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「機械学習・深層学習(Deep Learning)」市場とは?

text by : 編集部
photo   : shutterstock.com

astavisionが企業・特許情報のビッグデータ分析により、今後成長が見込まれる市場を180の分野に分類した「180の成長市場」。近日公開予定の「機械学習・深層学習(Deep Learning)」市場コンテンツについてひと足お先にプレビューする。

 

「機械学習・深層学習(Deep Learning)」とは

2012年6月26日、Google Official Blog は、ネコと思しき1枚の画像とともにあるニュースを伝えた。

“Using large-scale brain simulations for machine learning and A.I.” Google Official Blog, June 26, 2012 

自動運転車や拡張現実、スマートコンタクトレンズなどの研究開発を進める 「Google X Lab」 は、同社コンピュータ群上に分散構築した大規模なニューラルネットワーク(人工知能の一種)に1週間にわたり、YouTubeの動画をランダムに見せ続け学習させたところ、コンピュータが自ら「ネコ」を認識する能力を獲得したという。コンピュータにあらかじめ、ネコについて示唆を与えたわけでもなく、また、ネコの画像を意図的に多く見せたわけでもないのに、いわば、新生児の脳(newborn brain)が、「自己教示学習(self-taught learning)」により、ネコの概念を発見したのだ。

1959年、米国IBM社のコンピュータサイエンティスト(後にスタンフォード大学教授)の Arthur Samuel は、機械学習(machine learning) を、「明示的にプログラミングすることなく、コンピュータに学習能力を与える研究分野(Field of study that gives computers the ability to learn without being explicitly programmed.)」と定義した。

一方、Google Official Blogに猫の画像を投稿した一人、Andrew Ng(スタンフォード大学準教授)は、機械学習とは、「明示的にプログラミングすることなく、コンピュータに行動を起こさせる科学(the science of getting computers to act without being explicitly programmed )」だという。より自律的・行動的イメージが感じられる。

機械学習は、1940年代から始まった人工知能研究の中から生まれた計算手法であり、コンピュータ自ら、与えられたデータの中から、特徴やパターン、法則性を見出し、階層構造やクラスタ構造に分類したり、現状把握、動向分析、将来予測をすることなどを目的に開発されてきた。

確率論や多変量解析、計算論的学習理論、情報理論、統計力学や量子力学、アルゴリズムなど様々な分野と関連性を持ちながら発展を遂げ、現在までに、顔認証や文字・画像・音声の認識、自然言語処理やウェブ検索、ウェブ翻訳、ゲノム構造解析、化合物の反応性予測、株価予測、ショッピングサイトやSNSにおけるレコメンド機能等々の分野で実用化されている。まさに、GoogleやAmazon、Facebookなどのビジネスモデルを支える基幹技術でもある。

また、Googleは「Prediction API」、Microsoftは「Azure Machine Learning」、 Amazonは「Amazon Machine Learning」というそれぞれのクラウド機械学習サービスを提供している。いずれも一連の予測モデルをサポートしており、APIで入力変数の値を送信すると、目的変数の予測値を受け取れるというものだ。

ビッグデータの時代に入り、機械学習はますます重要性を高め、多言語コミュニケーション、自動運転システム、サイバーセキュリティ、そして本格的な人工知能(強いAI)などを実現できる高度な技術が求められている。

2012年を機に、音声認識や画像認識で飛躍的進化をもたらした深層学習(deep learning)やそのコアをなす表現学習 (feature learning、representation learning) が注目を浴びているが、その源流は、1943年に発表された一つの論文*1)に発する。シナプスに信号が入力されると、その信号に応じて新たな信号の発火が起こり、それが次のシナプスに伝播するという、ヒトの脳の神経ネットワークを模した計算モデル(McCulloch-Pittsモデル)の提案がそれだ。これが後のニューラルネットワーク(生物の神経ネットワークの構造と機能を模倣する学習アルゴリズム)の出発点となる。

冒頭に掲げたGoogleのネコを認識したシステムも、ニューラルネットワーク上での深層学習の例である。

*1) McCulloch, W. and Pitts, W. , “A logical calculus of the ideas immanent in nervous activity”. Bulletin of Mathematical Biophysics, 7: 115 – 133, (1943)

 

「機械学習・深層学習(Deep Learning)」の2025年グローバル市場規模

機械学習・深層学習の活躍分野は既に、顔認証や文字・画像・音声の認識、自然言語処理やウェブ検索、ウェブ翻訳、ゲノム構造解析、化合物の反応性予測、株価予測、ショッピングサイトやSNSにおけるレコメンド機能等々に及び、今後、人工知能、ロボット、クルマ、医療、宇宙・深海を含むフロンティア開発、資源探査、環境、エネルギーとますます広がっていくだろう。俯瞰的に見ると、これらはMEMSが活躍する分野とほぼ一致する。

米国IDC社は、2015年のビッグデータ解析市場を1250億米ドル(≒15兆円)と見込んでいる。*2)

astavisionでは、2015年時点での機械学習・深層学習関連のグローバル市場規模を、300億米ドル(≒3.6兆円)と予想している。そこで、年間平均成長率(CAGR)を30%と仮定し、2025年段階での機械学習・深層学習関連のグローバル市場規模は、年間4136億米ドル(≒49.63兆円)と推計している。

*2)6 Predictions For The $125 Billion Big Data Analytics Market in 2015

 

近日公開予定の「機械学習・深層学習(Deep Learning)」市場コンテンツでは、この市場の最新技術や関連して発展する市場、活躍できる職種などが紹介される。

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