Interview

COMPは、あなたの「夢中」をサポートする完全バランス栄養食。 ――株式会社コンプ 鈴木優太

text by : 編集部
photo   : 編集部,株式会社コンプ

【完全食】・・健康を維持するために必要な栄養を全て含んだ食品。
約100年前、1921年に「玄米」などを指して提唱され始めた言葉は、健康志向や生活習慣病の話題が多い現代において、改めて注目を浴びている。

アメリカのソイレントと並び、いわば日本の完全食における先駆者的な立場であるCOMP
「やりたいことに熱中したかった」と自分のために開発した完全食は、いつしか食品メーカーや多くの消費者を巻き込み、「誰もが自然に健康になれる世界」の実現へと向かっている。
株式会社コンプ代表の鈴木さんに今後の構想についてお聞きしました。


■みんな栄養を正しく摂らなきゃと思っていて、みんな自信が無い。


――改めて完全バランス栄養食「COMP」の概要と誕生の背景からお聞きしたいのですが。

COMPは、人が生活する上で必要な栄養を全て含み、「これだけで生活できる」ものを目指しています。

最初は自分が欲しいから作ったんです。
研究職時代にやりたいことに熱中したくて、食事時間も徹底的に削減したかった。そこで世の中にある栄養補助食品ばかり食べていたらあっという間に体を壊してしまって。

「なんで体を壊したんだろう?」と思って、厚労省の食事摂取基準や必須栄養素などを自分で調べてみたんですね。そのうち「大体パラメーターがわかったから、自分で作ってみよう」とAmazonで材料を仕入れて作ったのがCOMPの始まりですね。

――自分用のいわば試作品を事業として展開したのはなぜですか?

プロトタイプの出来に自信があったので、作り方をネットに公開したんですよ。

そしたら結構反響が大きくて、「ああこれ自分以外にも求める人が多いな」と感じました。
それと、僕自身研究者なので、良いものが出来たら論文にしたいし世の中に「凄いだろう!」って出したいという欲求があったと思います。(笑)

※創業当初のクラウドファンディングページ。
新しもの好きなネット上の人たちの間で話題となり、目標金額を大きく上回った。

――そのプロトタイプに最初に反応した人たちというのは?

「新しいもの好きのイノベーター」「フットワーク軽く自分で工夫する人」です。

印象的だったのは、10代の子で髪が緑色で耳にピアスが開いていて見た目がヤンキーっぽい子が「COMP面白いっすね!」って言ってくれたことです。

「なんでCOMPに興味持ったの?」って聞いたら「オレ、車の改造とか大好きなんです!世界でオレしかやってないチューンナップが好きで!」と言っていました。(笑)
最初に支えてくれたのは、こうしたフットワークが軽くて「自分が世界で一番最初にやった」と言いたがる人たちですね。

――数回試して終わる人と、その後もヘビーユーザーになる人の違いはどこにありますか?

ヘビーユーザーは、「栄養を摂りたいけれど、栄養のことを考えたくない人」ですね。
栄養のことは気にしなきゃいけないけど、正直考えるのって面倒だし、自分が「適切な栄養を摂れているかどうか」なんてわからない。

――わからないですね。とりあえず野菜ジュースだけ飲むようにしていますが・・

それです。
みんなよくわかっていないけれど「野菜を食べなきゃ」とか「鉄分のサプリを摂取しようかな」とは思う。でも、実際に野菜を食べたらどんな栄養素が摂れるのかはほとんどの人が知らない。

そういう背景からか、ヘビーユーザーの中心は都会の一人暮らしの男性です。
自分で食事をどうにかしないと、時間の余裕も無いし、そんなに収入も多くない。そして、なんとなく「コンビニ弁当ばっかり食べていてはダメだろうな」とわかっている。
いまはこうしたユーザーさんに購入いただいています。

