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Interview

「テクノロジー×建築・土木×デザイン」で、ビジネス用VRの世界を獲る– DVERSE Inc. CEO 沼倉正吾

text by : 編集部
photo   : 編集部,DVERSE Inc.

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個人向けVR端末の発売開始以降、一昔前に比べとても身近な技術となったVR。
ゲームやエンターテイメントで多くのコンテンツが生まれる中、ビジネス面におけるVR活用にも注目が集まっている。その中に「建築業界におけるVRは、単なるデザイン確認ツールではなくビジネスプロセスを変えるBIツールとなり得る」と語る日本発の注目ベンチャー企業がいる。
当時の投資環境などから「仕方なく」アメリカで創業したDVERSE Inc.は、その後のグローバル展開で建築業界などビジネスシーンにおけるVR活用を牽引している。CEOの沼倉さんにお話を伺いました。

 


■建築業界の課題は世界共通、それがグローバル展開と繋がった。


―VR・ARを建築土木に特化したビジネス向けに提供していますが、DVERSE最大の売りを教えてください。

SYMMETRY(シンメトリー)」というソフトウェアです。
建築現場には、「実物が完成すると、図面とのイメージが違っていた」という問題がありました。平面図と立体で見え方が違うのは当然ですし、「雰囲気」や「情緒的」もニュアンスが伝わらない。

これをVRで解決するのが「SYMMETRY」です。
アイデアやイメージをVR空間に表現して実際に中に入って確認できる。それにより正確な情報が相手に伝わり、意思決定できるビジネスツールです。

 

―SYMMETRYは当初から海外からの反応が良かったそうですが、その要因は何だと思いますか?

海外というより、グローバル展開前提で英語版しか出していないんです。
開発期間に2年ほどかけて、その間日本だけでなく海外の方にもプロトタイプへのフィードバックを多く頂きました。

恐らくそれが海外での反響に繋がっていると思います。
現在の顧客も、多い順に北米、中国、日本、ドイツとバラバラですね。

もう一つ「建築における世界共通の課題だった」もあると思います。
どの国であろうと、建築では設計図や平面上でのデザインを見て、意思決定していた。
この手法は50年、下手すれば100年変わっていません。
VRやARを使えば、完成前に「実際の建築物を体験できる」のが受けたのかもしれません。

 

―元々DVERSEの創業もアメリカですよね。

そうですね、「仕方なくアメリカで創業してグローバル展開した」が理由なんですけど(笑)

創業時、僕は「今後のVRはビジネス利用がくる」という話をよくしていました。
ただ、当時の日本はまだ業務用VRに懐疑的で資金調達も難しく相手にしてもらえない。

日本では難しい、それならグローバルに出ていくしかない。という流れです。
2015年後半以降は、状況が変わり投資会社からよくお声が掛かるようになりました。

有望な投資先としてVRに注目が集まった時、既にDVERSEが業務用VRにおける先駆者のポジションになっていたからです。

 

―そもそも、「建築業界でのVR」に行くと決めた最初の理由は?

僕らも創業当時はエンタメ領域のVRをやっていました。
制作会社、大手テレビ局や通信会社さんと「VRを絡めて何ができるか?」の企画作りから開発まで一緒にやらせて頂いていました。
ある日、その一環でCADを扱う会社から「建造物のアイデアやイメージの確認にVRを使えないか」という相談を受けたのがきっかけです。
それがVRとの相性が良く、全てのビジネスに通じた幅広い産業で必要とされるサービスだと思いました。

2016年の1月にエンタメの仕事を全部辞め、全社的にビジネス向けVRを展開する決断をしました。
これが現在の建築業界におけるVR活用、「SYMMETRY」に繋がっていきます。

 


■SYMMETRYの未来像は「建築業界のBIツール」、デザインの確認だけでは終わらない。


―SYMMETRYをさらに発展させた未来像を教えてください。

離れた場所にいても、VR空間に集まって「物を見ながら打ち合せできる」のが当たり前の世界です。
SYMMETRYの最新バージョンに搭載したネットワーク機能はそれを見据えています。

