2015.07.31 FRI 「地域包括ケア」市場とは?
text by : | 編集部 |
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photo : | shutterstock.com |
astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「地域包括ケア」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。
「地域包括ケア」について
地域包括ケアシステムとは、高齢者が住み慣れた地域に住みながら、その地域で医療サービスや保健サービス、在宅ケアやリハビリテーション等の介護を含む福祉サービスを安心して受けられるよう、医療・保健・介護・福祉など関係する様々な職種の人々が専門領域や職種を超えて連携、協力して集学的、体系的に取り組む仕組みをいう。
その原点は、1974(昭和49)年頃の広島県御調町(現・尾道市)の国保病院(現・尾道市立総合医療センター公立みつぎ総合病院)にある。そこでは、外科手術後にリハビリを受けて退院した患者が、在宅復帰後に寝たきり状態になることを防ぐため、「出前医療」(今日でいう在宅ケア)を始めたことを端緒に、1984(昭和59)年、国保病院に健康管理センターを併設、御調町の保健と福祉に関する行政部門を病院長が一元的に管理運営をするようになった。
その後さらに介護施設、福祉施設等を順次病院に併設して、ソフト(サービス)・ハード(施設)両面での支援体制が構築された。現在、公立みつぎ総合病院にはICUや無菌手術室、マイクロサージャリーなどの高度医療のほか、回復期リハビリテーション病棟や緩和ケア病棟、療養型病棟も設置され、退院後は在宅医療や訪問リハビリなどのケアも整っている。
地域包括ケアが重要となってきた背景には、「2025年問題」がある。団塊の世代が75歳を迎える2025(平成37)年の日本には、75歳以上の後期高齢者が2179万人(全人口の18.1%)、65歳以上の高齢者が3657万人(同30.3%)に達する超高齢社会が到来する。その後も高齢者人口は増加の一途をたどり、医療や介護の需要はますます高まり、国民医療費の高騰も必至だ。
そこで、厚生労働省(以下、厚労省)は2025年をめどに、地域包括ケアシステムの構築を推進している。2013年3月の地域包括ケア研究会報告書では、地域包括ケアを構成する5大要素として「介護」・「医療」・「予防」という専門的なサービスと、その前提としての「住まい」と「生活支援・福祉サービス」を挙げている。
地域包括ケアシステムについては、「国民健康保険法に基づく保健事業の実施等に関する指針(平成16年7月30日厚生労働省告示第307号)」において、「国民健康保険の保険者(市区町村)が運営する診療施設や総合保健施設は、地域における住民のQOLを向上させるため、保健医療の連携及び統合を図る地域包括ケアシステムの拠点としての役割を担うことができるものであることから、これらの施設を運営する保険者においては、当該施設との連携を図った保健事業の実施に努めること 」と規定されている。
地域包括ケアの支援サービスとして、IT業界から様々なソリューションが提供されている。たとえば、日立の「地域包括ケア支援自治体クラウドソリューション」は、家族や自治体、医療機関、救急隊、介護事業者など関係者が個別に蓄積し把握・利用していた医療・介護情報をクラウド上に集約し、関係者がインターネット経由でPCやタブレット端末などからリアルタイムで閲覧、情報共有することができる。個人情報保護のために様々な閲覧制限の設定が可能だ。
また、ソネット社の在宅ケア多職種連携支援システムでは、テルモ社の通信機能付きバイタルサイン測定機器と連携した在宅ケア業務支援アプリケーションを備え、訪問診療や訪問看護時に、在宅患者のケアに必要なバイタルデータ(血圧、脈拍、体温、SpO2、血糖値など)やカメラで撮影した画像データ、処置記録・医師のコメントなどの文字データを、タブレット端末、スマートフォンやノートパソコンにNFC(Near Field Communication;十数センチの距離での小電力無線通信技術)を介してデータを取り込み、クラウド上のサーバーへ送信することで記録し、多職種の関係者がリアルタイムで情報共有できる。
長寿社会において、ますます増大する高齢者医療およびケアを支える技術領域は、今後さらに多様化し、個性的なサービスやデバイスが提案されるものと期待される。
「地域包括ケア」市場のグローバル市場規模
経済産業省「地域におけるヘルスケアビジネスの創出について」(2014年9月)によると、健康寿命延伸産業は、2020年に市場規模10兆円・雇用130万人を創出(現状:4兆円・51万人)する施策が掲げられている。
astavisionでは、地域包括ケア市場のグローバル市場規模を2015年段階で2500億米ドル(≒30兆円)と推定。今後10年間は年平均成長率20%で推移すると仮定すると、
地域包括ケア市場の2025年段階でのグローバル市場規模は、年間1.55兆米ドル(≒185.8兆円)と予想する。
近日公開予定の「地域包括ケア」市場コンテンツでは、この市場の最新技術や関連して発展する市場、活躍できる職種などを紹介する。
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