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人工衛星・ロボット・ARなど成長市場における地理空間情報活用の可能性を提示~「G空間EXPO 2015」レポート~

text by : 編集部
photo   : 編集部

11月26日から28日までの3日間、東京・お台場の日本科学未来館で開催された「G空間EXPO」。地理空間情報高度活用社会(G空間社会)の実現へ向けて産学官が連携し、地理空間情報や衛星測位の活用を推進するこのイベントでは、人工衛星やロボット、AR・VRといった成長市場における地理空間情報活用の可能性が提示された。

そこでastavisionでは、ロボット、人工衛星の分野から出展していたイノベーターたちがどのような市場や企業に注目しているのか、話を聞いてみた。


 

カメラの位置姿勢を計測するための高精度視覚マーカ

田中秀幸さん(産業技術総合研究所 ロボットイノベーション研究センター サービスロボティクス研究チーム 主任研究員 工学博士)

田中さん

単眼のカメラで位置姿勢を簡易に計測できるツール、視覚マーカ。産総研では、「正面付近から観測したときの姿勢推定精度が悪い」という従来のARマーカが抱えていた課題を解決するため、マイクロレンズアレイを用いて「見る角度に応じてパターンが変化する視覚マーカ」を開発し、実用化を目指している。

―あなたが注目している分野は?

もともとはロボット制御の分野で、ロボットの物体認識や位置計測を支援するツールを作ろうと始めた取り組みですが、AR、測位、計測などへも広く応用が可能と考えています。

ARやゲームの分野では、CGキャラクターの表示を安定化することができます。これによって、デジタルコンテンツの精度やリアリティの向上が期待できます。

計測の分野では、カメラ1台と複数のマーカを用いた簡易的なモーションキャプチャシステムを作ることもできます。これはカバン1個に入るコンパクトなシステムですので、作業現場に持って行ってその場で動作計測・解析を行う、といったことも可能になります。

―あなたが注目している企業は?

高品質なマーカを製造する光学機器メーカー、高性能な画像処理プログラムを作るソフトウェアメーカー、そして、カメラも含めたシステム(アプリケーション)を作り上げ、広く社会に展開できる力を持った企業です。大量に世の中に出ていくことによって、面白い使い方を思いつく人が出てくると思いますので、それを楽しみにしています。


 

CanSat Mappingで拓く宇宙工学の未来

平澤遼さん(NPO法人 大学宇宙工学コンソーシアム:UNISEC 学生代表/慶應義塾大学大学院 修士2年)

平澤さん

空き缶サイズの模擬小型人工衛星「CanSat」は、本物の人工衛星開発に向けた教育プログラムとして世界的に普及しており、気球やロケットなどで数百~数千メートル上空まで運び、パラシュートなどで降下させる競技大会も行われている。

UNISEC(大学宇宙工学コンソーシアム)と首都大学東京 渡邉英徳研究室によるCanSat Mapping製作委員会は、この競技を行ったCanSatのGNSS(全地球航法衛星システム)移動軌跡の情報を3D地球マップ上に付与し、国際的に共有する、というこれまでにない試みに取り組んだ。

―あなたが注目している分野は?

いま、人工衛星と、地上のアプリケーションと結び付ける、ということに関していろんなところがチャレンジしています。例えばJAXAなどは、地上のインフラが壊滅状態になったときの通信手段として人工衛星を使う、ということに取り組んでいます。学生だとこういった大きなアプリケーションを作るのは難しいかもしれませんが、ひとつひとつの技術レベルでは、JAXAやNASAでコアな技術として使ってもらえるようなものを作っていきたいと思っています。

―注目している企業は?

最近では宇宙ベンチャーに資金が集まっているという状況があり、自分の周囲にも宇宙ベンチャーでやっていこうという人は何人かいます。小型人工衛星は3億円くらいで作れるのですが、3億円というと、ヘリコプターと同じくらいです。そう考えると、アマゾンのような会社が小型人工衛星をいくつか持つようになるという未来は想像しやすいですよね。こういうところに乗り出していく企業には注目しています。


 

astavisionでは今後「GPS・衛星測位システム」「仮想現実(AR・VR・SR・MR)・3D投影」などの成長市場コンテンツを順次公開予定。

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