成長領域における企業の採用活動では、激しい産業構造の変化やグローバル化、テクノロジーの進歩により、様々な新しいビジネスの枠組みや、新しい職種に対応できる希少人材が求められている。
ところが、いざこのような希少人材を採用しようとすると、「そもそも、どのくらい希少なのかがわからない」ために、「本当に該当する人材がいるのか」「転職市場でどのくらいの流動性があるのか」「アプローチの方法が間違っているのか」もわからない、という課題に直面する企業が増えている。
そこでアスタミューゼでは、成長領域における希少人材の全体像とその希少性・流動性を、転職サイトに登録し
ている「転職顕在層」のみならず、高度な技術を持つ有望人材でありながら転職市場において流動性が低いとされる大学・研究機関の研究者や、特許技術を持つ企業在籍者といった「転職潜在層」に着目することで可視化した。
今回は、『未来を創る2025 年の成長領域』のうちのひとつである「エレクトロニクス」領域において、アスタミューゼが保有する『転職ナビ』人材データおよび研究テーマ/特許データを横断的に分析、その結果を紹介する。
16 年の「エレクトロニクス」領域における希少人材の年平均求人倍率は12.79 倍
半導体業界の好調を背景に「電子材料」市場などで高い伸び
「エレクトロニクス」領域における2016 年の『転職ナビ』求人倍率は、7 月に「研究職」の登録者増加により落ち込みを見せたものの、その後は上昇を続け、12 月には18.72 倍を記録、年平均では12.79 倍となった。
サイト別に求人倍率年平均を見ると、「電子材料(187.42 倍)」「高周波デバイス(90.13 倍)」「MEMS(89.99 倍)」などが高い伸びを見せ、スマートフォン・IoT 関連で追い風の吹く半導体業界の人材需要を反映した結果となった。
[グラフの集計方法]
● アスタミューゼが保有する『転職ナビ』人材関連データを基に集計
● 集計期間:2016年1月1日2016年12月31日
● 『転職ナビ』求人倍率:月初時点の公開求人掲載数/月間登録者数
■「エレクトロニクス」領域における転職潜在層/顕在層の比較
※「エレクトロニクス」領域における『転職ナビ』登録者数全体(2016 年)を100 として指数化
「光デバイス」関連市場で転職希望者が顕在化
「電子材料」関連市場でも希少人材の流動性が高まる
次に、大学・研究機関の研究者や、特許技術を持つ企業在籍者といった転職市場における流動性が低い「転職潜在層」に着目し、「転職顕在層」との比較を行った。
転職希望者の顕在化が最も著しいのは「次世代ディスプレイ」を中心とする「光デバイス」関連市場で、次いでAI 関連技術や組み込みソフトウェアエンジニアなど幅広い職種に活躍の可能性がある「ICT インテリジェント家電」市場となった。
また、特許発明者に厚い層を持つ「パワー半導体」市場でも転職希望者が顕在化し始めており、今後「電子材料」関連市場での希少人材の流動性の高まりが期待される。
[表の集計方法]
● 有望成長市場:アスタミューゼが独自に定義した『未来を創る2025 年の成長領域』のうち、「エレクトロニクス」領域を構成する有望成長市場群
● アスタミューゼ保有の下記データを独自の検索定義により抽出・分類
・研究者:科学研究費助成事業科研費に採択された研究テーマ(研究開始年2007~2016 年の代表研究者のべ人数
・特許発明者:日本で出願された特許出願(出願日2007 年1 月1 日~2016 年12 月31 日)の筆頭発明者のべ人数
・転職顕在層:『転職ナビ』登録者数(2016 年)を基に推計
● 「エレクトロニクス」領域における転職ナビ登録者数(2016 年)を100 として指数化