Interview

(後編)DMM.make AKIBA 運営サポート 岡島 康憲さん「今後のIoT分野には『バイオ』と『人工知能』の人たちが来たらもっと面白くなると思います」

text by : 編集部(聞き手:astamuse.comディレクター 波多野智也)
photo   : 編集部

DMM.make AKIBAにジョインするまでの経緯やハードウェアスタートアップを取り巻く現状について聞いた前編に続き、後編ではIoT分野で求められている人材、IoTの「その先」について聞いていく。

 


 

―IoTは、注目を浴びるとともに急速に様々な分野とつながっていますよね。岡島さんは「今後IoTの分野にこういう人が来てほしいなあ」って考える人物像はありますか?

ジャンルでいうと2つありますね。

「バイオ」と「人工知能」の知識や知見を持つ人。

ここは間違いなく鉄板と言っていいです。

 

―「バイオ」「人工知能」即答ですね。詳しい理由を教えて下さい。

まず「人工知能」ですけど、IoTの一つの側面として「ソフトウェアに、ハードウェアを使って目や手のような役割を付けられる」というのがあります。

人工知能の定義は色々ありますが、いわゆる「脳」という自分で学習して成長し、今までにないアウトプットを出せるものですよね。

最近話題のディープラーニングなら、写真をデータとして学んでいくと特異点を抽出し「これって猫ですよね、猫が80%です」って言い出す。これがソフトウェア単品としての人工知能だとします。

じゃあこれにIoTの要素をつけてみよう、タイヤとカメラをつけましょう。すると何が起こるか。

勝手にうろうろし始めて、色んな物を見ては「これは猫が40%」「これは椅子70%」ってどんどん情報収集して知らない所で周囲を学んでいく。

 

―ちょうど、ハイハイをしはじめた赤ん坊みたいな感じですね。

そうそう。赤ん坊は最初車を見ても電車を見てもお父さんを見ても「ぶーぶー」って言う。

「違うよ、これはお父さんだよ」って教えてあげる。

目や手や口がついてれば、赤ん坊もこちらの語りかけに喜んだり、じーっと聞いていたりする。

そのうち勝手にうろうろしていた人工知能が、周囲の人と教えてもないのにやりとりしはじめる。

元はタイヤとスピーカーと映像入力装置をつけただけ、でもそれによって長い間ソフトウェアの世界にいた人工知能が現実世界に来て、僕らの生活に入ってきます。

それがいいことかどうかは別議論ですが、その先にある世界は興味深いですよね。

 

―なるほど。人工知能をソフトウェアの世界から現実世界に連れ出すのがIoTだと。「バイオ」についてはどういう理由なんですか?

バイオは、IoTにおけるまた別の側面である「物の周囲にある現象をネットにつなぐ」点が関係します。

いま「ウェアラブルデバイス」と言えば、腕に巻き付けるリストバンド型です、目に装着するメガネ型です、というものですが、「内臓に直接ウェアラブル機器を装着」したほうが、断然いろんなことが楽になると思うんです。

 

―体の外側じゃなく内側に装着する、ということですか?

はい、例えば小腸・大腸の鞭毛は何億本もあると言われてて、それって「何億箇所もウェアラブルを装着できる場所があるじゃん」って思うんです。

何億個も装着された機器を通じ、普段から状態を観察し「この物質が分泌された時はストレスを感じています」といったことがわかるようになれば、精度の高い診断や治療につながるなと。

 

―医療ですね。

そうです、そうなると人間の中にハードウェアを付けるので「人体」や「生き物」について精通し、生体的な情報全般を知っている必要がある。そこでバイオ・生物系の人が必要になると思うんです。

 

―いまIoTという言葉からイメージされてるものの、さらにその先ですね。

あの、これはIoTに限らずテクノロジーがどう発展するか?という話で、人間って一番最初は自然科学を学んでいたんです。りんごが落ちたので引力ってあるんだ、地球って実は丸いんだとわかった。

その後、60年前くらいにコンピューターが登場し、情報科学というルールを人間が作り、新しい時代に入った。

 

―そろそろその次が来る、という話ですか?

そうです、いつから始まるかは判らないですが「情報科学の文脈で、自然科学を見よう」という時代が来ると思います。

今がその助走期間で、お腹にセンサーつけたら、脳にセンサーをつけたらこんなことが、って次々わかってきている時代ですよね。

その先に、ん~…ちょっと妄想っぽい話していいですか?

 

―全然いいですよ、続けて下さい。

僕らは、目の前にブルートゥース機器があっても「こっちから信号が出てこっちでテザリング」って理解し脳内で図式化できるじゃないですか。

 

―できますね。

でもこれを親の世代にちゃんと説明してイメージしてもらうの大変ですよね?

こっちからこっちに?電波?見えないよ?クラウドと通信?クラウドってどこ?という。

 

―そうですね、僕らは知識として知ってますからね。

それです。「実はまだ発見されていない法則や知識が既にあって、それを次の世代が見つけてく」のだと思います。

ここに光の粒子がある。「ピッ」って光ると、宇宙のどこかにある別の光子が「ピピ」って光っている。実はこのふたつはネットワークでつながってる、とか。

 

―僕らが見つけてないだけで、法則はもう存在していて、それを次の世代が発見すると。

そう、将来的には「当たり前でしょ?俺のこの膝の軟骨は遠くにいるアマゾン川に生息する虫の触覚とつながってるんだよ、だからアマゾンの虫が体調悪くなると俺の膝の調子も悪いんだ」とか。

 

―なるほど。軟骨とアマゾンの虫がつながってるわけないじゃん、が親の世代におけるブルートゥースなんですね。

そうなると「バイオはこういうことに活用できる」「IoTはあれとあれをつなぐ」の認識や可能性が全然違ってくると思います。

だからバイオや人工知能に限らず「IoTってこういうものだから、自分にあまり関係ない」って思わずに、何が出来るかなあって妄想すべきだと思います。その中のひとつが「次の時代で明らかになる、本当のこと」なのかもしれないので。

 

―最後に、DMM.make AKIBAを岡島さんなりにどういう場所にしていきたいですか?

もっと、この場所に多種多様な人に出入りしてほしいというのがあります。

モノづくりの人だけじゃなく、官公庁の人とか、大企業の人とか、研究者の人とかが常にうろうろしているような。

なので、今後は月1回そういう人たちが一堂に会して軽食や飲み物をつまみながら、いろんなテーマで話をしている、みたいなことをやりたいです。話の内容がIoTじゃなくてもいい、なんかみんながゆるくやりとりをしている場所作りがしたいですね。

 

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