2016.06.07 TUE 「人工筋肉/ソフトアクチュエータ」市場における科研費獲得金額ランキングTOP50
text by : | 編集部 |
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photo : | shutterstock |
どのようなテーマが共感を呼び、どのような形で投資を集めているのか、世界中の特許/論文、科学技術研究費、ベンチャー投資、クラウドファンディング情報などを集め、独自に分析する本企画。今回は、180の有望成長市場のうちのひとつ「157. 人工筋肉/ソフトアクチュエータ」市場における大学・研究機関別の科研費獲得金額ランキングを発表、さらに注目すべき研究テーマを紹介する。
■総投資額約40億円、全大学/研究機機関102、373テーマ中、「157. 人工筋肉/ソフトアクチュエータ」市場における大学・研究機関別(※1)の科研費獲得金額ランキングTOP50(※2)
(※1)研究代表者が所属する大学・研究機関
(※2)2006~2015年の交付分。2016年6月時点でデータ取得
■注目すべき研究テーマをご紹介
構造化ゲルと化学反応場の協働による運動創発(東京大学 萩谷昌己教授 他 / 2億5662万円)
この研究では、性質の異なるゲルを微細に構造化したゲルアクチュエータをボディとして持つスライム型分子ロボットを開発するための基盤研究を行っている。スライム型ロボットはセンサーや化学反応回路から出力される初期刺激からボディ内に化学反応場を形成することにより、アクチュエータを収縮膨張させ運動を創発させることができる。特定の化学物質の濃度勾配を感知し濃度の大きい方向へ泳ぐ蠕動運動などの実現に取り組んでいる。
屍体足・人工筋骨格ハイブリッドロボットによる二足歩行の適応機能解明(大阪大学 細田耕教授他 / 2億1593万円)
この研究では、常習的な二足歩行の適応機能の解明は知能研究にとって極めて重要な課題であるにもかかわらず、足裏や足部骨格構造の歩行運動の観察は極めて難しくその機序の解明には至っていないことに着目した。屍体の足部とヒト型筋骨格構造を持つロボット脚部を合わせたハイブリッド屍体・ロボットシステムを用いて挙動を詳細に観察し、機序を考慮した柔軟な人工足を作成して適応的な二足歩行を実現することに取り組んだ。
バイオテクノロジーを駆使した人工筋組織による新原理アクチュエータの創製(九州大学 井藤彰准教授 他 / 2028万円)
この研究では、生体筋肉の性質・性能を持つアクチュエータは今後のロボット工学などの分野に新しい展開を生み出す基盤になると考え、磁力を用いた三次元組織構築技術を利用して高密度で配向した筋芽細胞からなる三次元組織を構築した。さらに遺伝子導入および電気刺激培養により組織機能を高め、電気刺激に応答して収縮運動をすることができる人工筋組織(バイオアクチュエータ)を構築することに成功した。
■「157. 人工筋肉/ソフトアクチュエータ」市場について
物理的・化学的エネルギーを動力に変換して、ロボットの関節を屈伸させるなど、物を動かしたり 制御したりする機械的・流体圧的な機構をアクチュエーター(actuator:作動装置)と呼ぶ。人工筋肉は、素材自体が伸縮性を有するソフトアクチュエーターであり、圧縮空気をゴムホースに導入して伸縮させるゴム人工筋肉や、導電性ポリマーに電圧をかけて伸縮させる人工筋肉、カーボン・ナノ チューブに電圧をかけて伸縮させる人工筋肉、形状記憶合金を過熱したり冷却したりして伸縮させる人工筋肉、磁性ゲルに磁場を与えてゲルの体積を変化させることにより伸縮させる磁性ゲル人工筋肉(フレキシブルポンプ)などがある。
主な技術要素としては「動力変換」「ロボット関節屈伸」などがあり、主な技術・製品・サービスの例としては「Fluidic Muscle・ドライブシミュレータ Airmotion_ride」(Festo、ドイツ)、「手術支援ロボット」(東京工業大学、リバーフィールド株式会社)などがある。
また、この市場の主なプレイヤーとしては、セイコーエプソン株式会社、Caterpillar、パナソニック株式会社などがあり、180の有望成長市場における主な関連市場としては、「14.エネルギーハーベスティング・環境発電」 「36.スポーツ医学・ロコモーティブ症候群」 「154.ファクトリーオートメーション・産業ロボ ット」 などがある。
astavisionでは、この市場の2015年世界市場規模を20億米ドルと推定、2025年世界市場規模を120億米ドルと推定している。
■「157. 人工筋肉/ソフトアクチュエータ」市場に関するベンチャー・最先端技術などの情報配信サービス
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