ人が生まれる・増える構造とは?


インタビュー前編で現在プロトスターが提供する仕組みについて伺いました。今後に向けて課題と感じる事はありますか?

熱量が継続的に集まるサイクルを仕組み化できるか?ですね。
プロトスターサロンも含めて挑戦者に対する啓蒙・支援を続け、最終的には国家・都市デザインまで踏み込みたい。そうしないと仕組み化は本当に難しいと思っています。

挑戦者たちの熱量が凝縮し複雑に交差する環境で、触媒としてその場に集まる人の質や多様性をコントロールし続け、接点を持たせて触発させる。絶えず空気が送り込まれ熱量が最大になり続ける状態を生み出す仕組みを構築していきたいです。

 

ー化学反応を起こす場、いわば起業特区を自分たちで作るような。

そう、そこで燃え上がれば勝手に尖ったものが生まれはじめる。強大な熱量が鉄を溶かすように、ポロポロとイノベーティブなモノが生まれていくのではないか。
技術的に最先端かどうかよりも、大規模な変化を生む型破りなものかどうかをかなり意識しています。

最初から型破りな人、インタビューの前編で少し触れた「電子国家ソリューションに取り組む26歳の起業家」は、少し生い立ちが特殊で本人は7歳まで日本という国に住んでいたことを知りませんでした。そのため日本人として一般的な通念や原理・原則から外れています。
本来、一般社会では扱いにくい、扱えないタイプですが、起業家としては先入観無しで「これが世界の方向性として正しい」というプランを描けます。こういった起業家がきっと世界を根幹から変えていくのでしょう。

その一方、30~40代前半くらいの年齢層の起業家も増やすタイミングにきていると考えています。
StarBurstが対象としているハードテック領域で産業を創るタイプには、年齢が上の方が多いのでないかと思っています。何かの産業を経験し、その産業内で十分に構造を理解した方々が、テクノロジーを用いて新産業への道を切り拓くタイミングなのではないかと。

 

ー先入観の無い型破りな人だけでなく、産業構造を深く理解した人も重要ということですか。

個人的な意見ですが、産業を創るレベルの起業家になった方々も最初から1兆円ビジネスをやっていたわけではなく、挑戦を繰り返し、スモールIPOやEXITを経験して徐々に目線が高くなったケースが多いように思います。いわゆるシリアルアントレプレナー。

この層は現状手薄ですから、まず起業家を増やし続け、その起業家たちがEXITして目線の上がった状態でまた起業する。その連続でハードテック領域へチャレンジする人が増えるというイメージが理想的ですね。
以前astavisionでアペルザの石原さんを取材していましたが、石原さんもキーエンスやイプロスの経験を踏まえたシリアルアントレプレナー的存在だと思います。

かつて1商品の売上50億円が当たり前という価値観で仕事をしていた石原さんのような方にとっては、億・10億のスタートアップビジネスを「ビジネス規模が小さく、挑戦しても面白味がさほど無い」という感覚で見ています。そこがスタート地点でハードテック領域へ挑戦する人はとても貴重です。

この「最初から型破りな人」と「十分構造を理解し最初から目線が高い人」をそれぞれ増やしつつ、ちゃんと支えあう状態を作らなければと思います。

 

―話を聞いていると「中立的な立ち位置」「都市デザイン」など、栗島さんはハードテック領域支援の仕組みというよりも正真正銘「インフラ」が作りたいんですね。

ああ、インフラって正しいですね。
「ここに来て、触れれば、必ず適切なヒト・モノ・カネ・情報にアクセスできる」状態が理想です。

それを実現するためには、プロトスターがどこかで「オープンソースのような仕組み」へと転換する必要かもしれませんが、現状では単に熱量が散らばるだけの結果になると思うので、仕組みだけオープンにしても意味がない。

ある一定の熱量が常に集まり、触発しあうような慣性の法則が成立する「勢い」とそれを留める「構造」がないと熱量は散って消えてしまう。
でもオープン化しなければいつか結局散らばって終わってしまうという危機感もあります。
そうならないよう、今の「勢い」の受け皿として、プロトスター自体のブランドの確立が急務であると認識しています。

 

ー電力インフラみたいですね、発電だけでなくどこかに貯めて制御できるようにする

そうそう、制御と循環が大事。
例えばWeWorkのように、ブランドを確立することでオープンにしても熱量が成立する。
これが出来れば次のステージになるかなと思います。

