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「人工知能」市場とは?

text by : 編集部
photo   : shutterstock.com

astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「人工知能」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。

 

「人工知能」市場について

米国Google社が2015年6月23日に発表した“A Neural Conversational Model” と題した論文が、ネット上で話題になっている。そこには、ヒトと機械(人工知能)とのこんな興味深い対話記録が掲載されている。

 

Human: what is moral ? (道徳とは?

Machine: what empowered humanity , what intellectualthe essence is .(人間性を高めるもの、本質は知性です)

Human: what is immoral ? (不道徳とは?

Machine: the fact that you have a child . (あなたが子どもを持っているという事実です)

…中略(延々と道徳論を交わしている)…

Human: alright , morality ? (倫理観とは?)

Machine: integrity . (誠実です)

Human: what is integrity ? (誠実とは?)

Machine: i ’m sorry , i don ’t know what else tosay . (すみません、他に何と言っていいのか)

Human: be moral ! (道徳的になれ!

Machine: be a man ! (人間的になれ!)

Human: i really like our discussion on morality and ethics  (道徳と倫理について議論したいだけなんだ

Machine: and how i ’m not in the mood for a philosophical debate . (哲学を論じる気分はありません)

Human: what do you like to talk about ? (何について話したい?)

Machine: nothing . (何も)

 

ネット上には、「道徳談義にイライラしたコンピュータがついに怒った」「ここまで来たら怖い」という書き込みが溢れたが、論文をよく見ると、映画の台本を訓練データとして与えて言葉を学習させたニューラルネットワーク(ヒトの脳の層構造を模した人工知能の一種)と研究スタッフと対話である。ITヘルプデスクのテキストを訓練データとした場合には、技術サポート的な回答ができている。つまり、訓練データから言葉の相関関係や対話パターンを学習し、それに基づいて、質問に合わせて知識を再編して、次に来るべき文章を予測して返す(sequence to sequence framework)、認知コンピューティング(cognitive computing)の例である。

ヒトの言葉を理解するという意味では、自然言語処理の一種であり、Apple社の Siri やMicrosoft社の Cortana と似ているが、今までは技術サポートマニュアルのように、応対目的が明確なテキストを訓練に使っていたものが、今回は、映画の台本というノイズの大きいテキストからも、コンテクストの抽出ができた成功例である。

なお、コンピュータプログラムによって、疑似的な人格を作り出せる例は、既に1966年に登場したELIZAに見られる。

ヒトの知能に匹敵するほどの人工知能は未だ実現していないものの、機械学習をベースに、データマイニング技術や音声・画像認識技術、自然言語処理技術、情報検索技術など、要素技術は既に活用されている。

Googleは2014年1月、英国の人工知能ベンチャー DeepMind社を5億ドルで買収。Facebookは2013年末、人工知能研究所を設立したほか、2015年1月にはカルフォリニアのスタートアップベンチャー wit.aiを買収。中国のBaidu(百度)社も2014年5月、シリコンバレーに人工知能研究所を開設。

現在最も優れた人工知能といわれるIBM社の「Watson」は、ヘルスケア分野への展開を重視し、「Watson Discovery Advisor(新薬探索支援)」や「Watson for Oncology(がん医療支援)」、「Watson Genomic Advisor(ゲノム医療アドバイザ)」などのソリューションを提供している。2015年4月には、ヘルスケア分野のビッグデータ事業部門として、「IBM Watson Health」を立ち上げたと発表、iPhoneやApple Watchユーザからヘルスケア関連データを集め、「Health Cloud」に保存し、「Watson」で解析するというサービスを始める。IBM社は、Apple社との提携強化、Johnson&Johnson社やMedtronics社との提携、ヘルスケアクラウドやソフト企業であるExplorys社とPhytel社の買収も併せて発表し、ICTヘルスケア分野への注力を一気に進める構えだ。

日本では、人工知能の本格的事業化は未だ始まっていないが、「ニコニコ動画」や「ニコニコ超会議」などで知られるドワンゴ社が国内の最前線研究者と組んで人工知能研究所を設立、脳全体の計算機能の再現を目指す「全脳アーキテクチャ」という研究アプローチを軸として研究を始動したほか、国立情報学研究所を中心に、東大入試を突破できる人工知能を作ろうという「ロボットは東大に入れるか。 」(東ロボ)プロジェクトのようなユニークな活動が着々と進んでいる。

2006年以降、Geoffrey Hinton が提唱したオートエンコーダやディープ・ビリーフ・ネットワークが深層学習(deep learning)やそのコアをなす表現学習 (feature learning、representation learning)へと発展を遂げたことで、近年の人工知能ブームを呼び起こしたわけだが、米国Vicarious(ヴァイカリアス)社は、深層学習とは別のアプローチで、大脳新皮質の神経回路をコンピュータ内に再現することを目指し、2014年には、テスラモーターズの創業者 イーロン・マスク、Amazonの創業CEO ジェフ・ベゾス、Yahooの共同創業者 ジェリー・ヤン、Skypeの共同創業者 ヤーヌス・フリース、SalesforceのCEO マーク・ベニオフら錚々たるメンバーから続々と出資を得て、注目を集めている。

ごく最近までできないと思われてきたヒトの脳を超える人工知能(強いAI)が、近い将来、現実のものになるかもしれない。

とりわけ、日本が得意とするヘルスケアやロボット、自動車、MEMSなどの分野で活躍できる、高度な人工知能が日本発で誕生することが強く期待されている。

 

「人工知能」市場のグローバル市場規模

Tractica社が2015年4月に発表した「Artificial Intelligence for Enterprise Applications – Deep Learning, Predictive Computing, Image Recognition, Speech Recognition and Other AI Technologies for Enterprise Markets: Global Market Analysis and Forecasts.」では、世界の人工知能市場規模が2015年の2億250万ドルから、2024年までに111億ドルへ増加と推計している。

astavisionでは、2015年時点での機械学習・深層学習関連のグローバル市場規模を、300億米ドル(≒3.6兆円)と予想している。うち、今後の人工知能の基礎となる深層学習・表現学習に関する部分は60億ドル程度と見込む。

今後加わるであろう深層学習・表現学習以外の脳神経科学由来の新技術も合わせ、年間平均成長率(CAGR)を35%と仮定し、2025年段階での人工知能関連のグローバル市場規模は、約1200億米ドル(≒14.4兆円)と推計する。

 

近日公開予定の「人工知能」市場コンテンツでは、この市場の最新技術や関連して発展する市場、活躍できる職種などを紹介する。

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