astavision

4万人超のエキスパートを活用した新規事業の創造支援―株式会社ビザスク 宮川晶行さん

LinkedIn Google+

オープンイノベーションの促進および新産業創出のエコシステム構築に取り組む企業に着目し、その事業と目指す世界観をご紹介する「未来を創るオープンイノベーター」特集。

前回の『eiicon』に続き、2回目の今回は「スポットコンサル」というユニークな切り口で、各界のエキスパートに1時間からピンポイントに相談できるサービス『ビザスク』及び『VQ』を運営している株式会社ビザスク オープンイノベーション推進室 室長の宮川晶行さんにお話を伺いました。

 


 ■創業者の実体験から生まれた「スポットコンサル」


―ビザスクでは、Webプラットフォーム上でセルフマッチングする「ビザスク」と、専任プロジェクトマネジャーがサポートするフルサポート・マッチング「VQ」という2種類のスポットコンサルサービス を展開していますが、これはどちらが先だったのでしょうか?

 Webプラットフォームの「ビザスク」のほうが先です。その後、新規事業開発の方から、参入を検討している業界について調べたいとか、新規製品のターゲット顧客にインタビューしたいといったニーズが出てきたため、ビザスクのプロジェクトマネージャーが依頼者からの案件に対して適切なアドバイザーを探して、提案するという形で始めたのがフルサポート・マッチングの「VQ」です。

ビザスクでは、Webプラットフォーム上でセルフマッチングする「ビザスク」と、
専任プロジェクトマネジャーがサポートするフルサポート・マッチング「VQ」という2種類のスポットコンサルサービス を展開している


―もともとプロジェクトマネージャーによるフルサポートマッチングを提供していたなかで、手軽なWebサービスを始めたのかと思っていましたが、逆なんですね。では「スポットコンサル」に着目したきっかけというのは、どういったものなのでしょうか?

代表(代表取締役CEOの端羽英子氏)が前職を辞めて起業するタイミングで「個々人が持っている経験や知識をつなげられないか」という想いを実現するためにあるECサービスを検討していたときに、ああでもないこうでもないと悩んでいた時期が2、3ヵ月ありました。
その後、EC事業を立ち上げた経験のある方に相談したところ、1時間にわたってひたすらダメ出しをされるということがあったそうです。「こんなのやっても2000%失敗するよ」という話をされて。でもその経験が非常に価値ある時間だったと。

「2、3ヶ月悩んでいる時間がもったいなかった、すぐに聞きに行けばよかった。こういったコンサルティングを1時間単位で提供するサービスは需要があるのでは?」「そして、このアドバイスは経験者だからできることで、経験を活かしてつないでいくことになるはずだ」という気付きがあって、これがスポットコンサルというサービスが生まれるきっかけになりました。

 

―代表ご自身の体験から生まれたサービスということですね。では、いまスポットコンサルを利用されているのはどういった方々なのでしょうか?

起業家から中小・ベンチャー企業、大手企業まで幅広いですが、特に大企業の新規事業開発や研究開発の方が多いですね。新規参入しようとする市場の関係者から業界動向をヒアリングしたい、顧客の課題を把握した上でのテーマ創出につなげたいなどのニーズが多いです。

たとえば、コニカミノルタさんのBusiness Innovation Center Japanという新規事業開発の部署があるのですが、日本初となる体臭チェッカー「Kunkun body」開発のため、調香師や臭気判定士といった方々からヒアリングを行ったという事例等があります。自社のネットワークではたどりつけない知見に、ビザスクだからこそ素早くリーチすることができると各利用企業様には喜んでご利用いただいています。

 


■海外専門チーム VQ Globalを立ち上げ


―顧客は大企業が多いということですが、アドバイザーの方は個人ですよね。アドバイザーが個人であることのメリットはどのようなものがありますか?

現在4万人超のアドバイザーがいますが、7割が現役の企業在籍者、2割がシニアOB/OG、1割が個人コンサルタントやフリーランスのような方になります。特に現役の企業在籍者からヒアリングができることは、本やネットなどの既に古くなった情報では得られなかったり分からなかったりすることに対して、新鮮な情報が得られる、ダイレクトに1次情報にリーチできるといったメリットがあります。

アドバイザー目線では、自分の経験に価値があるということに気づいていない方もいて、「こういった依頼が来ているので一度お話いただけませんか」というお声がけをしても、「いや自分なんて」と遠慮される方も多いので、こういった経験にはこんな価値があるんですよ、ということを伝えて知見の価値に気がついてもらいながらご協力いただいています。

4万人超のアドバイザーのうち、7割を現役の企業在籍者が占めている


―単発で気軽に利用しやすいのが特徴のスポットコンサルですが、リピートされる方もいらっしゃるのでしょうか?

そうですね、たとえば1度ヒアリングしたアドバイザーからの意見を参考に事業アイデアをブラッシュアップして、また1ヶ月後に同じ方に1時間フィードバックをもらって…という使い方をされる方もいますし、先ほどのコニカミノルタさんのように、新規事業のアイデアから製品化の各フェーズごとの課題に対して複数のアドバイザーに相談されるケースもあります。

 

―地方や海外関連の利用はどのくらいあるのでしょうか?

 国内ではやはり首都圏の比率が高くはなりますが、地方でも幅広くご利用いただいています。現在では全国7金融機関と業務提携をしながら地方でのご利用を増やし、地域を超えた知見活用を通じて地方創生を推進しています。海外案件は常時1~2割程度を占めており、クロスボーダー案件も徐々に増えています。日本企業の海外アドバイザーへのヒアリングは、北米や欧州、ASEANといったメイン地域に加えて、南米やアフリカの現地アドバイザーへの相談なども発生しており、バラエティに富んでいます。

 

本格的に海外市場開拓を進めていくために、今年の5月にはVQ Globalという海外専門チームを立ち上げました。発足3ヵ月ほどで、既に30ヵ国以上のアドバイザーをマッチングしており、どんどん広がっている感じですね。今後更に海外アドバイザー数も増やしていきたいと思っています。

 


■定型化できない「知見」を可視化する


―アドバイザーの方のスキルは、どのような形で可視化しているのでしょうか?

