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歯科臨床実習用ヒト型患者ロボットシミュレータ「SIMROID」

text by : 編集部
photo   : shutterstock.com

この記事は2013年9月11日にastamuse「技術コラム」に掲載された内容を再構成したものです。

医師には、正確な知識と技術はもとより、患者の表情や動作に対するきめ細かい配慮が求められている。 歯科教育現場においてはこれまで、歯を削るような実習には人間の顔面を模擬した「ファントム」と呼ばれるマネキンに人工模型の歯を設置したものが使用されてきた。

しかしこの「ファントム」には、人体に極めて似ている外観や反応(表情・動作・会話)、対話形式での臨床実習機能はない。 また、実習生が不適切な診療を行ってもマネキンの表情や動作に反映されることがなく、人間が相手である実際の治療現場と大きく異なっているという問題があった。そこで、歯科医師の養成の場において、リアルな診療を再現するインタラクティブな教育シミュレーションシステムが望まれていた。

日本歯科大学病院の研究成果を基に、モリタ製作所が開発に成功した「SIMROID」は、人に非常によく似た外観と反応機能を有する患者ロボットと、この患者ロボットを用いたトレーニングシステムだ。

医療実習においては、患者ロボットの動作内容を定めた複数の医療用実習シナリオを用いる。これまでの模擬患者を対象とする臨床実習前教育では、注射や虫歯の治療など、痛み・出血などを伴う実習は不可能だった。 「SIMROID」 は、実習生の声に従って口を大きく開けたり閉じたり、痛いときに左手を挙げる動作をしたりするほか、眼球を上下左右に動かしたり、まつげ・口・首を動かすこともできる。さらに、挨拶など決まったフレーズの対話が可能。 誤って胸を圧迫した場合にはハッと声を発する。これらの反応を組み合せることにより、痛みや不快な表情や嘔吐反射を再現させることができる。

また、実習中の様子を2台のカメラで記録することにより、治療内容に加えて術者の診療態度についても客観的に評価することが可能となる。

こうした技術の活用が、患者本位の医療の実現に寄与することを大いに期待したい。

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