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「ファクトリーオートメーション・工作機械・産業ロボット」市場とは?

text by : 編集部
photo   : shutterstock.com

astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「ファクトリーオートメーション・工作機械・産業ロボット」市場コンテンツについて、その一部をプレビューする。

 

「ファクトリーオートメーション・工作機械・産業ロボット」について

日本の自動車産業や電気電子産業では、1980年代頃から製造現場へのロボット導入が進み、これにより高い生産性を実現するとともに、ロボットの技術自体もそれと同時に発展してきた。現在でも、日本は産業用ロボットの出荷額、稼働台数において世界一の地位を維持している。ただ、従来の産業用ロボットは大型で個別ライン専用のものが多かったため、ロボットを活用できたのは大企業など限られた業種のみであった。日本政府が2015年に発表した「ロボット新戦略」にも取り上げられているように、今後は、人手への依存度が高い中小企業や、食品・化粧品・医薬品などのより幅広い製造分野、ならびに多種多様で非定型なプロセスの多いサービス分野など、様々な要請に柔軟に対応できるロボットが求められている。

このような背景のもと、最近では人間の手の動きに近い動作を実現するためのヒト型双腕ロボットが登場し始めている。産業技術総合研究所と安川電機がライフサイエンス研究の現場向けに共同で開発した「まほろ」や、川田工業が開発した「NEXTAGE」などである。ライフサイエンスの研究現場では、ピペット操作などのベンチワークはほぼ100%人の手によるものであり、しかもその精度は作業者の熟練度や集中力に大きく依存する。「まほろ」では、従来の産業用ロボット(6軸)よりも関節を1つ増やした7軸の構造とするなど様々な工夫を凝らすことで、省スペースでの動作と、ピペットをはじめ人が使用するツールをそのまま使用できるという高い汎用性を実現した。これは、単純でありながら精度が要求される繰り返し作業の自動化を可能にしたばかりでなく、実験スキルの可視化、共有化までをも実現したことから、今後のライフサイエンス研究の進め方を一変させる可能性がある技術として期待されている。

産業用ロボットは、小型化・汎用化のみならず、自ら学習し行動する自律化、産業用ロボットや工作機械が互いにつながり連携するネットワーク化など、大きな変化の途上にある。また、米国のIndustrial Internet ConsortiumやドイツのIndustry 4.0など、ロボット・工作機械とITとの融合により開発・製造・保守・流通プロセスの最適化を図るための官民挙げての取り組みが世界各地で始まっており、国際標準の獲得とプラットフォームの確立に向けた動きが活発化している。

 

産総研と安川電機が共同開発した汎用ヒト型ロボット「まほろ」(JASIS 2014)
産総研と安川電機が共同開発した 汎用ヒト型ロボット「まほろ」(JASIS 2014)

 

「ファクトリーオートメーション・工作機械・産業ロボット」のグローバル市場規模

富士経済は「2015 ワールドワイドロボット市場の現状と将来展望」において、2014年の製造業向けロボット市場の世界市場規模はおおよそ40億ドル(4808億円)と報告しており、2020年には63億ドル(7508億円)になると予想している。また、同じく富士経済の「Industry 4.0 関連市場の実態と将来展望 2015」では、ドイツのIndustry 4.0、アメリカのIndustrial Internet、日本の次世代型スマート工場など、ICTを活用した「スマート工場」に関連するFA機器・システムの世界市場規模は2014年に212億ドル(2兆5,494億円)、2020年予測で412億ドル(4兆9,433億円)としている。

これらを合わせると、「ファクトリーオートメーション・工作機械・産業ロボット」市場の2020年における世界市場規模は、おおよそ475億ドル(5兆6992億円)に達すると推定される。

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