最初の製品となったパウダータイプ。

■「足りないものを補う」よりも「摂りすぎているものを減らす」


――商品ラインナップがパウダー、グミ、ドリンクタイプと増えていきましたよね。

最初にプロテインのように溶かして飲むタイプを販売し始めたら、「噛むことが大切」「食べるタイプが欲しい」という声をたくさんいただきました。

「噛んで食べるタイプの完全食ができたら面白いな」と思っていたら、偶然COMP利用者の中にUHA味覚糖の研究者の方がいらっしゃって、「僕COMP大好きなんです。弊社はグミサプリを作るノウハウがあるので、完全食のグミを作れますよ」って。

――それでUHA味覚糖さんとの共同開発が動き出した。

びっくりしたのが「試作品を作ってみたので、ちょっと食べてみてください」って持って来てくださったこと。早いな!って(笑)
正直、食べてみたら味はイマイチだったんですが(笑)、それでも「これ、作れるな」とイメージが湧きました。

――グミタイプの反響はどうでしたか?

実際に販売を開始したら「通勤時に食べています」とか「持ち歩けるのがとてもいい」って声が寄せられました。ちゃんとニーズを掘り起こして、商品開発のノウハウも活かされ、相乗効果が出たと思います。

やっぱり「熱意って大事だな」と思いました。
だって、この時点でUHA味覚糖さんにはCOMPの細かいレシピも伝えていないのに、その状態でプロトタイプ作るって凄くないですか?これ大事なポイントだと思うんですよね。

UHA味覚糖との共同開発で誕生したグミタイプのCOMP
手軽に持ち運びができる点や歯ごたえがほしいというユーザーに支持された。

――COMPのユーザーさんに伝えている事、啓蒙していることはありますか?

まず「足りないものを補うのではなく、摂りすぎているものを減らす」発想です。
サプリメントなど、世の中には「いかに足りない栄養分を補うか?」の話題が多いですよね。

でも、栄養と健康に関する因果関係が最も強いのは「生活習慣病」の話題です。
生活習慣病は、塩分や糖質や脂質など、摂取量や摂取方法で「摂りすぎ」の問題が深い。
高血圧、糖尿病、高脂血症、脳梗塞などを防ぐのであれば「摂りすぎない」ことが大事です。

――まずは何か摂りすぎていないか?から入って欲しい

現代の食文化って、特に糖質や塩分を摂取しやすいですよね。
正直、塩分多い方が美味しいし。

「みんな楽しくおいしいもの食べよう」となれば自然と「摂りすぎ状態」に陥り生活習慣病になりやすくなる。足りないものをサプリで補う、の真逆です。


■コンプでは「変化し続けるのを楽しめるかどうか?」が大事


――どういった形でその「摂りすぎない」を意識させようとしていますか?

COMPは必要な栄養素を満たしていますよって伝えるために、パッケージには表が書いてあって、これを見れば自然と必要な栄養価、栄養素と表示基準値を適切に知ることができます。

少なくともCOMPのユーザーさんは適切な栄養素の知識を得ている状態にする。
そこから世の中に拡がって、みんながちゃんと正しい選択を自然に出来るのが理想ですね。

健康に生きるために人類全員が知るべき情報で、知るのと知らないのとで健康寿命も断然変わるはず。それにも関わらず、義務教育で手厚く教えてもいない。

もっと若いうちから栄養リテラシーを上げるための活動は必要だと思います。

――最近は健康志向ですし、完全食の話題も増えて、重要性は伝わり始めた気がするのですが。

たしかにソイレントさんやベースパスタさん、ちゃんと思想をもって完全食を突き詰めようと考えている会社さんは増えてきたと思います。

今後はそういう会社さんと一緒に「美味しいだけじゃなくて栄養面でも満たすのがいい」って風潮を世の中に広めたいと考えています。

多くの人が栄養について関心がありながら、厚労省の定める食事摂取基準は知らない。
COMPのパッケージにはレシピ等と共にこうした必須栄養素に関する情報が記載されている。

――他の会社の話題も出ましたが、コンプ社内はどういう雰囲気ですか?

