2016.08.01 MON 製造業におけるIoTプラットフォーム確立へ~IoT World Conference 2016レポート~
text by : | 編集部 |
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photo : | 編集部 |
製造業において、米国のIndustrial Internet ConsortiumやドイツのIndustry 4.0など、ロボット・工作機械とITとの融合により開発・製造・保守・流通プロセスの最適化を図るための官民挙げての取り組みが世界各地で始まっており、国際標準の獲得とプラットフォームの確立に向けた動きが活発化している。
産業ロボットが自ら学習し行動する自律化、工場内の様々な機器がが互いにつながり連携するネットワーク化など、大きな変化の途上にある製造業において、IoT活用によるビジネス創出を目指すイベント『IoT World Conference 2016』が、7月29日、東京・丸の内のJPタワーホール&カンファレンスで開催され、全15セッションで来場者2,713名を集める盛況となった。
イベントでは、製造業のためのIoTオープンプラットフォーム『FIELD system(FANUC Intelligent Edge Link and Drive system) 』の開発を発表したファナックとシスコによるセッションが行われた。その模様をレポートする。
■製造業のIoTとデジタル化について—FANUCとシスコの協業—
シスコシステムズ(同)専務執行役員 戦略ソリューション・事業開発担当 鈴木 和洋氏
ファナック(株)専務取締役 ロボット事業本部長 稲葉 清典氏
シスコ社の鈴木氏は冒頭、「昨日寝る前は製造業の会社だったのに、朝目覚めたらソフトウェアとアナリティクスの会社になっていた」というJeff Immelt氏(GE社CEO)の言葉を引用し、製造業のビジネスモデルの進化を強調した。
「工場内のあらゆる機器を効率的にセキュアルにつないでデータを取得し、分析して現場にフィードバックしたり、MaaS(Machine as a Service:月額・年額のサブスクリプションサービス)のような取り組みも現れ始めています」(鈴木氏)
また、シスコ社のイノベーション戦略として「自社開発」「出資・共同開発」「買収」「戦略的提携」の4パターンを挙げ、これまではIT企業同士が多かった戦略的提携において、製造業、しかも日本企業であるファナックとのパートナーシップについて言及した。
「日本のIoTデジタル化は製造業が中心で、特にスマートファクトリーの分野は13.9兆円の経済価値が見込まれています。IoT活用を検討している業種を調査したところ、TOP5のうち4業種が製造業でした。しかし取得されているデータの99%がマシン内にあり、活用されていないという現状があります。そのような中で、米国では7500台のファナックのマシンでZDT(ゼロダウンタイム)を導入しました。これはファナック、シスコ、Rockwell Automation、Preferred Networks4社の提携によるIoTオープンプラットフォーム『FIELD system』によるもので、シスコはスイッチ、サーバ、IoTミドルウェアなどプラットフォームの部分を提供しています」
続いてファナック社の稲葉氏からは『FIELD system』について説明が行われた。
「生産拠点がグローバルに展開されるなかで、工作機械やシステムの現地へのカスタマイズが進めば進むほどコストパフォーマンスが下がる、という課題に企業は直面しています。これをどう解決するかという問題があるわけですが、その点、消費財はよくできており、ソフトウェアをダウンロードするだけでハードウェアのカスタマイズができるようになっています。このやり方を製造業にも持ち込めないかと考えました」(稲葉氏)
自律・分散・協調によってすべての工場をつなぐ「つないで見える化」については、「『FIELD system』は既存システムにも適用できるもので、つないでさえあれば、モーターの操作部分以外は制御できます。ただし、制御すること自体は難しくないが、過酷な製造現場に耐えうるハードウェアを供給するというのはまた別の話になってきます。そこで機械学習をツールとして考え、 Preferred Networksとの協業に至りました」と説明した。
また、機械学習による成果として稲葉氏はバラ積み作業の実験事例を挙げ、ピッキングロボットが1万データ学習した結果、作業効率が10パーセント以上改善したとの結果を紹介した。
『FIELD system』は年内のリリースを予定しており、8月29日にはパートナー企業を対象としたカンファレンスを開催予定。
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