2016.01.26 TUE 平田オリザ氏のロボット演劇研究もランクイン。総額120億円・「人工知能(知的エージェント・知能システム)」市場における科研費獲得ランキング
text by : | 編集部 |
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photo : | shutterstock |
近年、より成熟し横断的になった産業の中で、多くの企業が異分野での新規事業創出を目指し、また大学・研究機関は研究開発成果・特許の事業化促進を活発化させるなど、激しい競争環境が生まれている。
総務省によると、企業の好業績などを背景に、企業や大学・研究機関などの2014年度の科学技術研究費総額が前年度比4.6%増の18兆9713億円となり、2年連続の増加で、リーマン・ショック前の07年度(18兆9438億円)を上回って過去最高を更新しました。また、国内総生産(GDP)に占める比率も3.9%と過去最高を記録している。
このように研究開発への投資に追い風が吹く中で、競争的研究資金である「科研費」の平成28年度助成額は前年度より25億円増の2343億円になる見通しとなっている。(※1)
そこで今回は、有望成長市場のうちの一つであり、2006年以降で総額約120億円の科研費が交付されている「人工知能(知的エージェント・
(※1) 財務省「平成28年度文教予算のポイント(概要)」より引用
■「人工知能(知的エージェント・
(※2) 2006~2015年の交付分。2016年1月時点でデータ取得
※画像クリックで拡大できます。
1位は東京大学の「高度言語理解のための意味・知識処理の基盤技術に関する研究」で4億9933万円。巨大な文書集合を使った機械学習技術と記号処理アルゴリズムとを融合する手法を、意味・文脈・知識処理に適用することで、言語処理技術にブレークスルーをもたらすことを目指す研究。
2位は京都大学の「記号過程を内包した動的適応システムの設計論」で2億7703万円。目的をもって生きる存在としての自律的な主体(人、ロボット、細胞)が、 他者主体を含む環境との相互作用を通して、意味の世界を創出して伝達する仕組み(記号過程)を解明し、システムが人を育て、人がシステムを育てる相互主導性を担保できるシステムの設計論を確立したというもの。
3位は名古屋大学の「ノンコーディングRNAによる発現統御ネットワークの解明に基づくがんの個性の描出」で2億3725万円。がんの分子病態を解明することを目指して、ベイジアンネットワーク推定を基盤とするシステム生物学的アプローチと、分子細胞生物学的な実験的手法を統合した研究。
4位は東京大学の「身体運動と言語を統一した人間・機械コミュニケーションの成立」で2億0306万円。人間の身体と運動の記号モデルと自然言語モデルを接続することによって、世界や他者の理解を行い、それに基づいて自己の行動を決定する計算システムを構築するというもの。この過程で、人間の深部身体感覚や神経活動の推論の計算基盤を構築し、これらをヒューマノイドロボットへ実装するために、カに敏感なアクチュエータと駆動系、歩行制御系を開発した。
5位は東京大学の「超高速ビジョンを用いた高速知能ロボットの研究」で1億9071万円。高速知能ロボットの速度限界への挑戦と、高速に変動する実環境・対象のダイナミック把握を目指すというもの。
6位は大阪大学の「構成的手法による身体バブリングから社会性獲得にいたる発達過程の理解と構築」で1億5184万円。身体バブリングから社会性獲得にいたる発達過程を、ロボットの設計・作動や赤ちゃんの行動計測を通じた構成的手法である認知発達ロボティクスを用いて明らかにするというもの。
7位は大阪大学の「人のような存在感を持つ半自律遠隔操作型アンドロイドの研究」で1億4274万円。演劇の手法をもとに、社会的場面におけるアンドロイドの対話モデルを研究するというもの。
8位は九州大学の「リバース4D材料エンジニアリングによる材料開発プロセス革新」で1億3572万円。「材料設計→評価→実材料創出」という時系列で行われてきたこれまでの材料開発とは逆方向のプロセスにより、迅速、高精度に高性能材料を開発する「リバース4D材料エンジニアリング」を創成するというもの。ニューラルネットワークモデルを用いた最適化手法を用い、材料の疲労・破壊のモデルを構築した。
9位は東京農工大学の「計算解剖モデルに基づくオートプシー・イメージング支援」で1億0738万円。死亡時CT像から、臓器抽出処理や骨折検出支援システムを開発するというもの。骨折検出支援システムの高度化のために、ディープラーニングに基づく判定アルゴリズムを導入した。
10位は理化学研究所の「がんのバイオインフォマティクスと遺伝統計学的解析」で9724万円。高精度ながんゲノムシークエンス解析パイプラインを、国際がんゲノムコンソーシアムの一環として得られる数百例の全ゲノムシークエンスデータに適用し解析を行い、全症例の全ゲノム上の変異を網羅的にカタログ化するというもので、予測のための手法を開発するステップとして、ゲノムマーカーに機械学習を適用した場合のフィージビリティ研究を行った。
■科研費(科学研究費助成事業)について(※3)
科学研究費助成事業(学術研究助成基金助成金/科学研究費補助金)は、人文・社会科学から自然科学まで全ての分野にわたり、基礎から応用までのあらゆる「学術研究」(研究者の自由な発想に基づく研究)を格段に発展させることを目的とする「競争的研究資金」であり、ピア・レビューによる審査を経て、独創的・先駆的な研究に対する助成を行うもの。
(※3)日本学術振興会HPより引用
次回は2月3日、「ロケット・宇宙開発」市場における科研費獲得ランキング(研究テーマ別)を発表予定。
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