ブラック企業、働き方改革、労働に対する社会課題が政治やメディアで話題になるなか、ソニーグループが向き合っている労務管理。勤怠管理クラウドシステム「AKASHI(アカシ)」をサービス提供することで、実現したい社会とは。
ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社のクラウド・ネットワークサービス営業部リーダーの渡邊謙人さんにお話をうかがいました。
AKASHIの開発は、自社サービスの活用から
もともとソニーの非接触ICカード技術方式であるFeliCaを世の中に普及させていく活動の中で、2004年に「インターネットタイムレコーダー」という名称で、ASP型の勤怠管理サービスを世の中にローンチしました。
当時は『クラウド』という言葉も存在しなければ、就業時間の1分単位の記録もリアルタイムに集計する仕組みも、一般企業では概念の無い環境でした。
ただインターネット環境の整備と発展が日々行われている環境の中、膨大なシステム投資をする事なく、誰もが安価にリアルタイムな記録と管理ができる可能性が存在していました。
当社はFeliCaという誰もの手に行き届く可能性のあるICカードの規格と、インターネットサービスプロバイダとしてのバックボーンを有しており、その掛け算からインターネットタイムレコーダーが生み出されました。
他にも、リモートワークの走りとしてリモートVPNの2要素認証でFeliCaカードを使うサービス等も展開していました。
今思うと10年以上前の時代に、今まさに隆盛を見ているテレワークなど柔軟な働き方を実現させる為の勤怠管理ツールやセキュリティツールが諸先輩方により生み出されていた訳です。
10数年の労務知見が活かされた独自の開発視点
しかし当時は今のような「働き方改革」と言った話も勿論無いし、勤怠管理という行為自体がお金を生み出す何かではないので、立ち上がりはとても厳しい状況でした。とはいえ、サービス業界を中心に労務系のニュースも流れたり、日本人の働き方ってちょっとおかしいんじゃないかとか、人口が減っていく中で見直ししていかないと国としてどうなんだ、とかは話題としてありました。
少しずつ、少しずつ、日本の労務環境と共に成長、進化してきたので、ここ最近、働き方改革や、HRTechといった話題が増えてきたので「やはりこうきたか!」という、これまでの苦労からの変な嬉しさがあります。(笑)
市場があるから作ったサービスではなく、必要だから創り、時代の変化と共に育てたサービスなので、携わるメンバーを含め自信を持って提供できるものに仕上がっています。
時代の変化と共に労務管理も変化をしている
長時間労働問題により、大手企業が数多く摘発されていた時代は、労務管理の導入はネガティブな理由からの入り口がほとんどでした。働き方改革というキーワードが政治やメディアで取り上げられている今は、企業ブランディングの観点からポジティブに捉えられている側面も出てきています。
人材難が叫ばれる現在、会社の魅力を高め優秀な人材に自社を選んでもらう事が今後の成長の鍵を握る時代となりました。
そんな今では、社員を守り、企業を守るという労務管理だけでなく、人材採用ブランドを創る為の基本的な施策の一つとして話題になっています。労務管理が正しく行なわれていない企業はそれだけで「入りたくない」となってきているのは、本当に時代が変化してきた。と感じることでもあります。
時間の管理から変化を起こさなければならない日本企業
つい最近、工数管理機能をAKASHIに実装しました。結局のところ、なぜ時間管理をするのか?という問いに対しては、企業の生産性を最大化させる。という本質的な目的があります。グローバルのビジネスシーンでは当たり前のことも、日本ではまだまだ遅れていた概念が、徐々に大都市の大企業だけでなく、地方都市の方でも効率の良い働き方という点で注目されています。
ネガティブな労働管理から、ポジティブな自己生産管理へと変化してきています。時間の使い方、自分たちで生産管理を仕組み化していく。そんな風土が形成されつつあります。働き方改革のゴール、ではないですが、本質的な改革になってきたな、と。
雇用を生み出す企業は、マーケットを創らないといけない
日本は昔から雇用主義を強く主張するような文化があり、グローバルだと成果主義を主張するような文化がありました。どちらも間違ってはいないのですが、これからの日本の労働市場では、両方を主張しなければいけません。
雇用を生み出す、守る為には、マーケットを創らないといけません。端的に成果を挙げていかなければいけないということです。もちろん、同時に雇用も守らないといけない。
がむしゃらに長時間労働をさせ、成果を出す。ではダメなんですよね。笑
働く社員のワークバランスも考えてとなると、労働時間管理と生産管理から、個々の最大成果を結果として出さなければいけないので、両方を可視化していく必要がある訳です。しかも、組織管理のレベルではなく個人管理のレベルで。誰かに管理されないとできない、ではこれから多様化するビジネスシーンで生き残っていけないでしょう。
勤怠、労務管理のサービスから、ライフログプラットフォームへ
勤怠管理から生産管理へと進化してきているAKASHIですが、ゆくゆくは様々な時間を測定できるようなライフログプラットフォームになれると面白いんじゃないかと考えています。
働き方は10年前と比較しても多様化しています。リモートワークなんて概念ありませんでしたし、いまほど個人事業主やフリーランスのような働き方は目立っていませんでした。更に10年後となると、もう想像がつきません。また新たな働き方の概念が生まれていると思うと、勤怠管理の概念自体が古くなっている可能性もあります。
ライフタイムとビジネスタイムの融合。働くとはなにか。時間とはなにか。すべてを一元測定していくことで、労務管理ツールではなく、人生を豊かにするための時間測定ツールとしてAKASHIが進化する時、また同じく世界も動いている。
常に時代の流れと共に進化してきた私たちですから、これからも挑戦は続けます。