「距離」を越えて仕事が出来たら、仕事を頼みたい世界中の人たちにも大きな変化がありますよね。
例えば、東京のデザイナーとニューヨークの担当者が、VR空間の中でデザイナーが作った店舗デザインの中を2人で歩き回りながら会話し、「天井はもっと高い方がいいね」「入り口をこうするのはどうですか?」と話し合う。
遠隔だけど、2人で現地視察しながら打ち合わせしている。

さらに、デザインだけではなくて、エクセルのシートや図面も全部VR空間に入れることを考えています。
見積もりを見ながらデザイン確認し、見積内容を変更したらVR空間のデザインも瞬時に変わる。
そして建材のデータベースと紐付けて「発注」までやりたいと考えています。
実際にVR空間の壁をチェックして、「これいいね。この壁材の在庫ある?」と確認してそのまま発注。

ここまで来たら
・デザインの正確な確認
・見積もりの調整
・意思決定
・実際に発注
全てVR空間で完結する。これが将来像です。

 

―VRでデザインの確認どころか、建築業界の業務改善ソリューションまで行きますね。

そうですね。BI(ビジネスインテリジェンス)というのが近いと思います。
業務用データを効率的に活用し、意思決定を促しプロセス改善する。そのためにVRを活用します。

 

―「SYMMETRY」自体をプラットフォーム的に展開することも考えていますか?

考えています。PDFに近いイメージですね。
PDFって、いまや誰でも無料で閲覧できます。ただPDFファイルの作成自体はまた別。
この「閲覧」と「作成やカスタマイズ」を分ける。

僕らの「SYMMETRY alpha」は無料提供していて、VRでの閲覧・VR内で打ち合わせするネットワーク機能が使えます。これがいわばPDFリーダーです。

ただ、インタラクション付与については有料で提供する予定です。
更にUnity(ゲームエンジン)や3DCAD制作ソフトなどに対応したプラグインも提供し、SYMMETRY alphaで閲覧する際のカスタマイズは誰でも出来る。プラグインを活用して凄く凝ったVR空間を作り、それをSYMMETRY alphaで誰にでも見せられる。

SYMMETRY alphaは「誰でも使える、VR打ち合わせの無料プラットフォーム」で、ここはかなりオープンな戦略を取っていくと思います。

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SYMMETRY alphaのウェブサイトは日本語と英語に対応しており、SYMMETRYを始めるための推奨PCや体験施設の案内、HTC VIVEへのリンクなど、VRに不慣れな人でも利用開始できるように配慮を感じる作りになっている。

 

 


■今後、教育業界に興味がある。VRで「学びの体験性が変わる」と思います。


―ここ数年で急速に活用事例が増えていると感じます、建築でのVR活用に何か変化があるのでしょうか?

業界の中核にいる方の「世代交代」があるかもしれません。
建築・土木で中核を担う方が、徐々に「小さいころからゲームやパソコンに慣れ親しんだ世代」に移ってきた。

国交省の「i-construction」なども同様だと思いますが、こういう世代の方が「便利ならばVRも積極的に活用しよう」となってデジタル・IT活用の背景になっていると思います。

 

―今後、建築業界以外で可能性を感じる業界ってありますか?

教育業界です。とても相性がいいと思っています。

実は、海外の大学と「古代の街をVRで体験」というプロジェクトを進めています。
教授と生徒が一緒にVR空間を体験し「当時の生活様式はこうだったんだよ」と説明する。
VRは、「大きさ」や「スケール感」が凄く伝わります。歴史を学ぶ体験性が変わると思います。

「太陽は、地球の100倍の大きさです」と、教科書にイラスト付きで書いていても正直ピンと来ないですが、VRで目の前に「自分の身長くらいの地球」が出現して、その隣に大きさ100倍の太陽があったら。

天体や宇宙というものの記憶、興味のそそられ方が変わると思います。

 