経験を棚卸しして登録する経験登録フォームが用意されており、それを入力することで自身の経験が可視化されるようになります。空白フォーマットではなかなか書けないため、自身で質問事項を選択しながら、入力してもらう形をとるなど、改善を重ねています。

また、フルサポート・マッチングでは、企業側がどういう背景で、どんなゴールを目指していて、どういうことを聞きたいのかということを洗い出すため、プロジェクトマネジャーがサポートしています。そのニーズをベースにアドバイザーからヒアリングをすることで、また知見の可視化につながっていく、という流れもあります。

ワークショップやテーマ型連続勉強会の提供、アイデアから事業化までの伴走支援も行っている


―しかし現役の方が中心となると、副業禁止や守秘義務といった障壁がありそうですが。

現在は世の中の働き方改革/副業解禁の流れも後押しして、登録者はどんどん増えています。企業によっては就業規則上難しいというケースもありますが、我々が連携しているNPO法人(Teach For Japan、Bridge For Smile、国連WFP協会)に寄付するという形をつくることで、就業規則を気にせず活躍いただく仕組みもつくっています。

自分の経験を見つけてもらえたことに対する喜びであったり、人の役に立つ経験を通して、自分自身の学びにつながっていく感覚を持っていただけるので、寄付という形でも喜んで参加されるアドバイザーの方は多くいらっしゃり、各団体への寄付金額も順調に増えている状況です。


―お話を伺っていると、一種のクラウドソーシングともいえるサービス形態ですよね。クラウドソーシングだと大きなサービスがいくつかありますが、そういったサービスとはどのように差別化しているのでしょうか?

そうですね。いわゆるクラウドソーシング系のサービスだと、ある成果物を求めていたり、エンジニアのこのスキルがほしいですといった、リソース不足をアウトソースすることが中心だと思います。

しかし我々のサービスは、いわゆるリソースのアウトソースではなく、経験をベースに価値提供いただくものです。そして、スキルが分かりやすいエンジニアだけでなく、それこそ営業やマーケティングを10年やってましたといった方々の経験も幅広く活かせるプラットフォームなので、どなたでも自分の経験を価値に変えることができるのです。

幅広いビジネスの経験を可視化して、マッチングさせる仕組みを持っているというのが我々の強みだと思っています。

―「知見」というものをデータベース化し、マッチングしていく点では、テクノロジーも重要になってくると思いますが

そうですね。10人ほどエンジニアが日々開発・改善に取り組んでいます。アドバイザーの検索システムをいかに探しやすくするかなど、日々改善していっています。

ユーザーから意見はもちろん、ビジネスサイドからも使う中で気がついた点をどんどん共有ことで、改善していますね。

 


 ■「働き方改革」でHR領域にも展開


―今回は「未来を創るオープンイノベーター」という特集でお話を伺っていますが、昨今のオープンイノベーションの潮流の中で、ビザスクはどういう立ち位置であるとお考えですか?

製品のサイクルも市場のスピードもどんどん早くなっていますよね。2,3ヶ月考えているあいだに市場が一気に変わってしまったとか、想定していた仮説が市場に出たらズレていたみたいなケースがあると思います。スポットコンサルは、そのタイミングで必要な知見に出会えるサービスです。スポットコンサルを通じてスピード感を持って顧客課題や市場動向を掴んでもらうことで、市場にあった事業を立ち上げるサポートができているというのがひとつ。

もうひとつは、企業で新規事業を始める際に、うまくアイデアが出ないとか、アイデアから事業化までのフェーズでつまずいてしまう、といったようなことが往々にしてあると思います。そういった場合にはワークショップやテーマ型連続勉強会の提供、アイデアから事業化までの伴走支援など、一緒に事業を創るといった支援もしています。外部知見活用を上手く進めて頂くためにも周辺支援するような取り組みですね。

 

―最後にビザスクの今後の展望をお聞かせください

ひとつは先ほどもお話しした海外展開ですね。「世界中の知見をつなぐ」をビジョンにしている通り、今後日本企業の海外調査、海外企業の日本調査をベースに、どんどん展開していきたいと思っています。

ビザスクでは、海外展開に加え、「働き方改革」の視点でヒト・組織の側面からの支援も見据えている

それから、やはりスポットコンサルだけではなく4万人超を誇る知見データベースやこれまでの支援から培ってきたノウハウを活かして事業の伴走をしていくということ。

それともうひとつ、「働き方改革」などヒト・組織の側面からの支援も行っていきます。知見の棚卸しや自律したキャリア支援というのは日本企業において人生100年時代と言われる中で大事なテーマです。副業解禁も含め、人事部の方からご相談をいただく機会も増えており、ビザスクならではの外部接点を通じた支援を行っていきたいと思います。


 

[Profile]
宮川晶行 株式会社ビザスク オープンイノベーション推進室 室長
2015年よりビザスクの「世界中の知見をつなぐ」というビジョンに共感し参画。事業会社における社外の知見活用によるオープンイノベーションの推進と新規事業の支援を主担当。
前職では化学メーカーのクラレにてガスバリア素材の国内およびアジア顧客への営業に携わる。新規用途の開拓にも取り組み、次世代自動車部品開発のための異分野4社による共創プロジェクト等を推進。

モバイルバージョンを終了