Interview

(前編)DMM.make AKIBA 運営サポート 岡島康憲さん「ハードウェアベンチャーはやらないほうがいいですよ」と人にはアドバイスしています

text by : 編集部(聞き手:astamuse.comディレクター 波多野智也)
photo   : 編集部

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ハードウェア開発をトータルでサポートする総合型のモノづくり施設「DMM.make AKIBA」

立ち上げ時よりこのプロジェクトに参加し、ハードウェアスタートアップ支援に携わる岡島康憲さんに話を聞いた。

 


 

―岡島さんはDMM.make AKIBAでどういった役割やお仕事をされているんですか?

はい、ABBALab(アバラボ)というハードウェアスタートアップアクセラレータのパートナーという肩書で、ABBALabによるハードウェアスタートアップ支援の場となるDMM.make AKIBAの完成間近の頃から、立ち上げ準備や外部からのイベント誘致をやっていました。

今は、DMM.make AKIBA本体のプロジェクトに関わりつつ、ABBALabが支援するスタートアップのサポートもしています。

 

―スタートアップのサポートというのは、具体的にどのようなことをするんですか?

ABBALabが出資したスタートアップに対して、技術的なアドバイスをしたり、彼らが事業を進める中でつながりたい企業の要望を聞いて、外部の企業や人を紹介して橋渡しをする。そんな感じです。

 

―外部との橋渡しもするんですね。

はい、他にもDMM.make AKIBAはモノづくりをする環境としては本当に素晴らしいのですが、ただ黙々と作っているだけでは広がりがないので、「ソフトウェアエンジニアとして入居した人に、メカについて学べる研修」とか「機械エンジニアで入居した人にRailsというソフトウェア言語を学ぶ機会を提供しよう」とか、足りないものを補い知見を広められる機会の提供、というのをしています。

 

―岡島さん自身は元々NECに在籍していて、その後独立して岩淵技術商事株式会社という会社を立ち上げてますよね?

現在も岩淵技術商事の執行役員というのが本職で、DMM.make AKIBAに来たのもABBALabから業務委託を受けていて、じゃあその流れでこっちも手伝ってよ、というものでした。

 

―NECから独立された経緯は?

NECには6年在籍して、当時はエンジニアではなく新規事業開発室プランナー、要は企画屋でした。

とにかく新しいアイデアを考え、上司を説得するために自分でプロトタイプを作った方が早い!って感じで自然とエンジニア的知識を学んでいきました。

当時、のちに一緒に会社を立ち上げる事になる仲間と「KORESS(コレス)」という名の「色々と作ったものを発表しよう」という社会人サークルもやってました。

 

―その社会人サークルの延長線上に独立して起業、ということなんですね。大手企業から独立するというのは、安定した給料や生活を捨てるという意味で大きな決断だったんじゃないかと思いますが。

正直2年くらいは悶々としていました。

所属している会社が嫌になったというより、このKORESSの活動でどこまで行けるんだろうって考えていて、ただ企業に所属していると100%やりたいように出来ないことも色々出てきます。そのあたりも含めて2年間ずっと考えていました。

 

―2年迷った末に独立というのは、逆に難しい面もあったんじゃないですか?迷っている期間が長いとどんどんリスクのある決断がし難くなるとか。

迷っている間にも僕の肩書き関係なくKORESSの活動を褒めてくれる人がいたり、そういうのを経て「やっぱりイケると思うんだよな」と考えたり、人のつながりからなんとか仕事を頂いて会社を動かしたりできるんじゃないかって、根拠の無い確信みたいなものが生まれたんです。

いま振り返れば、もっとスマートなやり方はあったと思います。ただ何より周囲の方とのつながりが精神的な支えになったのと、あと会社を共同設立した仲間がいたというのが大きいです。「一緒にものづくり続けるの楽しいと思いませんか?」って言ってくれて。

 

―そうした経緯で独立されてハードウェアの分野に飛び込んだあと、近年急速に「IoT」とか「モノづくり」の分野が脚光を浴びてきていますよね。周囲の方とのコミュニケーションが変わってきましたか?

確かに、日に日に注目が集まっていますし、相談されることも増えましたね。

ただ、僕は「ハードウェアベンチャーやりたいので会社作りたい」という人に相談されたとき、必ず言うことがあります。

それは「ハードウェアベンチャーはやらないほうがいいですよ」って。

 

―岡島さん自身が独立後に苦労したからですか?