―肉眼で見ることが出来ないはずのものを体験する「VR社会科見学」ですね。

はい。VRは非常に相性がいいのでこれから本格的に取り組んでいこうと思っています。
ですから、教育関連の方にはぜひDVERSEの存在を知って頂きたいです。

従来のVRはコストが高いイメージがあり、恐らく教育の現場で使いたくても出来なかったと思います。
ですが、僕らのサービスはソフトウェアが無料なので、VR機器さえ購入してもらえればできます。
VRで凝った事をするソフトは100万円以上するものもありますが、うちのスタンダードビューアーであるSYMMETRY alphaは無料ですから。

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現在(※取材時点)は代々木にオフィスを構えるDVERSE社。創業当時は写真のように知人のベンチャーキャピタルに頼み込み新宿のオフィスを使用させてもらっていた時期も。

 

 


■世界的企業を相手に戦う段階に入る。正面から殴り合うつもり。


―DVERSEの社内には別に建築業界や教育業界の方が多くいたわけではないんですよね。

そうですね。
ただVRという最新技術に取り組んでる割りには平均年齢高い会社だと思います。
経営陣は僕含めて40代が多く、上は60代から下は20代前半までいますから。

社会経験豊富なメンバーで構成されているので、
大人なビジネス対応が必要なら出来ますよ。みたいな感じです(笑)

 

―DVERSEにフィットするタイプの人ってどんな印象ですか?

まず大前提でスタートアップですから、普通の会社より社内がバタバタしてます。
状況もどんどん変わる、まずここが合うかどうかですね。

「売上が黒字ならいい」じゃない。
スタートアップだから短期間で急成長を目指している。

好奇心旺盛な人は向いてると思います。
「VR使ってこれが出来るんじゃないか」「こういう新しい市場が創れるんじゃ?」って、頼まれてもいないのに考える、話題にするのが根っから大好き。逆に「仕事として依頼されたものをこなすだけ」の人は合わない気がします。

 

―海外からスタートしたおかげで得た発見はありますか?

情報ですね。
海外企業と提携したり、共同プロジェクトを進める中で、彼らがリアルタイムでどういう方向を目指しているか?が掴みやすかった。

日本の企業は「日本で成功してから海外行く」ですが、
うちは最初から海外だったので、自然と最初からグローバル思考だったのは良かったです。

 

―今後、ビジネス向けVRに世界の超大手も参入してきますよね、どう対応しようと考えていますか?

うちのスタンスは完全に「正面から殴り合う」つもりです。
正直、現時点でうちが提供しているものは、他の大手さんも提供できるレベルのもの。
本当の闘いはこの先、世界的な企業を相手にしていくことになると思います。

今後グローバル展開や資金調達を考えている理由もそこです。
資金も技術力も人材面においても、日本を主戦場にしていたら戦えない。

元Googleであったり、色々とベンチマークしている会社で就労経験のある人をスカウトしようと動いています。その点も最初からグローバル展開でスタートして世界中の会社を「競合だ」と意識しながら動けている部分かもしれないです。

日本にいると、Googleって海の向こうの「すごい巨人」として扱われますけど、海渡ったらいくつかある大企業のうちの1つで、別に自分たちと何も変わらない。

僕らは既に “テクノロジー×建築・土木×デザイン”とニッチで専門性が高いところを獲るスタートアップ戦略で進めていますし、これが今後強みになると思います。

大きな会社も一枚岩ではない。
栄枯必衰、大きくなれば小さくなることもある。
10年後、本当にグーグルが存在し続けているかもわからないですしね。

 


プロフィール
沼倉 正吾 DVERSE Inc.(ディヴァースインク)CEO
2004年、株式会社ナスカークラフト設立。代表取締役として、ゲームソフト開発、携帯・スマートフォンアプリ開発、クラウド映像配信サービス開発など新規事業の立ち上げに従事。2014年にVRソフトウェア開発を専門としたDVERSE Inc.を米国に設立。同社CEOとして、様々な企業とのVRに関する共同研究開発を行う。2016年よりビジネス向けVRソフト「SYMMETRY(シンメトリー)」の開発を行っている。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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