2016 年に発効した国際的枠組みであるパリ協定では、温室効果ガスの排出を削減し、地球の平均気温の上昇を 1.5℃ に抑えるという目標が立てられた。日本では 2030 年までに、CO2 排出量を 2013 年比で 26% 削減することが目標とされており、CO2 の主要排出源であるエネルギー・発電部門において再生可能エネルギーの割合を高めることによる低炭素化が求められている。海洋エネルギー発電は再生可能エネルギーのうち、波力や塩分濃度差などを活用して、海洋がもつ化学的・物理的エネルギーを発電に利用する技術である。海洋エネルギーには、広義には海底に埋蔵された石油、天然ガス、メタンハイドレートなどの海洋天然資源の利用や、洋上風力発電も含まれるが、本レポートでは海洋の化学・物理的エネルギーを直接利用する、海流、波力、潮力、海洋温度差、塩分濃度差発電に着目する。
目次
はじめに
アスタミューゼ社のご紹介
弊社は世界の無形資産・イノベーションを可視化し 社会課題解決と未来創造を実現する、データ・アルゴリズム企業であり、
イノベーション投資の流入に加え、イノベーターの流れを機械的に分析し、データに基づいた成⻑領域を定義している。
本レポートのご紹介
アスタミューゼでは今芽吹きつつある黎明期の技術シーズや今後 10 年から 20 年 のスパンで大きく開花すると期待される初動段階の技術市場に重点を置きつつ、生活文化の中に根 付く技術にも光を当て、総じて未来を創る技術分類の網羅に取り組んできた。
このために、国内第一線の知を結集して全世界の論文・特許、国内外の国際会議やシンポジウム、展示会等の情報並びに独自ネットワークによる口コミ情報を活用し、136 の有望成長市場と、40 の 未来技術を選んだ。主にビジネス視点で策定された有望成長 136 市場を対象にしており、本レポートは、『海洋エネルギー発電』の未来推定に特化した内容となっている。
事業会社に向けては、イノベーションに関わる経営課題を中心に戦略構築支援/実行支援を実施しており、
・自社の既存事業の優位性がいつまで続くかわからない
・既存事業の成長が踊り場にきているので、使っている技術 を別で活かせる可能性を探りたい
・既に着手している研究開発を続けるべきどうか、もしくは 自社開発ではない方法があるかを含めて検討したい
といった企業のよくあるお悩みを解決している。
海洋エネルギー発電の現状
日本では、経済産業省と NEDO が平成 30 年度から「海洋エネルギー発電実証等研究開発事業」を実施するなど、近年精力的に海洋エネルギー発電が推進されているが、いまだ研究・実証実験段階であり、他の再生可能エネルギーと同様、発電コストの低減や送電網の整備などの課題が残っている。実用化に向けた動きとしては、IHI が NEDO と共同で水中浮流式の海流発電システムを開発し、鹿児島県口之島沖の 黒潮域に設置し実験を開始している。
今後の見通し・将来性や展望
今後は再生可能エネルギー源として、2021 年度以降の商業化を 目指しているほか、安定した海流がある米東海岸などの海域での利用も計画され、国内外への導入と普及が期待される。国際エネルギー機関(IEA)の下で運営されているオーシャンエネルギーシステム(OES)の 2019 年の年次報告書によると、世界的な波力・潮流発電量は 2009 年の 5GWh から、2019 年には 45GWh へと約 10 倍近く増加している。例えばスペインでは 2025 年までに 25MW の海洋エネルギー容量目標が提案されるなど、欧州、北米では海洋エネルギー開発が国家プロジェクトとして進められており、コスト削減を目指す技術開発や法整備が行われている。
近未来 2030年の市場規模予測
アスタミューゼ社による『海洋エネルギー発電』現在の世界市場規模推定と近未来の世界市場規模予測。
2022年には推定9億米ドル だったものが、2030年には70億米ドル になると予測している。
スタートアップ投資動向と投資額
海洋エネルギー発電の2010 年から 2019 年の 10 年間における世界のグラントの資金流入額は総額 $240M である。
本レポートでは、
・世界のスタートアップ設立社数と被投資額の累計/推移
・グラント採択数と総配分額ランキング
・世界のグラント配分額上位25テーマ
・日本のグラント配分額上位25テーマ
を提供している。
現在の主要企業
本レポートでは、海洋エネルギー発電分野において、現時点で保有する技術が総合的に優位な企業を各種特許指標から評価し、ランキング形式でリスト化して提供している。
主なプレイヤーとして、
国外では、
・GE Renewable Energy
・Lockheed Martin Corporation Ingine, Inc.
・Zhejiang Ocean University(浙江海洋大学)
などが含まれ、そういった
上位企業の保有する特許の中で、特に競争優位性が高い特許の概要と、最高エッジ指数での定量的な評価を記載している。
最新の技術開発具体例
本レポートでは、海洋エネルギー発電における最新の技術開発事例を紹介している。
海洋エネルギー発電の未来予測・将来性
未来の構成要素
本レポートでは、海洋エネルギー発電に関連する・機械的駆動原動機
・タービン
・海洋熱エネルギー変換
・発電機制御装置
・給電・配電回路
・水上浮揚構造物
などの技術要素と、
そういった様々な技術の進化、新しい可能性の発現、企業の把握すべき範囲を記載している。
未来のストーリー想定
本レポートでは、近未来に、欧州を中心とした海洋エネルギー発電施設の展開が進み、潮力と波力発電 を合わせて 3GW の発電量が達成される海洋エネルギー発電について、
未来のトレンドとして想定し得るストーリーを記載している。