いえ、このセリフには色々な意味を込めていて、「ハードウェア」で「ベンチャー」をやりたい、っていう人は、もともとスキルがあって色々作ってて、それを本格的にビジネスにしたい人と、正直「これから来そうなジャンルだから」という感じの人に二分されます。そして後者が多いです。

前者のような人には、どう進めたいのかとか、ビジョンが具体的なのかとかアドバイスできますけど、後者の「これから来そうだから」みたいな人にはまずアイデアを聞いてみるんです。

すると「それって別にハード作らなくてもスマホで出来るね」というパターンが多い。

僕はもともと企画屋で、アイデアの具現化にどうしても必要だからコードを書き始め、のちにハードに手を出し、と広がった経緯もあり、「手段」が先行している話に違和感があるんです。

だから、そのアイデアが本当に「イケる」と思うならスマホでやりなよ、って言います。

「実はハードウェアじゃないと絶対ダメなアイデアってそんなに無いんだよ」という話をしますね。

 

―本当にハードウェアが「必要な手段」なのか、を考えてもらうんですね

そうですね、とはいえ僕自身もたまに手段に興味が出て「これをこうして、ああやってとりあえず作りたい!」となることもありますがそれは「実験」として割り切ってます。無理やり事業にしようとしない。

以前、植物の水分量を監視する仕組みを、センサーを使って試作したんですが、そのときですら「センサー無くて出来るならセンサー使いたくねえよ!」って思いながらいじってました。(笑)

好奇心が最低限あるなら、最初の食わず嫌い状態を乗り越えれば後は意外といけるぞという体験は、新しく何かを習得するときの原動力として大事だと思いますね。

 

―IoTもですけど、最近一般の人が目にするような雑誌やテレビで「ドローン」「シンギュラリティ」「人工知能」「アンドロイド」って先進的なものが取り上げられてるじゃないですか。こういう風潮をどう見ていますか?

なんか、「消耗品にされてるな」って思います。

例えばスポーツ中継やディスカバリーチャンネルを家で見ていると、「ちゃんとテクノロジーが必然性をもって」扱われてるなと思うんです。

野生動物を観察するためにこの最新センサーを使いますとか、サッカーの試合でホークアイ(※審判を補助するために、ボールの位置を分析しCGで処理する仕組み)が使われて正確にジャッジされた結果、解説者が「いやー目で見てもわからないけど、ホークアイで見ると、イングランドに1点入ってますねー」とか言ってて、ちゃんと使われてるなって。

でも一方、バラエティ番組で最新テクノロジーの派手な面が強調されて、なんだか超能力とか、びっくり人間とか、そういうものと同じような扱われ方に感じることもあるんです。

 

―そういう風に見てほしくない、ってことですか?

はい、僕らが小さい頃はそういう番組きっかけで「うわすごい!ぼくも将来このロボットを作る!」というのもあったと思いますが、今ってちょっと違うのかなと。

ネット環境が身近で、自分の好きなコンテンツや知りたいことはネットで検索してすぐに知ることができる。

ならば、もっとテクノロジーを真正面から紹介するメディアがあって、それを見た子どもたちが「このクアッドコプターってすごい、ネットで調べてみよう」という状況になってほしいなと思います。

 

―DMM.make AKIBAにいると、イノベーションを起こそうと活発に動いている起業家の方との交流も多いと思います。そういう人と話していて感じることはありますか?

単純に、実現したいものと向き合ってる人が多くてすごいなと思いますけど、

一方で、すごいアイデアを「考える」ところまでは、意外と多くの人が出来ると僕は思います。

そして動き出すこともそんなに難しくはない。

本当の挑戦は、その先の「どう実現するか」の領域だと思います。

 

―なるほど、どう実現するか?の要素って何があると思いますか?

ビジョンを実現するのに、よく「人・モノ・金」っていいますよね。

僕はその中で、特に「人」の部分がすごく大事であり大変だと思うんです。

「こういうアイデアを実現したい!」って叫んでも、すぐに意気投合できる人がピンポイントで来るわけじゃない。

ビジョンを実現させる上で、いくら投資を受ける環境が整おうが、本当の意味で「実現するための仲間」を集めることが大事であり、大変だと思います。

 

―岡島さんの近しい方で、それを実践できている人を挙げるとするならば誰ですか?

ウィンクルというハードウェアを作ってる会社があって、そこの社長で武地という人がいるんです。

彼のビジョンは壮大というか、もはやわけがわからない。しかも彼自身はハードウェア開発についての高いスキルを持っているわけではない。

彼に出来るのは「実現したいことのビジョンを具体的に想像できる」ということのみ。

けど、彼は集まってくれた仲間に対して自分が社長なのに本当に一番腰が低いんです。

「みなさん本当にありがとう、あれもこれもやってくれて、本当に助かる。作って欲しいといったものが本当に思い通りに出来ている。ありがとう。僕を見捨てないでください」って。

 

―周囲への感謝の塊ですね。

ええ、別に周囲に頭を下げることがいいという話ではないです。

作り手をリスペクトし、自分の周囲にいてくれる人を「消耗品扱いしない」ことが大事だと思います。

よく、スティーブ・ジョブズとかの逸話の影響なのか、ビジョナリーな人は目標の達成のためには全てを犠牲にしてもいい、みたいな風潮あるじゃないですか。

 

―ありますね、むしろそういう生き方や決断がかっこいいい!という。

そう、でもあれ「偉人エピソードのひとり歩き」の功罪だと思うんです。

以前何人か、アップルで働いていてジョブズと仕事してた、みたいな人と話しましたけど

「いや、ジョブズって実際は結構気配りしてくれる人だよ」って話を聞くわけです。

エキセントリックな面だけ強調せず、本当に周囲をリスペクトすることが大事だなと。

 

(後編へ→)「今後のIoT分野には『バイオ』と『人工知能』の人たちが来たらもっと面白くなると思います」

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