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新型コロナウィルスの影響で温室効果ガスの排出が減少 ~各産業の変化による温暖化・気候変動への影響とは~

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アスタミューゼは、世界的な課題である温暖化や気候変動について温室効果ガスに関するデータから、新型コロナウィルスの影響による経済活動の変化に伴いガス排出にどのような影響があるかを分析しました。

温暖化や気候変動は、地球環境の変化による農作物の収穫高や人々の生活様式・文化に変化をもたらすため、企業の事業活動にとっても大きな影響を及ぼす要素の一つとなりつつあります。そのため企業の持続的な成長のためには、ESG(Environment:環境、Social:社会、Governance:企業統治)の要素を重視しなければならず、大きくは国連で採択された持続可能な開発目標SDGs(Sustainable Development Goals)を視野に入れた事業活動を検討・実行する必要が高まっています。その流れを受け、投資や金融分野でも、環境・社会・ガバナンスに対する企業の積極的な活動への「ESG投資」が注目されています。
こうした中、世界では「金融安定理事会(FSB; Financial Stability Board)」が、気候変動に関する企業の対応を情報開示するよううながす「気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD; Task Force on Climate-related Financial Disclosures)」を設置しました。財務報告の中で気候変動に関わる「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの要素を開示することを推奨するというもので、環境と経済の好循環を目指しています。

今回の分析は、温室効果をもたらす主なガス「二酸化炭素 (CO2)」、「メタン (CH4)」、「一酸化二窒素(N2O)」の排出量を産業別に分析し、新型コロナウィルスの影響による個人・企業・社会の活動の変化からそれぞれを具体的な企業の事業活動と結び付け、影響分析を行いました。
このパラダイムシフトを機に、経済と環境を両立しながら低排出社会を目指していくため、温暖化や気候変動について企業としてどう捉え、どのような方向性を示すのか再検討すると同時に、さらにESGに配慮した経営が必要となっています。

 

【CO2(温室効果ガス全体の約81%)】 ⇒コロナによる排出量変化予測:減少
■エネルギー産業:構成比約38%
・エネルギー産業における主なガスの発生源は、発電等のための化石燃料の燃焼(85%)で、経済活動の停滞による電気消費量の減少により排出量も減少傾向と予測される。
■製造業:構成比約21%
・製造業における主なガスの発生源は、50%以上の排出量を占める基礎素材の製造過程における化石燃料の燃焼、特に鉄/化学素材製造時(32%)の排出が大幅に減少。また、セメント・鉄など鉱物・金属・化学素材製造(29%)においても減少が見込まれる。
■輸送・移動:構成比約27%
・輸送・移動における主なガスの発生源は自動車(86%)、鉄道/航空/船舶(10%)での燃料燃焼で、コロナによる移動の制限により燃料燃焼も減少。
■その他:構成比約13%
・主なガスの発生源は灯油など家庭での燃料燃焼(57%)で、自粛生活により自宅で過ごす時間が多くなるものの、全体の割合としては大きな変化はないとみられる。

 

【CH4(温室効果ガス全体の約11%)】 ⇒コロナによる排出量変化予測:微減
■エネルギー産業:構成比約37%
・エネルギー産業における主なガスの発生源は、燃料生成・採掘段階における石油など燃料からの漏出(99%)で、コロナによる影響によりエネルギー産業全体の落ち込みにより減少する。
■農水産業:構成比約39%
・農水産業における主なガスの発生源は、牛などの家畜の消化管内発酵(78%)や、家畜の排出物管理(17%)であるが、農水産業における短期的な変化はないため、排出量の大きな変化もない。
■廃棄物処理由来:構成比約22%
・廃棄物処理における主なガスの発生源は、固形廃棄物処理(81%)や汚水処理(17%)で、大きな変化はない。

 

【N2O(温室効果ガス全体の約5%)】 ⇒コロナによる排出量変化予測:微減
■エネルギー産業:構成比約5%
・エネルギー産業における主なガスの発生源は、発電等のための化石燃料の燃焼(91%)で、コロナによる経済活動の停滞により減少。
■製造業:構成比約7%
・製造業における主なガスの発生源は、基礎素材の製造過程におけるアジピン酸や硝酸など化学素材製造(66%)で、コロナによる製造業への影響により減少。
■輸送・移動:構成比約4%
・輸送・移動における主なガスの発生源は自動車(76%)、鉄道/航空/船舶(15%)での燃料燃焼で、コロナによる移動の制限により燃料燃焼も減少。
■農水産業:構成比約79%
・農水産業における主なガスの発生源は、整地や環境の準備段階における土壌の使用(特に化学肥料/有機肥料を使用した土壌整備)で、コロナによる大きな変化はなし。
・生産段階における糞尿処理でのガス発生は大きな変化なし。
■廃棄物処理:構成比約4%
・廃棄物処理における主なガスの発生源は、固形廃棄物処理(77%)や汚水処理(17%)で、大きな変化はない。

アスタミューゼでは、With/Afterコロナの時代で起こりうる様々な変化を個人、企業、社会のそれぞれのレベルで分析予測し、コロナによる課題の顕在化により解決が早まる社会課題や、それに伴い進化が加速する技術を、短期、中期、長期の時間軸でまとめ、それによる影響を受ける産業、縮小するビジネスについても紐づけを行っています。

今回の温室効果ガス排出の変化は、新型コロナウィルスの蔓延により各国が緊急で行った措置や、やむを得ず自粛された事業などにより起こったものと考えられます。過去リーマンショックの際にも温室効果ガスは、削減されましたが、その後早期に排出量は元に戻りました。
ただ、今回の新型コロナウィルスによる変化は、経済や金融だけでは無く、社会、個人の価値観、行動様式にも変化をもたらしていると考えられます。この未曾有の変化をきっかけに、気候変動・温室効果ガス排出に対して非連続な対策、革新的な技術などが織り込まれたビジネスや産業のあり方にアップデートするための参考にして頂ければ幸いです。

 

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