あと、勢いを絶やさないために緒戦者へお金をバラまくってことへの覚悟。
効率を求め過ぎず一度は挑戦させる。それをひたすら増やす。
批判する人がいるかもしれませんが、お金を出し続けないといつまでたってもスピード感が出ず、規模感も出ず、産業規模のスタートアップが興せないので大事なポイントだと思います。

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インタビュー前・後編通じて語られる「どういう場であるべきか?」の仮説と試行錯誤は、現在頻繁に開催されているイベントにおいても対象者やテーマ、チーム分けなど細部に渡り実践されている印象を受けた。

 


■結局ハードテックって「地球上をどうハックするか」だと思います。


ーハードテック領域には様々なジャンルがあります。栗島さんが個人的に今後有望だと考えているのは?

まさに「暗号通貨」「トークンセール」によって生まれる市場に最近は特に注目しています。
ITバブルの初期と全く同じ構造だと思いますし、良し悪しはあるとしても、IT以上のインパクトを生み出して世界に普及する気がします、まだ具体的に読み切れていないですがこの市場は相当やばい。

既存産業や国に元々あったルールを飛び越える構造がITと似ています。
トークンセールで資本主義以外の概念に塗り変わる可能性すら感じています。
これはパラダイムシフトが起きているのではないかと。

 

ー騒がれ方や急速な広がり方、怪しいものも混在した状況で既存の国や制度の枠組みを越えている、確かにIT黎明期に近いかもしれないです。

国という概念がもっと分散するとか。
カントリーテック、テクニウム(※)みたいなもの。
(※テクノロジーこそが主体で、それが人間を利用して自らの環境を拡張しているという「テクノロジー生態系」の概念)

アフリカで、電子マネーが普及して強盗が激減した事例を知った時、「所持する価値が揺らいでいる」気がしました。極端な例ですが「持っていなければ盗めない」ってことじゃないですか。

住む場所、所得、資産が十分に分散しているなら、「どこでも生きていけるようになる」
その時「国である必要って何?」となります。
この視点で生み出される事業って、定義が難しいですが凄く興味があります。

結局ハードテックって「地球上をどうハックするか」だと思います。
例えば蓄電・送電システムやドローン飛行網、衛生通信網を作ったりして、画像解析データを活用して農作物を育て、超高精度ロボットが漁業をやり続けるという仕組みまで繋がった世界において、人は今の資本主義の先にある概念を見つけるかもしれない。その先は大半の人が理解できない世界観かもしれない。

 

ー仮想通貨も、ビットコイン採掘のための「電力」と「通貨」が繋がっていて、そこから先の未来は事前に想定することは無理な世界観かもしれないですね。

そうそう、極論ですけど電力会社は最強だなって思います。
現在の電力会社ですと蓄電技術が追いついておらず、発電余力がかなり残っている。

じゃあこの余った発電余力分を使ってずーっとビットコイン採掘し続ける。
これ世界でトップの電力会社がやりはじめたらとんでもない事が起こりますよね。
新規事業としてすごく提案したい。

 

―余剰リソースでビットコインを掘り続け、そのために低コストの発電・蓄電・送電技術研究にリソースを投入

はい。完璧じゃないですか。
稼いだ分を蓄電技術や電力コストの改善研究に充てたら、循環し続ける。
面白いですよね、色々な可能性が生まれてくる。

このような可能性の先に、挑戦者をどんどん増やしていくことによってStarBurstが目指す「100年続く産業創出エコシステム」があると思います。

 


プロフィール
プロトスター株式会社 代表取締役COO 栗島祐介
早稲田大学商学部卒業後、三菱UFJ投信に入社しトレーダー・ファンドマネジャーを経験。
その後、アジア・ヨーロッパにおいて教育領域特化型のシード投資を行う株式会社VilingベンチャーパートーナーズCEOを経て、起業家支援インフラを創るプロトスター株式会社(旧スパノバ株式会社)を設立。数多の起業家やクリエイターコミュニティに強い関心を持ち、起業家輩出及び起業家育成エコシステム作りに邁進。
産業構造・技術構造的にHardな領域を主軸に新産業創出を目指す起業家支援コミュニティ「StarBurst(旧Supernova)」の企画・運営総括を行う。
その他複数社に社外取締役・アドバイザーとして関与。東京ファッションテクノロジーラボ理事やTMCNエヴェンジェリストも務める。主な投資先はCreatubbles、Codertstrust、Arcterus、DVERSE。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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