Interview

映像解析プラットフォームSCORERが、世界中の「目」を設置する ――株式会社フューチャースタンダード 鳥海 哲史

text by : 編集部
photo   : 編集部,株式会社フューチャースタンダード

「専門知識も、専用機材も持たない中学生が映像解析をする未来」
2017年12月、株式会社フューチャースタンダードが発表した「SCORER Cloud Processing」は、初期費用ゼロで映像解析AIが使え、カメラを設置してクラウドに映像を送るだけ。
AIを作るのではなく、コスト安く「使う時代」とその先に何が拡がるか?代表の鳥海さんに伺いました。

鳥海 哲史 (とりうみ さとし) 株式会社フューチャースタンダード 代表取締役
東京都出身。東京理科大学、東京大学大学院を卒業後、2009年にシティグループ証券株式会社に入社。日本株プロップトレーダーとして活躍しながら、2014年に副業として株式会社フューチャースタンダードを創業。2015年に資金調達を得て専業体制に移行し、映像解析プラットフォーム事業で幅広い用途のカメラソリューションを提供している

■カメラやシステムを個別に集めなくていい映像解析プラットフォーム「SCORER」


――まず、フューチャースタンダードが提供するスマート監視カメラシステムについて教えてください。

SCORER(スコアラー)という映像解析プラットフォームが全体像としてまずあります。
カメラなどのセンサーでデータを取得して集約する際に、非常に幅広い分野の知識が必要となる。そこをワンストップで提供できることがSCORERの売りです。

SCORERの提供ソリューションの一つとしてスマート監視カメラシステムがあります。
このシステムをその実現する重要要素として、高度な画像解析があります。
クラウド側で映像解析を実現するために、昨年12月映像解析のSCORER Cloud Processingをリリースしました。

――SCORER Cloud Processingの料金などを見たのですが、かなり安価で使いやすさに配慮していると感じました。収益というよりなるべく広い人に使ってもらうことを目的としている。

はい、一言で言えばAWS(Amazon Web Services)を目指しています。
昔ながらのデータセンターやSI事業ではなく、あくまでプラットフォームとして使い方を提示し、使って頂いた分だけ課金する。

AWSというのは、ある意味真のプラットフォームだと思います。
その上でビジネスをして自分たちで儲けられる。制約条件の少ない場みたいなもの。
このレベルで展開しているものはAWS、Microsoftの2社と、最近はfacebookくらいしかいないと考えています。

SCORERがそうなるためには、まずカメラの置き場所合戦が必要でした。
それがたまたま監視・交通量調査という用途だったので、ソリューションを提供しはじめたという流れです。将来的には、監視や交通量調査以外にも活用できるものだと考えています。


■工場、食品管理、海外のスマートシティ・・映像解析の有望市場


――言われた通り、監視や交通量調査、用途が幅広いので予想外に感じたり、もう少し先の展開だと考えていた業界から相談されることもありますか?

工場ですね。
工場のIoT化という流れの中で、最近は産業機械にも回線接続できるものは増えてきましたが、実際には既存の機械を大事に使い続けており、そういう製品に乗り換えません。

要は、既存で動いている開発・生産ラインを崩さず、データを取得したいというニーズがある。
その時に「カメラだけつけたい」という相談を頂くケースは多いです。

工場内では機械を人が目視管理している、ここをカメラに代替して、パトライトや配電盤を見るとか、ラインを流れてきた食品の「焼き色がおかしい」といったフードディフェンス(食品への異物混入防止)、人の動きを検知して熟練者と初心者の作業スピードを自動的に計測するといった話もあります。

カメラを街中に設定し、あらゆるデータの流通を担うことができる。
1つ1つのデータは価値が薄いですが、データの「接続性」に価値があります。
「100万台のカメラすべてがSCORER対応です」という状況がすごく大事。

何かが起きる時って、大抵事件や事故など良くないことです。
その起きる頻度は決して高くないけど、いざ発生した時はSCORERが大活躍する。

カメラの接続網を張り巡らせ、フューチャースタンダードが持っておけば自然に活用方法が生まれる。例えば電柱や信号機全てにカメラをつければ自動運転にも使えるなど、幅広い分野で「重要なカギ」に僕らがなれる。

――そういった都市インフラレベルの話だと、海外からもニーズがありそうですね。

たしかに、タイやインドから相談を受けています。
「新しく創る都市に全部カメラ入れたい」というスマートシティ構想ですね。
監視カメラで終わらせず、取得データをあらゆることに使いたいという話をよくうけます。

一応国内でも、今年の春頃から1台あたり初期費用0円、利用料1,000-2000円/月のような形でカメラをばらまく予定です。一昔前のインターネット回線でルーターを配っていた会社がありましたが、それと同じような展開を他社のカメラでやると思います。

設置したカメラから映像がアップロードされると、自動的に映像解析AIが分析する。 利用環境の構築や、機器の設定なども専門的な知識が不要。


■未来の普通を作りたい。中でも映像のイノベーションが大きいと思った。


――鳥海さんがこのフューチャースタンダードを起業した理由というのは?

僕は自分が欲しいもの、やりたいこと、という軸で起業タイプではありません。
社名の「フューチャースタンダード」が表わすとおり、未来の普通が作りたい。

その未来の中でも「大きな変化点を味わう」のが楽しい。
それがたまたま映像の領域だった、という感じですね。

―そこで映像解析的・視覚的なものを選んだのは?

