Interview

年の差チーム・QPS研究所が取り組む「使える」小型人工衛星QSAT-EOS

text by : 編集部
photo   : QPS研究所
ユニークな年齢構成のメンバー。左から2人目が代表の大西俊輔氏。4人目が取締役・研究所長の八坂哲雄・九州大学名誉教授。

「九州発の小型人工衛星を作ろう」を合言葉に設立された有限会社QPS研究所。2人の若者と5人のベテラン技術者たちというユニークな組織構成を持つこの企業は、九州大学の小型人工衛星開発プロジェクトを支援する目的で2005年に設立された。昨年11月には九州地域の大学との協力体制のもと、小型人工衛星QSAT-EOS(きゅーさっといおす:愛称「つくし」)の打ち上げに成功し、九州を中心とした宇宙産業のさらなる活性化を目指している。代表の大西俊輔氏と、設立者であり現在は取締役・研究所長を務める八坂哲雄・九州大学名誉教授に話を聞いた。

 

―QSAT-EOSについて教えてください。

 八坂: 90年代始めまで、宇宙関連の事業といえば国がやるもので、大学ではほとんどが座学でした。ところが90年代後半になって小型人工衛星というコンセプトが出てきて、これなら大学でも作れるのではないかという可能性が見えてきました。日本全国でそういう動きがあり、当時私が教授として在籍していた九州大学も取り組みを始めました。他の大学が開発している小型人工衛星はCubeSatという10cm立方のものがほとんどですが、QSAT-EOSは50cm立方で、単なる実証や教育のためではなく、実用のために設計されているのが特徴です。

 

小型人工衛星QSAT-EOS(愛称「つくし」)

 

―昨年の打ち上げはロシアのYasny基地で行われたそうですが、印象に残ったのはどのような点でしょうか。

大西: ロシア側のチームも民間の方だったのですが、役人気質がなく、技術者同士のコミュニケーションができたということが非常に良かったですね。苦労した点でいうと、やはり2国間のプロジェクトになるので国際情勢の影響を受けるというのと、打ち上げの時期が当初の予定より2年遅れたこと、寒冷期にぶつかってしまったという気候的な問題などがありました。

八坂: 私たちの知っているものとは違うやり方を知ることができた、というのが大きいですね。あと、何といっても技術がすごいです。パーフェクトな軌道に(小型人工衛星を)投入してくれたと思います。

 

―ところで、QPS研究所のメンバーは年齢構成が非常にユニークですね。大西さんは2013年に入社して半年後に社長になられたそうですが、どういった経緯だったのでしょうか? 

大西: もともと九州大学で小型人工衛星の研究をしていて、QPS研究所ともお付き合いがありました。また、九州の中にも宇宙分野での強みがあるのではないかと感じ、それをつなげていきたいという思いが強くなっていました。それで自分から門を叩いたのですが、入った瞬間から社長になろうと思っていました。どこかで世代交代する必要があるだろうし、もうそろそろ自分が入らないとだめだろうと思って入社したんですよね。とはいえ半年は試用期間というか、資質を見てもらう必要もありましたので、半年後に社長になったという次第です。

 

―なるほど、新入社員かつ社長としての試用期間だったわけですね。八坂さんは、どういうお気持ちで交代を決意されたんでしょうか。

 八坂: 私がこの会社を設立したときは、あと10年はやれる、10年あれば何かやれるだろうと思っていました。いまでもまだやりたいことはあります。ただ実際問題、あと何年続けられるかということがありますので。私たちが築いてきたものをベースに、若い世代がジャンプしてくれればと思いました。

 

―このような年齢構成ならではの発見のようなものはありますか?

 八坂: 彼(大西氏)を見ていて思うのは、まず付き合う仲間が違うということですね、私の世代は、同じ学会や業界にいる仲間と何十年も付き合っていますが、他業種との交流がありませんでした。いまアメリカではIT業界などから宇宙産業に参入している企業や人がいますが、あのように他分野の要素を入れていかなくては産業として発展していかないのだと思います。

大西: たしかにあらゆる分野の方たちとお会いしていますね。そういった交流から得られるものを、どのような形になるかはわかりませんが、今後の事業にも活かしていければと思っています。

 八坂: 自分がやりたいこと思っていることに対して、一緒にやろうか、という人が出てきてくれるのが一番ですね。

 

―それでは最後に今後の展望についてお聞かせくだい。

大西: QSAT-EOSによって、九州で小型人工衛星を作る基盤ができましたし、打ち上げの成功によって自信もつきました。次は宇宙開発などの分野で、小型人工衛星を「使う」ということに目を向けていきたいと思っています。これは他業種の方にもお伝えしたいと思っているのですが、小型人工衛星を「使う」ということはもはや夢物語ではないのだと思います。

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