まずメンバー全員の根底に「誰もが自然に健康になれる社会」への目標があって。
でも1人1人得意な領域も違うし、考え方も生活スタイルもバラバラのメンバーで構成されていると思います。

この「バラバラさ」は意図的にそうしています。
今後、人々の生活は多様化し、自由であるべきという社会になる。COMPの社内文化もそうしたい。

根底の思想が同じでお互いが尊敬し合えるような関係性を全員が持つ。
その時、自分の専門外について認め合うキャパシティが必要になるので、採用する際もそこを見極めるようにしています。

――キャパシティがありそうか?の見極めって難しそうですね。

難しいですね、ずっと試行錯誤しています。
なんとなく「変化できそうな人かどうか」が大事な気がしています。

例えば大企業出身の人がCOMPに来たら、恐らく色々と整理・整備されていないことや、やらなきゃいけないことの多さに面食らうはずです。
そこで不満を感じるのか、「全部自分でやっていい、裁量がある!」とテンションが上がるのか。

「これは誰がやるんですか?」「いや、全部あなたにやってほしい」って言われたほうがモチベーション高くなる人ですよね、こういう人は変化を楽しめるタイプだと思います。

――どんなキャリアを歩んできても、根底で変化を楽しむかどうか。

はい、今後は社内にも生産関連部署などで食品メーカー出身の方を入れていきたいと考えていますが、もしかするとその人は大企業の安定した雰囲気に慣れた人かもしれない。

これまでの知見は生かして頂きつつ、COMPに入って“常に変化し続ける状況”を楽しめるか?というのはすごく重要な要素だと思います。

社内の雰囲気は?と質問して最初に鈴木さんが口にした言葉「サファリパーク」
「普通の会社なら成立しないくらい多様なメンバーになっていると思う(鈴木さん)」

■栄養を提供するインフラになり、「何かに夢中になる人」をサポートする。


――最後に「誰もが自然に健康になれる社会」が何年後かに実現したとして、その時コンプという企業がどうなっているか?を教えて欲しいのですが。

そうですね、当然そこを描くのが僕の仕事なんですが、
コンプは「栄養を提供するインフラ」になる会社だと思います。

インフラってどれだけ無意識に使えるか?じゃないですか。
道路がガタガタしていない、蛇口をひねれば水が出る。このインフラを「栄養」で提供するのがCOMP

――飲み水のように、必要な時に自然と提供されている。

はい、栄養摂取におけるレコメンドなのか、原材料の提供なのか、具体的な提供方法はまだわかりませんが、逆に言えば方法は問わないというか。

栄養について人がいちいち考えなくなって、結果的に人間らしい活動に集中できるような世界をイメージしています。

――よく優れた起業家が「余計な意思決定を減らすために毎日同じものを着ている」というエピソードがありますが、栄養摂取に関して同じようなものを提供する感じですね。

そう、元々COMPを作った理由がそれですからね。
僕が研究やプログラミングなど、やりたいことに没頭したかった。

COMPのキャッチフレーズは「完全に、夢中。」としています。
これは完全食に夢中、というマーケティング的な意味も含んでいますが、もう一つの意味があります。それは「あなたが夢中になるのをサポートする完全食です」という意味。

結局僕は最初にプロトタイプを自作した時と同じで原風景を突き進みたい。僕と同じような何かに熱中したい人をサポートする完全食がやりたいんです。

いろんな人の声を聞きながら、何がベストなやり方か?と原風景のアップデートを繰り返して、世の中が欲する製品として出し続けていきたいですね。


鈴木 優太 (すずきゆうた) 株式会社コンプ 代表取締役CEO
東京理科大学理学部・東京大学大学院薬学系研究科卒業。博士(薬学)。 医薬化学系メーカーの研究職として3年間勤務。長年一人暮らしをするなかで、手軽かつ健康的な食生活の難しさに悩んでおり、これを解決するためにアパートで『完全食』の研究開発に傾倒、半年かけて完成させる。何となく作り余った完全食の販売を始めてみたところ反響があり、完全食は世の中に求められている存在だと実感して2015年10月、株式会社コンプを創業。

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)