映像においてイノベーションが起きる原因は4つあると考えていました。

1・・・カメラが安くて簡単に使えること。これはスマホの登場で実現しました。
2・・・映像データは容量が大きい。だから映像データを扱う保存容量コストが安くなること。
3・・・安く簡単に扱えるハードウェアの出現。これはRaspberry Piです。
1から触っていましたが、2になって急にカメラを扱えるレベルのものになった。
「これでいける」と確信しつつ、1つ足らない。

4・・・通信です。どこでもデータが取得できるためには?に応える必要がある。
僕は、「上り回線はたくさん余っている」という仮説を持っていました。
スマホでダウンロードばかり使われて、アップロード領域は余っているはずだと。
ここをリサーチしたらどうやら間違っていないということがわかった。

そこで2年前から展開したという流れです。
通信まで押さえればボトルネックが全部解消し、劇的に変わると考えていました。

「安く・速く・ちょうどいい」映像解析システムをテーマに最新技術を組み合わせた「SCORER」
現場で映像データ収集と解析を行う「SCORER Edge」、12月に発表した映像解析エンジン「SCORER Cloud Processing」と、
映像データをアップロードする際に用いる「SCORER LTE」で構成されている。


■映像解析コストを下げる挑戦と、技術を「つなぐ」ことにこだわった戦略


――昨年の夏に資金調達を発表されて、ここから先の数年でフューチャースタンダードが文字通りAWSに並び称される存在になるために必要なものとは?

昨年12月に出したクラウド映像解析、これが3年かけて作りたかったものとしてまずひと段落した状態です。今後は収益化しながらクラウド映像解析のコストを解決するため更に資金調達していくと思います。

現状、クラウドの映像解析コストは高いのですが、自社でホスティングするとか解析リソース自体を分散化するとか、ブロックチェーン技術を映像解析に活用する事の模索とか、いろいろ考えています。

――作りたいものはやっとできた、今後がサービス提供フェーズ。

はい、これまでソリューション提供企業だったのが、プラットフォームサービス提供会社になる。
世界中で“使える”ようになります。
今後はソリューション提供で事例を溜めつつ、そこからプラットフォーム利用する顧客を呼ぶというサイクルを作る段階です。

――ちなみに“映像解析する際のアルゴリズム”はどうなっているのでしょうか?

うちは、アルゴリズムを独自開発していません。
リコーやSenseTimeさんなど各社から収集しています。まれに部分的に作る事もありますが。

各社、知財面もケアして先行的に開発されていますから、僕らは同じことをしてもあまり価値が出ない。それなら、しっかり各社が作ったアルゴリズムを使わせてもらう「パートナー」になったほうがいい。

これは一番最初から徹底した考え方です。
創業時のCTOも含め、映像解析の専門家は誰もいません。
コモディティー化して、世界で数10社が作っているようなものは後発で自社開発するより使わせてもらうほうが良い。

うちらはつなぐ会社。テクノロジーのアグリゲーター。
そこに特化したほうが優位性は圧倒的に出る。
特にDOCKERなどの仮想化技術ノウハウは相当溜まってきて、日本でも随一の技術力を誇っていいのではと考えています。

ウェブサイト上ではアルゴリズム一覧も公開している。
AIは「作る」から「使う」へ、のメッセージが表示されインタビューのとおり
Microsoft Azure APIやRICOH、SenseTimeなどインタビューのとおり各社のアルゴリズムを使用できる。


■1個100円のカメラが世界中にばら撒かれて「目」となる。


――鳥海さんが、フューチャースタンダードの事業の先に見ている「こういう世界が実現する」と脳内に描かれているものはありますか?

街中に、人間の目を代用する「機械の目」が自然にある状態です。
ロボットや、何の変哲もない壁やテーブル、具体的にどこかはわかりませんがこれから3年、5年で圧倒的に数が増えるのは確実です。

数が増えればそれを使って映像解析したい人も自然に増える。
そのために必要な周辺技術も育つ。自然と5Gなどは一気に花開くでしょうし、無線技術も通信だけじゃなく無線給電などもですよね。

――SCORER Cloud Processingが「当たり前」な世の中になると専門エンジニアだけじゃなく、中学生くらいでもさっと映像解析をコスト安くやるようになるのかなと。

おっしゃる通りです。
コードレスの流れですね、A社とB社のアルゴリズムを同時に駆使するんだけど、その時コードは書かずに済む。

まるで「絵を描くように」映像解析するんじゃないかなと思います。

その世界に必要なのは「使い勝手の敷居が下がる」だけでなく、価格が重要です。
誰でも当たり前に使う、その時コストはほとんど気にならない。そうなれば起爆剤になるので、僕らも値段を下げることが一番重要だと考えています。

カメラの設置コストが1台あたり100円になり、世界中にカメラがばら撒かれたらプライバシーや個人情報などが問題になりがちですが、現在は総務省が主導してルール作りも進んでいますし、誰が見たかをきちんと管理できるようにするテクノロジーも進化しています。
その先には今じゃ想像できないことが起こると思います。


鳥海 哲史 (とりうみ さとし) 株式会社フューチャースタンダード 代表取締役
東京都出身。東京理科大学、東京大学大学院を卒業後、2009年にシティグループ証券株式会社に入社。日本株プロップトレーダーとして活躍しながら、2014年に副業として株式会社フューチャースタンダードを創業。2015年に資金調達を得て専業体制に移行し、映像解析プラットフォーム事業で幅広い用途のカメラソリューションを提供している

インタビュー:波多野智也(アスタミューゼ株式会社)

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